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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
5章 最強は誰だ!? 夢の舞台で雌雄を決せ!!
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頂上決戦! ライムVSノヴァその3

ムドー戦決着です。

「ノヴァはスキルカードにより極限まで攻撃力が上がっている。それを更に急上昇させた場合、どうなるか分かるよな」

「九死に一生で耐えようとしても無駄やで。さっきの無謀な変身で体力は持たんやろ」

 まさに図星であった。意図的にアビリティを発生させられるほどライムに体力は残されていない。一発当てるために全力を注いだのが裏目に出てしまった。


 攻撃を命中させるカードと素早さを上げるカードに特化してデッキを組んだため、相手の技を防ぐ「無効インバリット」のようなカードは入っていない。しかし、まだテトに勝利への道は残されていた。

「スキルカード恐慌クライシス発動。先に攻撃を当ててしまえば問題ない」

「さすがだね、テト」

 意気込むライムだが、ムドーは嘲笑い腕を組む。

「俺のノヴァの素早さに勝てると思っているのか。先に攻撃を当てれば問題ない。その言葉、そっくりそのまま返してやろう。業火絢爛」

 火炎弾の乱舞であるが、充填にかかる動作が明らかに短縮されている。ライムが気泡弾の準備をしようとしている間に、すべての弾丸の発射準備が整ってしまったのだ。


 そして、テトが口を開こうとする瞬間、無数の火炎弾が放たれた。いや、火炎弾と描写するのはおこがましい。乱射されているのはもはや隕石だった。

 豪快な攻撃に、ライムは一旦バブルショットの充填を解く。いくら神眼でも避けるのは困難を極めた。なにせ、一発一発の弾丸が大きすぎてほとんど間隙がないのだ。

 下手に避けるよりも防御する方が得策と考え、ライムは腕をクロスする。細身の彼女に容赦なく隕石が降り注ぐ。

「意地でも九死に一生の発動を狙うか。ならばお前が息絶えるまで連撃を続けるのみ」

 かろうじて残されていた体力が根こそぎ削られていく。もはやライムのポテンシャルに賭けるしかなかった。


 圧倒的なまでの技を披露され、軍配はノヴァに下ったと思われていた。いくらライムでも、即死級の弾丸を連続で喰らっては耐えることができまい。衆目から勝利を確信し、ムドーはほくそ笑む。

 だが、唯一テトだけは諦めていなかった。防御用のスキルカードがないからといって、防げないというわけではない。もはや、テトとライムの意地が試されていた。


 やがて、会場を半壊せんほどの爆炎が収まっていく。フィールドの床のあちこちには窪みが生じていた。地形変化が起きるということは、通常では耐えられない技が繰り出された証拠だ。

「俺たちに傷をつけたことは褒めてやる。しかし、これまでだったな。パムゥは俺たちの手で仕留める。お前は大人しく見物しているがいい」

 捨てセリフを吐き、ノヴァと共に退場しようとする。だが、ノヴァがふと足をとめた。不安げに後ろを振り返っている。パートナーの異変に気が付いたムドーはつられて踵を返す。


 彼らが目撃したのは信じがたい光景だった。全身煤だらけではあるが、ライムが片膝をついてしっかりと体を起こしている。不死鳥をモチーフとしたノヴァよりもよほど不死鳥らしい姿に観客たちから喝さいが浴びせられる。

 強がりで立っているのではないか。訝しんだムドーは体力ゲージを確認する。だが、彼の絶望を助長する結果しか得られなかった。ライムの残り体力。それはノヴァと同じく「一」だったのである。


「ありえへん。素でうちの全力を耐えたいうんか」

 焦燥するノヴァにテトは真正面から言い放つ。

「お前たちに神眼があるように、僕たちには九死に一生がある。そっちがどんな攻撃も躱すというなら、僕たちはどんな攻撃も耐えるだけだ」

「正直危なかったけどね。でも、私にかかればこんなもんよ」

 得意げにどや顔を決めるライム。ノヴァは歯ぎしりしながら地団太を踏んでいる。


 それでも、すぐに気を取り直し、ライムへと指先を伸ばしてきた。

「まだ勝負はついてへんで。強がってても残りライフは一や。このままヒートショットを撃てば勝機はある」

「エンチャントスキルカードランダムキャノン」

 ノヴァの言葉を遮り、テトはスキルカードを発動する。ライムは彼女のこめかみにキャノン砲の銃口を突きつけた。

「これから同時に技の発動準備をした場合、間合いが近い僕たちの方が先に命中させられる。そして、神眼で躱そうとしても無駄だ。さっき恐慌クライシスを発動させてからまだ攻撃していない。だから、まだ恐慌の効果は継続している。つまり、この技は絶対に回避できないんだ」

 加えて、テトはスキルカード強化エンハンスを使用する。ランダムキャノンと相乗させればかろうじて気炎万丈で上昇した防御力を打ち破れる。せいぜい数ダメージを与えるだけだろうが、残り体力一のノヴァを倒すには十分だ。


 将棋で例えるところの詰みを体感し、ノヴァは歯ぎしりする。キャノン砲の発射準備は着々と整えられており、彼女の敗北は必至であった。最後の頼みの綱であるムドーの指示を仰ごうと後ろ足を引く。

