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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
4章 モンスター強奪! 自立思考モンスターの脅威!!
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対戦相手決定

 テトとライト。両者が強奪事件の犯人を討伐するために旅立ちしばらく経った頃、東海大会の予選は佳境を迎えようとしていた。残り時間は三分。独走するカズキは勝ちぬけ確定として、残りの枠を巡って熾烈な争いが繰り広げられている。

「おおっと、ゲン選手、豪快な一撃でシルフを沈めた」

 意外にも奮闘しているのが源太郎だった。トップ争いをしている一角に潜り込み、それでいて後れを取る様子もない。既に敗退が決定してしまっている京太の声援を受け、ヒーロー気取りで手を振っている。


「この様子だと、あのゴリラさんも決勝かな」

 出番までまだ間があるので、ライムは一人でラストスパートの模様を閲覧している。話し相手もいないので、正直かなり退屈だ。

「よう、徹人くん。調子はどうだい」

「っひゃい!」

 いきなり通信が入ったため、ライムは妙な声をあげてしまう。あきれ顔でモニターに映されたのは綾瀬であった。

「ライムか。どうした、変な声出して」

「な、な、なんでもないよ。それよか、どうしたの」

「いや、大会前に様子を見に来ただけ。さっきまこっちゃんと朧ちゃんにも会って来たけど、あの子たちやる気満々だったわよ」

 あだ名で呼ばれるのを嫌がっていたため、綾瀬は勝手に「まこっちゃん」と呼んでいるようだ。「しんちゃん」よりはマシだと真も半ば寛容しているようである。


「あれ、ライムちゃん一人か。徹人君はどうした」

「えっと、テトね。テトは……」

 よもや、強奪犯を捕まえるために女と出ていったなんて明かせまい。逆にそう考えるといじわるで入れ知恵したくなったが、留守を頼まれている以上テトに迷惑はかけられない。

 目を泳がせながらも、ライムは必死に知恵を振り絞る。そして出した答えが、

「トイレ。なんかお腹痛くなっちゃったみたい」

 ごくありきたりの代物だった。

「ふ~ん。まあ、緊張してるのなら仕方ないわね。試合前に茶々入れすぎちゃっても悪いし、早々にお暇しようかな。じゃあ、徹人君によろしく言っといてね」

 それだけ言い残すと、綾瀬は早々にログアウトしていった。同時に、ライムは実体化し、徹人のベッドへと仰向けに倒れた。


「ライム、いきなりどうした」

 実際の所、徹人は東海大会が開催されているサーバーにログインしていないだけで、現実世界ではずっと自室のパソコンにいる。突如ライムが大会のサーバーからログアウトして実体化してきたので仰天したという次第だ。

「いきなり綾瀬さんが訪ねて来たの。テトのこと聞かれたから焦ったわ」

「お前、変なこと言ってないだろうな」

「大丈夫だよ。だからテトは安心して犯人捕まえてきて」

 徹人が口を開こうとする前に、ライムは再び大会サーバーへと戻ってしまう。とんでもない失言をしやしないか徹人は不安になったが、早々に事件を解決して合流できれば万事解決となる。両頬を手で叩くと再びパソコンへと向き直った。


 ファイモン大会のサーバーにトンボ返りして一息ついていると、ひときわ大きな歓声が上がった。

「ここでタイムアップ。決勝トーナメントへの出場者が決定したぞ」

 巨大モニターには決勝シード権を承諾したテト、ライト、シンの三名の名前が予め刻まれている。残り十三人がいよいよ明かされようとしているのだ。


 ドラムロールと共に、上位入賞者から順に名前が読み上げられる。一位はやはりカズキ。カードは四十九枚と他の選手と大幅に差をつけていた。

 そして、七番目に意外な人物が入る。

「続いての出場者は四十五枚獲得。ゲン選手だ」

 名前を呼ばれるや、源太郎は「うおっしゃー!」と猛々しい雄たけびをあげる。彼もまた、ライムへのリベンジを原動力に勝ち進んできた猛者。なのだが、ターゲットとなっている当人は「やっぱあのゴリラさん勝ち上がったのか」と冷淡であった。


 十六名全員の出場者が確定したが、見直してみると異常事態が発生していた。なにせ、その九割ほどがライムと同じく美少女型のモンスターの使い手であったのだ。逆に、そうでないのは十四位にランクインした「ドモン・レイ」というプレイヤーぐらい。鼻が高く日本人離れしたアバターを使っていたので余計目立っていた。

 そして、トーナメントの組み合わせも発表されていく。真っ先に名前を呼ばれたのは真であった。ソウタロウという美少女モンスターの使い手が相手である。続いては日花里とロンドというプレイヤーの対決。二回戦で真と日花里がぶつかり合うかもしれないというあまりよろしくない組み合わせだった。


 徹人の名前が呼ばれることがないまま、トーナメントAブロックの組み合わせが決定する。どうやら、真と直接対決するには決勝まで勝ち残るしかないようだ。東都に行くという目的は果たしやすくなったが、因縁の決着をつけるという目的からすると厳しい条件となる。

「Bブロック第一試合の組み合わせを発表するぞ。おそらく、全ファイモンプレイヤーが注目しているであろうこの選手。テト選手とその相棒ライムの登場だ」

 アナウンスとともに、会場は異様な熱気に包まれる。某動画投稿サイトのようにコメントを投稿することで選手を応援することができるのだが、そのコメント数が一気に倍増したのだ。さすがに恥ずかしさが先行したのか、ライムはおずおずと手を振って応える。

「初戦の相手は決勝トーナメント初出場となる注目株。ゲン選手だ」

 呼ばれるや、ゲンは左の平手に右こぶしをうちつける。そして、ライムの姿を認めるや歯を剥き出しにする汚い威嚇を披露した。既知の相手が初戦ということもあり、ライムは安堵のため息をつく。とはいえ、先日ゲームセンターに出かけた際に、ゲンもまた少女のモンスターを持っていると露呈された。予選でも猛威を振るっており、足元を掬われることもあるかもしれない。尤も、ライム当人は「ゴリラが相手なら楽勝ね」と楽観論を繰り広げていた。


 ただ、後に控える面子は油断禁物な奴らばかりであった。あろうことか、次に呼ばれたのはカズキ。ほぼ間違いなくトーナメント二回戦で当たると考えてよい。更に、最後に「ドモン・レイ」が選出される。実力の程は未知数だが、準決勝という重要な局面で相対するかもしれない相手だ。ふとライムと目線が合うと、ドモン・レイは白い歯を剥き出しにしてきた。

「以上が決勝トーナメントの組み合わせだ。インターバルを挟んで、さっそくAブロック第一試合シン選手対ソウタロウ選手の試合から始めるぞ」

 アナウンスの後、会場メンテナンスのためか、一旦サーバーアクセスが解除される。ライムはその間に徹人の助力に行こうとしていた。だが、徹人から「トーナメントに備えて体を休めておいてほしい」と厳命されていた。逸る気持ちを抑えつつも、ライムはじっと再アクセスの時を待つのであった。

お察しかと思いますが、特別篇で登場したあの娘も本編登場確定です。

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