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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
5章 最強は誰だ!? 夢の舞台で雌雄を決せ!!
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馬鹿な提案と馬鹿な対決

「我がセレモニーのため、はるばるご足労頂き、誠に感謝する。この大会において、大いなる野望は完遂する。諸君らにはその目撃者となってもらう」

「野望って埋蔵金を手に入れようとでも言うのか」

 徹人はいきり立って言いがかりをつけるが、ケビンは表情一つ変えることはない。諸君らと複数形を使っていることから、同時に何人にもメッセージを送っているのだろう。いわば、予め用意しておいたビデオメッセージを再生しているようなものだ。

「私が欲するモンスターは言わずもがな。都合よく、この大会に出場するので、遠慮なく手に入れさせてもらう。その他のモンスターなど蛇足に過ぎん。子供の馴れ合いのような試合を繰り返してもつまらんだろう。そこで、私が考案した試合を紹介しよう」

 わざとらしく咳払いして言葉を切る。嫌な予感しかしないが、次の瞬間ケビンはトチ狂った提案を仕出かすのだった。


「ここにパムゥゲームの開催を宣言する」


 徹人は口を半開きのまま硬直してしまった。他の参加者も似たような反応であった。ただの狂言としか思えないが、ケビンは得意げに説明を続ける。

「別に大会を通じて君たちに危害を加えようというつもりはない。さすがに東海大会での所業は大人げがなさすぎたからな。今回は大会における無駄を省くだけだから安心してほしい。

 ルールとしては簡単だ。私に勝てた者が優勝。挑戦者はいくらでも構わんが、ただ私が根絶やしにしてもつまらんだろう。なので、トーナメントでも開催し、代表者を決めるといい」

「全国大会の優勝者に挑戦権をやろうってふざけた提案だぜ」

 悠斗が憤慨するが、徹人はじっと歯を食いしばっていた。こんなルールをふっかけるということは、ケビンは普通に戦って優勝する自信があるということだ。それが虚言ではないことは、関東地区大会での暴虐ぶりが証明している。


 荒唐無稽な提案をしてくるだけでも腹立たしいが、ケビンは更に追い打ちをかけようとしていた。

「さて、諸君らの中には私が狂言を吐いていると思っている者もいることだろう。ライバルを蹴落とすための心理作戦と考えられるかもしれん。なので、君たちの無力さを自覚させるため、あるプレゼントを用意させてもらった。もう少ししたら作動するだろう。楽しみに待っているがいい」

 一方的に言い残すとケビンのホログラムは消失してしまった。


「ふざけたことしてくれるよね」

 一緒に一方的な演説を聞いていたライムはお冠だった。プレゼントと言っていたが、ろくでもないものには間違いない。また、妨害工作をされると分かっていて何もしないのも愚行の極みだ。とはいえ、対抗策が思い浮かばないのもまた事実であった。

「ねえ、テト。どうする。このままやりたい放題になんてさせられないよ」

「分かってるさ。こういう時に頼りになるといったらあの人しかいない」

 徹人は壁の方を見遣る。悠斗と相槌をすると、二人して廊下へと連れ立っていった。


 隣の部屋の扉。壁を隔てたすぐそこに女性陣が集っている。そのうちの一人に用があるのだが、妙に意識してしまい、取っ手を握る指が震える。オートロックが掛けられているので、連絡しないと入れないのだが、なかなかその段階に踏み込めずにいた。悠斗と「お前が先にやれよ」と八十年代後半から活躍していたお笑い芸人のネタを披露する始末だ。流れでいくなら第三者が「じゃあ俺がやる」と申し出るところだが、そう都合よく話が進むはずはない。と、思っていたのだが、

「じれったいな。さっさと行けばいいのに」

 勝手に実体化したライムが強制的にドアのロックを解除してしまった。ドアノブに体重をかけていたため部屋の中に雪崩れることになるのだが、それが悲劇の始まりであった。


 部屋の中に入って最初に目撃したもの。それは上半身がほぼ全裸の日花里と真と綾瀬であった。


 意図せず徹人たちの前に晒すこととなったその姿はほぼ全裸と形容する他なかった。なにせ、上半身で身に着けているのはブラジャーだけだったのだ。両陣営ともに思考停止してしまったかのように固まってしまっている。弁明しようにも唇がうまく動いてくれないのだ。

