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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
4章 東海大会決勝戦! 激烈ライバル対決!!
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東海大会頂上決戦! ライムVS朧その2

 途中参戦したということで、テトは戦況を分析する。反撃の刃とのコンボのためライムの攻撃力を下げられている。だからといって、強化エンハンスを使うのは得策ではない。シンがあのカードを未使用なので、下手にステータス操作系のカードを発動したらドツボに嵌る。ライムが半ば戦意喪失してスキルカードを使用してこなかったことがむしろ吉と出ていたのが皮肉ではあるが。

 ライムが動向を窺っていると判断し、シンは先制攻撃を仕掛ける。

「朧、六の太刀桜花おうか

「御意」

 剣を掲げるや、刀身に桜吹雪が舞う。日本舞踊のような足さばきに合わせ、桜の花びらが朧の全身を彩る。あまりの美しさについ見とれそうになったが、

「まずい、ライムよけろ」

 寸でのところで回避指示を出し、斬撃を往なした。なおも朧は切り裂こうと迫るが、ライムは悉く避けていく。反撃に転じないのは朧のアビリティを警戒してのことだった。


「テト選手、シン選手の朧の猛攻に防戦一方だ。打つ手はあるのか」

「さすがにかわしてばかりじゃらちが明かないな。エンチャントスキルカードランダムキャノン」

 テトはスキルカードを発動し、ライムにキャノン砲を装備させる。ランダムキャノンによる攻撃力上昇効果は不確定なので、シンは迂闊にあのカードを使うことができまい。朧と距離をとったライムはキャノン砲に光の球を充填する。

 銃口が発光しているのを目にし、シンはスキルカードを取り出した。

「あなたの考えなどお見通し。だから、このカードを使わせてもらう」

「さてどうかな」

 含みのある言い方であったが、シンはカードを引っこめることはなかった。ライムが放とうとしている弾丸。その属性は十中八九分かり切っているはずであった。


 ライムが引き金を引き、バレーボール大の弾丸が発射される。同時にシンはスキルカードを発動した。

「スキルカード漆黒ジェブラック。光属性の技を無効にし、闇属性の技の威力を上げる」

 特定属性の技を無効にする定番カード。テトが放ってくると読んだ技。それはライトニングであった。闇属性の朧にランダムキャノンで強化した光属性技をぶつければ間違いなく大ダメージになる。短期決戦を狙うのならこうするしかあるまい。


 だが、カードの発動が成立しているにも関わらず、不可解な現象が起こっていた。なんと、弾丸が一向に消滅しないのだ。

「おいおい、スカカードを使ったわけじゃないよな」

「それはあり得ない。でも、なぜ」

 追い打ちをかけるように、テトはスキルカードを使用する。が、それもまたこの局面では使うようなカードではなかった。

「スキルカード炎化メタモルフレア。朧の属性を炎に変更する」

「あたいを炎属性にしたところで無意味だ。だって、放ってるのはライトニ……」

 言いかけたところで、朧とシンはハッと気づいたことがあった。迫って来る弾丸。そいつは本当にライトニングなのであろうか。キャノン砲を構えるライムは歯を剥き出しにして微笑する。途端、朧は悟った。「図られた」と。


 弾丸の直撃を受け、朧は吹き飛ばされる。ライムの体力が減少するが、そんなのは些細な問題であった。クリーンヒットにより、朧の体力値は一気に半分以下へと減少する。否、半分以下などという生易しいものではなく、残り体力は四分の一にまで達してしまっていたのだ。

 弱点属性で、なおかつランダムキャノンのクリティカルを引いたのであれば有り得るダメージだ。しかし、真面目にライトニングを放っていたのなら「漆黒」で打ち消されていたはず。


