表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
5章 最強は誰だ!? 夢の舞台で雌雄を決せ!!
195/238

パムゥの卑怯な戦術

 翼を折りたたみ、パムゥが地上へと降り立つ。不敵な笑みを浮かべ、テトたちへと近寄ってきた。

「ようやく我がパムゥゲームの参加者が決まったようじゃの。ライム、お主が相手とはまさに予定調和というわけじゃ」

「いい気にならないでよね。私たちの手であんたなんか倒しちゃうんだから」

 ファイティングポーズを取るものの、足元がふらついていた。ムドーとの一戦でかなり体力を消耗しているのだ。このまま試合に持ち込まれたらまともに戦うことはできない。


 しかし、パムゥはインターバルを入れるほどお人よしではなかった。むしろ、してやったりと指を鳴らしたのだ。

 十分足らずの間に再度展開されたバトルフィールド。テト達の前にはパムゥ、そしてケビンが立ちふさがる。互いに満タンとなったライフゲージが表示される。だが、データ上のライフは完全でも、ライム本人の体力は万全ではなかった。強がってはいるものの、明らかに苦しげな表情を垣間見せている。

「ムドーから連戦させることでライムを消耗させようなんて。初めからこれが狙いだったな」

「どうとでも言え。本気のライムと戦いたいだの戯言を言うつもりはない。目的を達成するためにはいかなる手も使う、ただそれだけだ」

 スポーツマンシップのかけらもない発言にケビンへとブーイングが集中する。試合が確定してしまった以上、ライムを休ませるにはサレンダーするしかない。もちろん、そんな本末転倒な手段を取るわけにはいかなかった。


 試合開始を急かすように、ケビンはさっさとスキルカードを選択し終わる。このままスキルカード選択に手間取り時間を稼ぐか。だが、姑息な技をパムゥが許すはずがなかった。

 テトがカードを選び終わらないうちに、パムゥは指先に光を灯す。強制的に戦闘を開始されては、まともにスキルカードを使えないまま戦う羽目になる。ライムの体調を考慮すると、スキルカードだけでも充実させておきたい。


 テトがカードを選び終わったのと、パムゥがライトニングを発射したのはほぼ同時だった。

「避けるんだ、ライム」

 テトは声を張り上げ、ライムを飛びのかせた。放たれた光の弾丸は、ついさっきまでライムがいた地面にぶち当たる。

「無理やり試合を開始するなんてひどいよ」

「卑怯? どうとでも言うがいい。最終的に勝てばいいのだ」

 そう吐き捨てると、パムゥは二発目のライトニングを放った。避けきれずに攻撃を受けてしまい、ライムの体力が二割ほど減少する。パムゥの元となったのは女神モンスターのペルセポネ。豊富なサポート技は厄介だが、彼女自身の戦闘能力は高くないはずだった。


 ライムが本腰を入れたのを機に、ケビンはスキルカードを取り出す。

「スキルカード傀儡パペット

 パムゥの前に新たに魔法陣が展開する。そこから出現したのは悪夢の存在だった。漆黒の目鼻がない人形。昨夜、全国のプレイヤーを襲った忌むべき相手。

 人形の登場と同時にパムゥの体力値が半分に減少する。そして、新たに人形の体力値が追加された。自分の体力を犠牲にして新たに戦闘要員となる人形を生み出す。複数体同時バトルが実装されてから開発されたカードだ。


 通常、人形の能力はバトルゾーンに出ているモンスターのものが反映される。なので、パムゥことペルセポネ二体と戦うという認識でいいはずだ。しかし、ライムの心づもりを嘲笑うかのように、パムゥは不可思議に両手を動かす。

「オールアップ」

 成り代わってケビンが技名を宣告するや、傀儡人形に仄かなオーラが灯った。相変わらずの無表情だが、迫り来るにつれ威圧感が増してくる。単に切迫されているというだけで、これほどまでに息苦しくなるのはおかしい。異変の理由はパムゥが使った技に隠されていた。

 補助技オールアップ。複数体同時バトルでのみ効果を発揮する。すべての能力値を上げるという単純明快かつ強力な技だ。しかし、見返りがないわけではなく、発動したモンスターは全能力値が減少してしまう。単独で使用しても、上げた能力をまた下げてしまうスカ技に成り果ててしまうので、同時バトルでパートナーをサポートするのに使用する。