「あんたたち、どうしてこんなとこにいるのよ!」

 ようやく沈黙を破ったのは日花里の怒声であった。徹人たちは慌てて逃げ帰ろうとしたが、入り口にオートロックがかかってしまったためかうまく開けることができない。四苦八苦している間に、背後から冷たい視線が迫ってきた。

「どういうことかきちんと説明してもらいましょうか」

 綾瀬の威圧に、徹人たちは萎縮するしかなかった。


 部屋の真ん中で正座させられる徹人と悠斗。多勢に無勢とはまさにこのことであった。別にやましい気持ちはなかったのだが、ノックもせずに入ったというのがまずかった。気分はさながら、打首の刑に処される前の罪人だ。

「で、私に急用があって慌てて入ってきたと」

 弁明のために、徹人は先ほどの出来事を話したところ、綾瀬が懐疑的な視線を向けた。日花里と真も迫るが、徹人は反射的に顔をそむけてしまう。

「真正面から語れないってのが怪しいわね。嘘じゃないの」

「いや、その、正面から見たら色々とまずいんだ。なあ、悠斗」

「うん、そうだな」

「その訳を話してもらおうか」

 真が真正面に回り込もうとする。どうやら致命的なことを忘れているようなので、指摘しておかなくても良さそうだった。が、火に油を注ぐこともないので教えてやることとした。


「だって、真正面から見たら、その、ブラジャー見えちゃうだろ」

 徹人に指差され、真は胸の前で腕をクロスさせた。それでも合間から黒のブラジャーが見え隠れしている。日花里がそそくさと白のブラジャーを隠そうと上着を着始めたのに合わせ、綾瀬も両手でピンクのブラジャーを覆った。

「大体、下着姿で何やってたんですか」

「別にやましいことはしてないわよ。綾瀬姉さんの胸が大きいって話をしていたら、真がどっちの胸が大きいか比べるって言うからさ。一緒に張り合ってたのよ」

「嘘は言ってないよ。私見てたもん」

 唯一視姦被害に遭っていない愛華が証言する。この前母親に「いい加減ブラジャーが欲しい」とねだっていたので、便乗して上着を脱いでいたら大変なことになるところだった。


「徹人たちが乱入してくることは予想外だったけど、勝負は私の方が勝ってた」

「いいえ、私の方が勝ちよ。どこに目を付けてるのかしら」

「あんたらそろってBカップでしょ。そう大差ないんじゃない」

「Dカップの綾瀬姉さんは黙ってて」

「今はBに甘んじていても、将来は大きくなる自信がある」

 貧乳の朧をパートナーにしておいてどこにそんな自信があるのか不明だが、ツッコムだけ野暮であった。

「そうだ。私たちの胸を凝視した徹人に決めてもらえばいい」

「あんたにしてはいい意見じゃない。徹人、私と真のどっちが胸が大きいと思う?」

「え、えっとだな」

 思わぬ形で飛び火を受けた徹人はうろたえる。綾瀬がどっちもどっちと下している通り、両者の間にそんなに差はないのだ。ここで迂闊なことを口走れば即座に抹殺される。


「うーんと、そうだな」

「あなたには聞いていない」

 悠斗が意見しようとしたが、即座に黙殺された。

「我が目に狂いはなし。森林の審判として判決を下そうぞ」

「あんたは引っこんでなさい」

 さりげなく乱入していたジオドラゴンは退散させられた。一方、張り合うほど胸がなくて落ち込んでいる朧をライムが慰めているところだった。少なくとも、この中で一番巨乳の彼女が相手では逆効果だと思われるが。


 谷間を寄せて強調してくる両者。一度上着の下を目撃してしまっているだけに、変な想像が働いてしまう。このまま無言を貫いていても解放される気配はない。苦心の末、徹人がとった行動は、

「遊んでいる場合じゃない、大変なことが起きているんだって」

 話題を挿げ替えることだった。


 最初は不満丸出しだった日花里たち。だが、徹人が粘り強く説得を続けたことで、嘘を言っているのではないと分かってくれたようだ。

「まあ、ケビンの乱入を受けてパニくっていたんなら仕方ないけど」

 完全にというわけにはいかなかったが、彼女からお許しを頂けた。ただ、安堵するのは早かった。ケビンからのふざけた提案の問題はまだ残っているのである。

シリアス回と見せかけてのエロギャグ回でした。

次回は真面目な話になる予定なので安心してください。

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