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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
3章 炎と氷の亡霊! 史上最強の中ボス!!
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VSアルファリス、オメガリアその2

「ライム、体当たりだ」

 命令され、ライムは猛然と突進していく。テトのネオスライムへと一直線に。初歩技ゆえに、ネオスライムでも軽微なダメージで済む。だが、一般常識からすれば愚策でしかなかった。初歩技を指示しただけに飽き足らず、味方を攻撃目標にしたのだ。

 まさか本気でぶつかるわけにはいかず、ライムはちょっとどつく程度に留め置いた。体力も数ドットしか減っていない。


 貴重な攻撃機会を無駄にしてしまったうえ、ターンは相手に移る。アルファリスが選択した技はデスボルカニック。火山噴火並の熱波をぶつける炎属性最強クラスの技。しかも仕様変更により、相手陣営のモンスターすべてを範囲とすることができる。まさに踏んだり蹴ったりであった。

「二人ともかわせ」

 アルファリスが剣を横薙ぎに振るうや、耳をつんざく爆音とともに熱波が放たれた。うだるような暑さに、体中から一度に汗が噴き出してくる。ライムは顔を歪めながらも、かいくぐるようにして回避する。俊敏さに定評のある彼女であれば、こんな大技でも往なすことが可能だ。

 だが、ネオスライムはそうはいかない。おどおどとうろたえているうちに、熱波が全身を呑み込もうとする。折角生き残ったのに、早くも離脱してしまうのか。


 否、ネオスライムは目をつむると、全身をバネにして大きく飛び上がった。その飛距離は予想以上に長く、接近してきた熱波を余裕で飛び越えてしまった。

「ありえん」

 遠望していたムドーは愕然とした。ライムは仕方ないにせよ、ネオスライムはこれでお陀仏になるはずだった。なにせ、ネオスライムの素早さではどう考えても熱波をかわせるはずがないのだ。


 そして、ムドーの計算違いは度重なることとなる。テトの計画通り、ライムはヒートショットにより氷壁を溶解する。アルファリスを守る壁はなくなったが、肝心の攻撃役はネオスライム。まともに技を受けても蚊の一刺しぐらいにしかならない。高を括ったアルファリスは悠々と構える。

 ネオスライムは大きく息を吸うや、得意の攻撃技バブルショットを発射する。マグマの如く燃え上がる肉体に、気泡など些末な代物に過ぎない。

 そう思われたのだが、放たれた弾丸は明らかに速度が異常だった。空気抵抗により途中で弾け飛びそうなほど勢いよく差し迫って来る。


 端から回避するつもりがなかったアルファリスは、気泡の弾丸の直撃を受ける。その途端、アルファリスの体力は一気に減少し、半分ほどまで削られてしまった。ここまでの火力が出せるとしたら、全国対戦で頻繁に扱われているモンスターで攻撃するしかない。ネオスライム如きがこれほどの威力を発揮するはずがないのだ。


「どうなっている。まるで計算が合わん」

 ムドーは爪を噛んでぼやく。彼が常勝を守っている所以が高い計算能力だった。モンスターのステータス、技の威力を把握し、その時々に合わせ最適格となる一手を繰り出す。想定では、壁を崩されたとしても、四分の三ぐらいは体力を残せるはずだった。

「ノヴァ、あのネオスライムを探れ。どう考えても通常のステータスではない」

 同様に不思議がっていたノヴァだが、ムドーの最後の一言で合点がいったようだ。透明のままネオスライムに接近し、まなじりを広げる。怪しく瞳を光らせたまま、彼女はネオスライムを凝視し続ける。


 ノヴァのウイルス能力。相手を見るだけで、隠されたステータスさえも見破ることができる。この情報をムドーに知らせることで、彼の常勝の一助となっていた。

 ネオスライムの能力を分析した途端、ノヴァは息を詰まらせる。

「な、なんやの、これ」

 震えを抑えることができぬまま、ムドーのもとへと舞い戻り、結果を報告した。彼もまた動揺したが、すぐに息を整えて胸を落ち着かせる。

「そういうことか。味な真似をしやがって」


 アルファリスに一矢報いたことで、テトは大きく拳を振り上げた。こうも堂々と不正行為を働くのは流石に後ろめたくなる。相手がイベントのボスという野生モンスター(と、テトは思っている)だからこそ気兼ねなくできる荒業だ。

 ライムがネオスライムに対して放った体当たり。あれはただの仲間割れではない。ライムは接触した相手のステータスに干渉し、変更することができる。それを利用し、ネオスライムのステータス値を大幅に引き上げたのだ。


 ムドーたちが仰天したのは、ネオスライムとしてはあり得ないステータスを確認したからだった。スキルカードを発動してもいないのに全能力が倍以上に増加している。いや、スキルカードを使ったとしても、このステータスはあり得ない。なぜなら、上昇幅は最強のエンハンスカード「逆鱗」をゆうに超越していたからだ。

「全ステータスを異常に引き上げるなんて、反則やろ」

 心外とばかりに、ノヴァは憤慨している。そんな彼女をなだめると、ムドーは一枚のスキルカードを取り出した。

「相手がその気なら、こちらも手をこまねいている必要はない。時期尚早だが、こいつを使わせてもらう」

 手中に収められているのはスキルカード「融合フュージョン」。これこそ、テトを地獄に貶める最悪のカードであった。


 士気が向上したテトたちは、畳みかけるように攻撃を仕掛ける。対象は体力が減少しているアルファリスだ。オメガリアはすかさず氷壁を展開するが、ライムのヒートショットで即座に破られてしまう。そして、ネオスライムのバブルショットで更に体力が減少する。あと一撃で突破できる。

 そんなタイミングで、アルファリスはスキルカードを使用した。その途端、高揚していたテトは一転して全身硬直する羽目になった。

「マジかよ、こんなカードまで使ってくるのか」

 発動されたカードは「融合」。自己強化系らしく、放たれた光はアルファリスを包んでいく。


 同時に、オメガリアにも異変が起きていた。なんと、攻撃した訳でもないのに勝手にHPが減少しているのだ。それも、半減どころの騒ぎではなく、全体力が一気に消滅しようとしている。反対に、アルファリスの体力はオメガリアから吸収しているが如く、どんどん回復していく。

 そして、オメガリアが戦闘不能になったのと同時に、アルファリスは全回復してしまった。

「ねえ、青いのが勝手にやられちