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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
4章 東海大会決勝戦! 激烈ライバル対決!!
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東海大会頂上決戦! ライムVS朧その3

最近、なろうのサーバーが不安定みたいですね。

ともあれ、朧戦決着です。

 九死に一生のアビリティはあるものの、化け物としか言いようがない攻撃を律儀に受ける道理はない。ライムはさっさと逃げの姿勢を取る。図体は大きいものの、ちょこまかと動き回る少女を的確に捉えるのは至難の業だ。まして、素早さを犠牲にしている分、動きは鈍足に違いない。俊敏さを誇るライムであれば楽に回避できるだろう。

 楽観していたテトであったが、シンもまた対策を施していないわけがなかった。

「当たらなければどうということはない。そう考えているかもしれないけど、ならば甘いわね。スキルカード恐慌クライシス

「まさか、そのカードを持っていたのか」

 超巨大剣に先行して、シンの手元より放たれたドクロがライムを襲う。ドクロの口腔に呑まれたライムは、途端に金縛りに遭ってしまう。回避を封じたうえに防御力を下げるレアカード。身動きを封じられてしまっては、防御するしか手立てがない。


 嫌味なほどゆっくりと迫る巨大剣。ライムは腕をクロスするが、それだけで防げるような代物ではなかった。切断されるというよりも圧迫されていき、同時にライムの体力値が急激に減少する。地面に膝をつき、全身で対抗しようとするも、巨大な刀身は容赦なくライムを押しつぶそうとする。

 シンが右ひじを曲げ、朧に撤退を指示する。すると、光とともに巨大剣は少女の姿へと戻っていった。ライムと接触したのは数秒の間だが、彼女が踏ん張っていた辺りの地面は抉られていた。


「大丈夫か、ラ……」

 声を掛けようとしたテトは絶句した。ライムは全身汗だくになり、四つん這いのまま息を荒げていた。体力値は「一」を示している。アビリティによりかろうじて首の皮一枚繋がった。だが、そのために多大な体力を消費したことは想像に難くない。たった数秒の間に何十発もの攻撃を叩きこまれた。化け物としか思えない威力を目の当たりにし、テトは戦慄するのだった。


「ライムを相手にする際、最も警戒しなくてはならないのは、九死に一生のアビリティ」

「ならば、規格外の攻撃をぶつけて、あいつを消耗させちまえばいい。そうすれば、何度も攻撃しなくとも倒せる。事実、もう一回究極の太刀を使えばKOだろ」

 朧は親指を下に向けて挑発する。遺憾ではあるが、彼女の言うことを認めるしかない。ライムがアビリティを再発動できる望みは限りなく薄い。宣言通り、もう一度「究極の太刀朧」を使われたら間違いなくアウトだ。


「大丈夫か、ライム」

「どうにか。驚いたよ、そぼろちゃんあんな大技を隠し持ってるなんて」

「本気で僕らを倒しに来ているってことだろう。でも、すんなり負けるつもりもない。ライム、朧が究極の太刀を使ったらバブルショットの発射に集中してくれないか」

「いいけど、作戦でもあるの」

「まあ、任せておきなって」

 朧とは真逆に親指を突きたて、テトは数枚のカードを取り出す。まっすぐに相手を見据える姿に、微塵の迷いも感じられない。ライムは傷ついた体を庇いながらも立ち上がった。


「そんな身体でまだやりあうつもり? 早々に降参した方が身のためよ」

「や~だね。まだまだ勝負はこれからだもんね」

「生意気を。シン、さっさと決めちゃおうよ」

「言わずもがな。朧、究極の太刀」

「御意」

 軽く地面を蹴ると、朧は超巨大な剣へと変貌していく。二回目でもなお、圧迫感に慣れることはない。

「シン選手、再度朧に究極の太刀を指示。満身創痍のライムではこの大技を耐えられまい。ここで勝負ありか」

 誰しも勝敗は決したと思っているだろう。だが、唯一テトとライムは希望を捨ててはいなかった。猛然と剣と刃向う姿に、微塵も絶望など感じられなかったのだ。


 死神の鎌を想起させる一太刀が迫り来る。だが、ライムは雑念を払い、一心に指先に神経を集中させていた。そして、気合と共にバブルショットを放った。

「とんでもない攻撃力があろうと、動きが鈍くなってはお話にならない。それに、防御力もゼロになっているっていうのも痛いな」

「あなた、何が言いたいの」

「要するに、攻撃が届く前にこっちの技を当ててしまえばどうってことないんだよ」

 朧の残り体力には余裕がある。しかし、防御力がゼロというのが致命的だった。これでは、同レベルの敵が相手の場合、どんな技を受けても即死してしまう。

 だが、攻撃動作中の反撃という分かりやすい弱点をシンが放置しているわけがなかった。

「あなたがこのタイミングで攻撃してくることぐらいお見通しよ。スキルカード天邪鬼パーバセネス発動」

「なんだと」

 ステータス変化を逆転させるシンの切り札ともいえるカード。しかし、ここで発動させるというのは予想外だった。テトが首をかしげていると、シンは解説を加える。

「究極の太刀は攻撃力を極限まで上げる代わりに、防御と素早さをゼロにする。ならば、それを逆転させればどうなるか」

「まさか、攻撃力をゼロにして、防御と素早さを上げるとか、そんなデタラメを起こすわけないよな」

「その通りよ」

 あっけらかんと返答されるが、テトにとっては冗談ではなかった。


 防御を捨てて攻撃特化になったのから一転、スキルカードの光を浴びた朧は防御形態へと移行した。防御力がカンストしてしまっては、いかなる技を受けようとも体力値が減ることはない。

「そして、攻撃が命中した瞬間、朧のアビリティでライムはダメージを受ける。これでフィニッシュよ」

 ライムの体力からして、朧の反撃を防ぐような余裕はない。意表を突いたつもりが、このままでは朧の一人勝ちだ。


 しかし、テトはすぐにスキルカードを掲げた。

「そんな使い方をしてくるなんて予想外だったけど、こいつを用意しといて正解だったぜ。スキルカード海賊版パイレーツエディション。天邪鬼をコピーし朧に使用する」

「なんですって」

 既に使用されたスキルカードを再利用するカード。天邪鬼によってひっくり返されたステータスを、更に天邪鬼によってひっくり返されたらどうなるか。

「一巡回って防御力はゼロ。当初の予定通りだ」

 発射速度からして、ライムのバブルショットが先に到達するのは間違いない。再度ステータスを操作しようにも、シンの手札にはそんなカードは備わっていなかった。


 それでも悪あがきでシンはたきつける。

「忘れたわけじゃあるまい。朧のアビリティにより、攻撃命中と同時に反撃を受ける。タイミング次第ではまだ私たちに勝ち目はある」

「だろうな。でも、僕たちが対策をしていないとでも思ったか」

 テトが隠し持っていたもう一つの切り札。そこには、地面に寝転がる情けない男のイラストが描かれていた。

「スキルカード無能ラッキングアビリティ。一ターンだけアビリティの効果を打ち消す」

 朧の自動反撃はアビリティの効果に依る。ならば、アビリティそのものを消去してしまえば発動は不可能になる。カード効果が発揮され、コンマ数秒後にバブルショットが炸裂した。


 巨大剣はまさにライムへと接触しようとしていたが、土壇場になって全身が光に包まれる。そして、少女の姿になったかと思うと、その場でうつ伏せになって倒れた。その少女、朧は気を失っており、自慢の剣は手からこぼれ落ちていた。

 熾烈な攻防にすぐには状況が呑み込めずにいた。だが、朧の体力が尽きたという事実を確認し、ファイモンマスターは声を張り上げる。

「勝者、テト選手そしてライム! やり直し前に引き続き、彼らが東海大会を制したぞ」

 飛び交う歓声により、テトたちもようやく成し遂げた偉業に実感が沸いた。ライムは気が抜けたようにその場でしゃがみこんでしまう。はしゃぎたいところだが、度重なる連戦で体力が限界だったのだ。

技紹介

究極の太刀朧

朧が特訓の末編み出して究極の必殺技。防御力と素早さをゼロにする代わり、攻撃力をカンストさせる。

ライムの自爆以上の攻撃力を発揮するため、まともに受ければ即死は確実。対処するには、素早さが低下していることを利用し、先に倒すしかない。

また、ステータス変化が発生していると見なされるため、天邪鬼により防御と素早さをカンストさせる完全防御形態に移行することも可能。使いようによっては攻防一体の強力無比の大技だ。

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