 しかし、彼女の耳に響いたのは意外な警告音だった。ノヴァだけではなく、テトたちにとっても意外であったかもしれない。

「嘘やろ、ムドーはん」

 ずっと無言を貫いていたムドー。彼が最後の瞬間に選択したのは「サレンダー」のボタンだった。文字通り、自ら敗北を認め試合を強制終了させる。


 あまりにも意外な幕切れに会場内はどよめきたつ。公式大会でサレンダーが選ばれるなど前例がない。しかも、全国大会で最強と評される男が押したのだ。

 対戦フィールドが消滅した後も、ライムたちはそのままの恰好で固まっていた。ムドーの行動は彼女らにとっても想定の範囲外だったのだ。正直、試合が終了したという実感が沸いていなかった。

 最初に硬直を解いたのはノヴァであった。いきりたってムドーへと詰め寄る。

「どういうつもりやねん。確かに、あのままでは先にライムに撃たれとった。けれども、まだ勝負は分からへんやろ。どうにかうちが先制できれば勝てとったかもしれん。なのに、あんさんから諦めるなんて、らしくないやないの」

 必死に訴える彼女の頭にムドーは優しく手を置く。更に口を開こうとしたが、半開きのまま声を詰まらせることとなった。


 結末に納得がいかないのはテトとライムも同じだった。

「ムドー、いきなりサレンダーなんて何を考えてるんだ」

「そうだよ。やるなら最後までやろうよ」

 不信感を顕わにする両者に、ムドーは初めて口を開いた。

「あのまま続けていたら俺たちが負けることは明白だったからな。勝ち目がない戦いをずるずると続ける道理はない。だから敗北を認めた。それだけだ」

「理屈は分からないでもないけど、サレンダーなんて」

「本当はな……」

 そこで急に言葉を詰まらす。不思議そうにテトが顔を傾けると、ムドーはノヴァの髪を梳いた。

「こいつが倒れる姿を晒したくなかった」


 サレンダー事件以上に意外な告白にテトは瞠目する。言われた当人はおどおどと身を震わせていた。

「負けてしまったから白状するが、俺はつい最近敗北したことがある。その時にこいつが無残にやられる姿を目の当たりにし、歯がゆい思いをしたんだ。

 全国大会という大舞台でこいつの情けない姿がさらされるぐらいなら、俺が恥を忍んだ方が数倍マシだ。だからサレンダーをした。それだけだ」

「ムドーはん、うちのために……」

 目を潤ませるノヴァにムドーはそっぽを向く。辛抱堪らんといった態で、ノヴァは人目も憚らずムドーへと抱き付いた。

「もう、あんさんうちのことそない考えとってくれたやなんて。あ~、どないしよ、うち恥ずかしゅうて世間様に顔向けできへん」

「やめろ、馬鹿。この恰好の方がよっぽど顔向けできないだろ」

「ええやないの。もう少しこうさせて~な」

「だから、やめ……」

 言葉が途切れたのはバランスを崩して後転したからだ。その上にノヴァがのしかかる。傍目からすると、ノヴァがムドーを押し倒したかのようだった。


 あまりにもこっぱずかしい光景にさすがのライムも顔を手で覆った。

「ノヴァちゃんってけっこう大胆だったんだね。ねえ、テトもああいうことやられたら嬉しい?」

「う、うん。あ、でも、こんなとこでやるなよ」

「それってやれっていう意味だとどっかで聞いたことがある」

「本気でやめてくれ」

 身の危険を感じ、テトは悲鳴をあげた。緊張感が漂う会場に和やかな雰囲気が流れた瞬間であった。


 気を取り直したムドーが咳払いをすると、テトもまた真剣な表情で向き直った。強敵に打ち勝ったものの、最悪な状況は改善されていない。むしろ、次こそが本番といえた。

「テト、そしてライム。俺がつい最近負けたと言ったな。この際だから戦った相手を教えといてやる。そいつはパムゥだ」

「パムゥと戦ったことがあるのか」

 自分で言っておいた後に、彼にその経験があることを思い出した。ジオドラゴンが拉致された事件の時、助太刀に現れたムドーはパムゥの相手を申し出ていた。

 しかし、その時のことを言っているのなら矛盾が生じる。テトはライトより「ムドーが勝利したが逃した」と聞かされていた。齟齬に思い悩んでいると、ムドーの口よりあっけらかんと真実が語られた。

「ジオドラゴンを奪還した時のことだ。おそらくお前はパムゥと戦い俺が勝ったと聞かされているかもしれない。だが、そいつは嘘だ。ライトに頼んで事実を伏せさせてもらった」

「嘘をついたって、どうしてそんな面倒くさいことを」

「あいつにも言ったが、俺が負けたと知ったら同情して本気を出さんだろ。全力のお前をぶっ倒したかったのだが、どうやら力及ばずだったらしい」

 敗北の事実を隠匿するなど、彼らしいと思ったテトである。だが、問題は別にある。


「お前を負かしたって、パムゥはどんだけ強かったんだ」

「正直完敗やったな。あないな技を使われたら、勝とうと思うても勝てへん」

「気を付けろ、テト。パムゥは俺たちの神眼を超える反則技を持っている」

「要するに、滅茶苦茶強いってこと」

 いつもは気楽なライムも、慄きを隠すことができなかった。不穏な調子で話し合うテトたちを、パムゥは余裕綽々と見下げている。ムドーをして完敗と言わせたのだ。これまでまともに拳を交えたことがないこともあり、いかなる技を使ってくるか想像もつかない。

モンスター紹介

プチモス 自然属性

アビリティ 食いしん坊:ポーションを使った時、回復量を上昇させる

技 体当たり

序盤に登場する芋虫モンスター。

サナギモス、ギガモスへと進化するが、最終進化形のギガモスでもストーリー終盤を戦うのは厳しい。まして、進化前のこいつはゲーム中最弱レベルといっても過言ではない。

アビリティによりポーションの節約にはなる。

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