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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
4章 モンスター強奪! 自立思考モンスターの脅威!!
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最初の刺客

新作の執筆および私情により、しばらく更新頻度が大幅に落ちると思います。

最低でも週1,2回は更新するつもりなので、ご了承ください。

 決勝トーナメント進出者が確定したころ、テトはハルカとともに天空城フィールドを訪れていた。ライムを連れてくるよう指示されたこの地点は、ストーリーモードにおいてラスボスが待ち構えている所であった。アップデートにより裏ボスが追加されたが、ストーリーを進めていくにあたって関所となるのは間違いない。

 天空城に住まうラスボスの魔王を出現させるためには、最上階にある扉の前で「天空の剣」というアイテムを使う必要がある。既にストーリーモードを攻略済みのテトはそのアイテムを持っていたので、さっそく使おうとする。だが、ハルカが手首を掴んで阻害した。

「魔王と戦っても意味がないわ。この扉で合言葉を言えば、犯人が待つエリアへと繋がるはず」

「で、その合言葉は」

「えっと、ゆうてい、みやおう、きむこう、ほりいゆうじ……」

「それって復活の呪文じゃないのか」

 最終的に「ぺ」を連呼していたので、もょもとを誕生させるアレであった。ただ、最後まで「ぺ」を言い終わったところ、鈍い音を立てながら巨大な扉が開門していった。


 扉の向こうは岸辺が広がっていた。対岸には木々が生い茂っており、自然情緒あふれる風景に包まれている。犯人が潜んでいるにしてはそぐわないのどかな風景であった。

「こんなところに犯人がいるのか」

「そのはずなんだけど」

「おい、いるんならさっさと出て来い」

 テトが大声を張り上げてもこだまとなるだけ。返答があるとすれば鳥のさえずりぐらいだ。


「さっきの合言葉って本当に合ってるのか。どう考えても冗談にしか思えないけど」

「そ、そんなはずないわよ、多分。すごいバカらしかったから記憶に残っているもの」

 必死にハルカは訴えてくるが、テトは腕を組んで難色を示している。せっかく手掛かりを提供してくれた彼女を攻めても致し方ない。それに、入ってすぐ黒幕と遭遇するなどという都合のいい展開を期待するだけ無駄というものだ。


 とりあえず奥地へと進もうとしたところ、突如水面が泡立った。清流が乱れ、軒並みならぬ緊張感が迸ってくる。誰の目にも、川底に何者かが潜んでいるということは明らかだ。

 そして、水中より透明感のある触手が伸ばされた。テトはハルカを押しのけ、地面を蹴って飛びのく。触手は大木を叩いた後、川底へと帰還していった。


 突然の敵襲にテトはじっと川の方に注意を向ける。すると、泡立ちが激しくなり、ぬっと人間の顔が覗いた。どざえもんの類にしては整った顔立ちであった。ただ、目元が垂れ下がり陰鬱さを醸し出している。更に、髪の毛は無数の触手となって独自に動いていた。先ほどテトを襲ったのはこの髪の毛触手だろう。

 謎の生命体は水中より急速浮上すると、岸へと着地した。透明感のある白いドレスが水濡れのために体に貼りついていた。前傾姿勢で体を揺らしている様は、美しさよりも先に奇怪さが際立っていた。

「その反応、只者じゃあないね。あんたがライムの使い手かい」

「そうだ。お前は誰だ」

「ケビン親衛隊が一人ジェリー。主の命により、ライムは渡してもらうよ」

「ケビン親衛隊。予想はしていたけど、やっぱり犯人はあいつだったか」

 触手の髪を逆立て、ジェリーはゆっくりと迫って来る。彼女の他に人間の気配はない。一連の事件の実行犯はモンスター単独であったという。ならばこいつも、人間の手を借りずに行動する独立型なのであろう。


「ライムを手に入れるのって、ネットに眠る埋蔵金が欲しいためなんだろ。そのためにみんなのモンスターを奪うなんてふざけたことしやがって」

「文句なら私ではなく、本人に言ってほしいね。私はただライムを奪う、それだけだ」

「テト君、話が通じる相手じゃないわ。ここはさっさと……」

 モンスターを召還しようとしたハルカを、テトは首を振って静止させる。

「あいつの目的は僕だ。ハルカさんの手を煩わせるまでもない。それに、複数体同時バトルじゃないのに二対一なんて卑怯だろ」

「あくまで正々堂々と戦うのかい。嫌いじゃないね、その根性」

 触手を振りかざして威嚇するが、くじけることなくテトは魔法陣を展開する。そして、そこから小柄なライム、ミィムを召還した。


「話に聞いたよりも小さいような気もするけど、そいつがライムかい」

「私の名はミ……」

 本名を言いかけたミィムの口をテトは咄嗟に塞ぐ。腕の中で暴れるミィムであったが、「お前はライム。事件が終わるまでそう振舞ってくれ」と懇願され、ふてくされつつも大人しくなった。


「ミ、なんだって」

「ミ、ミートボールが食べたいんだよな」

「うん、ミートボール大好き」

「あなた、それは無理がない」

 白けてハルカは両手を広げるが、テトとミィムはごまかしのためにミートボール談義を続けていた。そのうち、弁当に入れるのはミートボールとから揚げのどちらがいいのかという口論に発展してしまったが。


「ミートボールだのから揚げだのそんなものはどうでもいい。痛い目に遭いたくなければ、大人しくその子を渡すんだね」

「嫌だね。お前らのふざけた野望のために、相棒を渡してなるものか」

「そうかい。じゃあ、力づくでいかせてもらうよ」

 ジェリーが両手を広げるやバトル開始と認識されたのか、双方にHPゲージが表示される。相手の素体が分からないが、川の中に潜んでいたことからして、水属性のモンスターであることは間違いない。ライムであれば攻撃属性変換でサンダーボールをお見舞いするところだが、あいにくミィムではそんな芸当はできない。地道にバブルショットのダメージを蓄積していくのがセオリーだ。

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