 傀儡を強化させて自分の代わりに戦わせるというのはペルセポネの代表戦術。なので、ここまではテトも想定の範囲内だ。

「ライム、戦闘を長引かせると相手はどんどん強化されてしまう。疲れてるところ悪いが、速攻で叩くぞ。スキルカードランダムキャノン、そしてダークショットだ」

 オーラを纏っているものの、緩慢な動きをしている傀儡人形。そいつへキャノン砲の標準を合わせ、漆黒の弾丸を放つ。ペルセポネの属性を継承しているのなら、相手は光属性。闇属性の弾丸であれば効果は抜群となる。


 ところが、引き金を引いた途端、傀儡人形の姿が立ち消えた。漆黒の弾丸は的外れの場所に飛んでいき、壁へと炸裂する。目標を失い、ライムが首を動かしていると、突然目の前に人形が出現した。そのまま拳を繰り出されるが、寸でのところで空を切らせた。

 人形が披露した一連の動作にはデジャヴがあった。しかも、遥か昔ではなく、つい最近のことだ。言わずもがな、昨夜遭遇したパムゥからのプレゼントである。

「まさか、昨夜はオールアップで強化した傀儡人形を送ってきたのか」

「ご明察と言っておこうかの」

 あっけらかんと暴露するが、とんでもないことをやらかしていると白状しているに等しい。


 昨夜は同時刻に全国大会に出場する選手全員に人形が送られた。つまり、八体分の人形を作りだしたうえ、それらすべてにオールアップをかけて同時に操っていたのだ。

 そうなると不可解な点が残る。一段階ずつオールアップを使用するとしても、パムゥ本体は八体分の能力下降効果を受けることになる。ステータス変更系の技には使用限度があり、通常であればそんなにも数値を下げることはできない。つまり、何らかの不正操作を行っている可能性が高いのである。


 じっくりと考察したいところだが、そうは問屋が卸さなかった。人形の両手に稲妻が宿るや、ライムへとアッパーカットが迫る。完全には回避できずにかすってしまうが、それだけでも体力は半分ほどに減少してしまう。昨夜の個体の攻撃力を再現しているのなら、まともに受ければ一撃必殺されかねない。おまけに、ライムの体力からして九死に一生の発動も望めそうにないのだ。


 人形にばかり注視していたテトだが、ふと上空に巨大な十字架が出現した。

「ヘヴンズ・ジャッジメント」

 レーザー光線を照射され、更に体力を減らされる。パムゥ本体の攻撃力が下がっていたおかげでダメージは大したことはない。しかし、人形に加えパムゥの相手もしなければならないという厄介さを再認させられた。


「やられてばっかで堪るか。ライム、昨日の時みたいに自爆で一網打尽にするぞ」

「合点だよ」

 キャノン砲を構えなおし、全身より湧き上がるエネルギーを弾丸へと転換する。発射前にも関わらず、並ならぬ覇気で会場全体が揺れている。相手二体をまとめて倒そうとすると、どうしても威力が落ちてしまう。なので、テトはスキルカードを取り出した。

「スキルカード炎上バーニング。自爆の攻撃属性は炎。こいつで威力を上げるぜ」

 もはや有効打は自爆しかないと見越し、寸でのタイミングでねじ込んだカードだ。ランダムキャノンと相乗させればパムゥといえどひとたまりもないはず。


 ところが、パムゥは慌てた様子もなく、ゆったりと両手を広げた。

「ホーリーシールド」

 繰り出したのは変哲の無い防御技。透明な光の壁は爆風を浴びせれば跡形もなく粉砕できそうであった。追加でスキルカードを使うかもしれないと警戒していたのだが、ケビンは腕を組んで佇んでいるだけだ。余裕だとハッタリをかましているかもしれない。徹底したポーカーフェイスからは真意を窺うのは困難だ。けれども、十分にエネルギーを蓄積した以上、やるしかない。


「行け、ライム。自爆だ」

 キャノン砲から放たれた爆風がライムの長髪を逆立たせる。嵐にも等しい暴風にまともに前を見ることができない。うろたえる人形をよそに、パムゥは矢面へと降り立った。彼女を守るのは光の壁のみ。あまりにも心もとない障壁を容赦なく呑み込んでいく。ひび割れていく壁を垣間見て、テトは拳を握りしめる。

モンスター紹介

ボボボール 炎属性

アビリティ 怨念:バトルゾーンに出た時、数ターン相手の技を一つランダムで封じる

技 火の玉

空中浮遊する火の玉のモンスター。

相手の技を封じるアビリティはなかなか強力だが、所詮は序盤の雑魚モンスター。全国対戦で使うには厳しい。ただ、ストーリーモードではエンカウントしたくないモンスターの一角になっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