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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
3.5章 ライムに妹ができた日
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じゃんけん君の主「邪慳」その2

 ライムがファイティングポーズをとるのに合わせ、邪慳も拳を構える。老齢を感じさせない勇敢な立ち振る舞い。格闘技の心得がある者なら、一瞬で一筋縄ではいかないと分かる。

 そんな猛者にライムは真っ向から仕掛けていく……わけがなかった。

「バブルショット」

 突進していくと見せかけ、指先からシャボンの弾丸を放つ。それは邪慳の眼前で弾ける。

「こしゃくな、目くらましか」

 瞼をこすっている間にライムは急速接近する。そして、胸元へと潜っていく。肉薄したままアッパーカットをお見舞いしようとする。格闘ゲームをかじったことで身に着けた即席の技を試そうというのだ。

 だが、そんな付け焼刃が通じるような相手ではなかった。あえて顎でアッパーを迎え撃つと、がら空きになっている胸元へ膝蹴りを入れた。力量差では邪慳の方が勝ったのか、ライムは咳き込みながらよろめく。


小童こわっぱが、わしに挑むならおしめを外してからにせい」

「もう、拳で語り合おうと思ったのに」

 頬を膨らませるライム。自爆を発動させれば木っ端みじんにできそうだが、主を消してしまっては意味がない。説得するか屈服するかしないといけないのだが、後者は容易ではなさそうだ。


 ならばとライムは作戦変更することにした。どこから取り出したのか先端にハートのアクセサリーが付いたスティックを構える。手の中で回転させながら掲げると、ライムの全身が光に包まれた。

 まぶしさに邪慳は両腕で顔を覆う。一連の動作からライムがしようとしていることは予測できる。だからこそチラ見してみたいのだが、鮮烈な光がそれを許さない。


 やがて、視認可能なほどに閃光が収まったので、邪慳は恐る恐る腕をどかす。そして、ライムの姿を認めるや鼻を押さえた。

 なぜなら、眼に飛び込んできたのは爆乳だったのだ。着やせするタイプのライムは普段のワンピース姿だと察しにくいが胸に巨大な悩殺兵器を隠し持っている。それが惜しげもなく顕わにされているのだ。

 もちろん、不健全極まりないいかがわしい格好をしているわけではない。アウトラインギリギリではあるが、夏に海に行けばいくらでも見ることができる姿だ。ライムは青色のビキニを身に着けていたのである。


「これ着てみたかったんだけど、テトが『お願いだから夏まで待ってくれ』って言うんだもん。それって半年ぐらい先でしょ。そんなにも待てないから着てみちゃった。どう、似合う?」

 胸元を強調するように腰をくねらせる。その度に巨大悩殺兵器が揺れ、邪慳の鼻の奥が鬱血していく。だらけそうになる頬の筋肉を維持しながら邪慳は咳払いする。

「そのような色香でわしをほだすつもりか、たわけめ」

「もっとサービスしてもいいんだよ」

 今度は後ろ向きになり、腰を曲げて右手を膝に添える。その姿勢をとることで、ライムが隠し持つ巨大悩殺兵器第弐型が迫る。出るところは出るという体型のためか、胸に負けず劣らず尻も官能的であった。


 予想もできない奇襲に邪慳の鼻の奥のダムは決壊寸前だ。だらしない顔を晒してはじゃんけん君の主という沽券に係わる。なので震える指でライムを指しながら切り札になるであろう一言を浴びせた。

「お主、そんな恰好で……」

「どしたの、声を震わせて」

「そんな恰好で、寒くないのか」

 指摘されるや否や、ライムは盛大にくしゃみをした。同時に、なぜ徹人がビキニ姿を見たがろうとしなかったのか体感することとなった。


 暖房が効いた建物の中にいるからまだマシだが、ひとたび外に出れば容赦なく寒波が襲う真冬。一年の内、最も低気温となるこの季節に露出度が高すぎるビキニなど着たらどうなるか。

 モンスターに気候など関係ないはずだが、人間社会になじんだせいか「冬は寒い」という固定概念を刷り込まれてしまっている。邪慳の一言でそれを思い出してしまったため、身を震わせることになったのだ。


 加えて、徹人より通信が入り、

「ライム、お前何考えてんだ。さっさと服を着ろ」

 切羽詰った口調で命令される。現実世界に映し出しているホログラムはサーバー内での状態を反映している。なので、邪慳の鼻の下を伸ばそうと水着に着替えたつもりでも、現実ではゲームセンター内でいきなり水着になった痴女として扱われてしまうのだ。

 現在は徹人たちがライムの周りを囲んでバリケードを作っているため、どうにか露見せずに済んでいる。「ばれても、プリクラ用のコスプレで通すのよ」と綾瀬が無茶な注文をしているが、騒ぎになるのも時間の問題だった。


 お色気作戦が失敗に終わったということで、ライムは素直にいつものワンピースに着替える。どうにか鼻血の噴出を免れた邪慳は険しい表情を取り戻して胡坐をかく。

「サービスしてあげたんだから、コインくれたっていいでしょ」

 ライムは胸元を押さえながら手を差し出す。だらしない顔になりそうになりながら、邪慳は身を乗り出している。だが、大きく首を横に振ると、

「だが断る」

 意固地になってずっしりと構えた。


「どうしてよ。二十枚ぐらいくれたっていいじゃん、ケチ」

「黙れ。風俗店でもあるまいし、そのくらいでコインをやれるか。顔を洗って出直してこい」

「もう、頑固おやじなんだから」

 憤慨しながらも諦めきれず、ライムはワンピースの裾をちらりと持ち上げる。性懲りのないお色気攻撃に、邪慳は眉根を潜めた。

「まったくしつこいのう。コインをやるからさっさと帰れ」

 ハエを払うかのように右手で追いやられる。ライムは舌を出して威圧すると、そそくさとじゃんけん君サーバーを後にしていった。


 水着騒動があったこともあり、コイン投入から数分が過ぎようとしていた。ただじゃんけんをするだけのゲームでこれだけの時間をかけるのは異常だ。さっさとボタンを押せば即終了していたのだが、ライムより「話をつけるまで何もしないでね」と言明されていたので膠着状態を続けるしかなかった。

 ようやくゴーサインが出たので、徹人はため息をつきつつ「グー」のボタンを押す。続いてドット画面に表示されたのは「チョキ」であった。


 コインが当確したため、「ラッキー」の音声とともにルーレットが回りだす。ここまでは予定調和なのか、ライムは得意げに点灯の行方を追っている。やがて動きがゆっくりになり、円の頂点で止まる。

 意気込むライムであったが、そこに提示されていた数字を目の当たりにして愕然とした。無情にも排出されたコインは一枚だけだったのである。

「ちょっとあのおじさん、ケチ臭いにも程があるわよ」

 喚きながら筐体を揺らす。ライムが機械の中で何をしてきたか徹人たちは把握できていないため、彼女をなだめるのに精いっぱいだった。


 ライムの能力を以てしても一枚コインを獲得するだけが精いっぱい。二十枚を狙うなど夢のまた夢であった。ミィムが二枚以上コインを排出させられれば勝利となるが、のしかかる重圧は絶大である。ぶつくさと文句を言うライムを退出させつつ、ミィムは緊張しながらもじゃんけん君と対面する。

ライムはB85 W60 H85のFカップ。

上戸彩とほぼ同じ体型です。

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