 一体ライムとテトはいかなるカラクリを仕掛けたのか。壁に叩き付けられた朧は血反吐を吐き、剣を支えに起きあがった。

「やってくれるわね、ライム」

「カモフラージュは私のお家芸だもんね」

 いたずらを成功させた幼児の如く、ライムはブイサインを交えて笑みを浮かべた。

「一杯食わされた。ライトニングと見せかけてバブルショットを放つなんて」

「おいおい、だましたつもりなんてないぜ。僕は一言もライトニングを指示していないし」

「ライトニングだと思った? 残念、バブルショットでしたってね」

 光の色といい、シンはライムがライトニングを放とうとしていると思い込んでいた。しかし、ライムが本当に放ったのはバブルショットであった。弾丸の色を変更することで勘違いさせたのだ。

 加えて、ライムの意図を汲んだテトが朧の属性を炎に変更することでアシストした。まさに、パートナー同士の阿吽の呼吸によってなし得た奇襲であった。


 体力の値からするとライムが不利だが、流れを掴んでいるのは彼女の方だ。この調子で攻められればすぐに逆転するだろう。そう把握しているからこそ、シンは肩に力を入れた。

「朧。やはり、ライムは本気を出さないと勝てない相手。だからこそ、特訓の成果を見せるとき」

「まさか『アレ』を披露する時が来るとはな」

 思わせぶりに言いあうと、朧は剣でライムを指し示した。野球で例えるならホームラン予告といったところか。なんにせよ、強力な攻撃が来ることを予感し、ライムは身構えた。


「両者ともに体力値は半分以下。いよいよ勝負も大詰めといったところだが……おおっと、シン選手の朧、なにやら仕掛けようとしているようだぞ」

 実況の声に、会場中の視線が朧に集まる。朧は目をつむるや、剣を鞘に納めた。この局面で試合放棄などという馬鹿なことはありえない。雑音を受け付けず、ひたすら呼吸を整える。剣道に通じた者なら、その行為は黙想だと分かるだろう。傍からすれば攻撃の絶好の機会ではあるが、ただならぬ剣幕にライムは手が出せずにいた。


 やがて開眼した朧は両腕を広げる。途端、彼女の全身をまばゆい光が覆った。空中へと浮かび上がり、全身を変質していく。その模様は以前にも目撃したことがあった。朧が真の姿である「フライソード」へと姿を変えた時である。同じように人間の形態から剣へと変貌しようとしているようである。

 だが、一つ異変が生じていた。変貌しようとしている剣が規格外の大きさなのだ。フライソードは一般的なロングソード並の体長だが、今の朧はその数倍にまで肥大化していた。人間以上の長さの剣など、巨人でもないと扱える代物でない。超巨大剣となった朧の切っ先はまっすぐにライムを狙っていた。


「こ、これはどういうことだ!? 朧が超巨大な剣になったぞ」

「フライソードが巨大化した……ってわけじゃないよな」

 テトは冗談をかますものの、動揺は隠しきれなかった。まさか、変身して襲ってくるとは予想外だったのだ。

「これこそが私たちの特訓の成果。究極の太刀朧」

「そのまんまじゃん」

「嘲る余裕はあるのかしら。この形態になると朧の防御力と素早さはゼロになってしまう。けれども、攻撃力はカンストする」

「カンストって、単独自爆並の攻撃力を得るってことか」

「あるいはそれ以上かもしれない」

 淡々と言ってのけるが、対する相手からすればとんでもない事実であった。手持ちが一体の時に発動する自爆は、いかなるモンスターをも一撃必殺できる威力を秘めている。そのことはライムの自爆により、テトは十分に自覚している。それと同等、下手したらそれ以上の攻撃力の相手が目の前で漂っているのだ。

スキルカード紹介

漆黒ジェブラック

光属性の技を無効化し、次に使う闇属性の技の威力を上げる。

特定属性を無効にするカードの一種だが、光と闇は互いに弱点同士になっている都合上、他のカードと比べるとかなり優秀な効果になっているといえる。

そのためか、大雨などよりも高値のレートで取り引きされている。

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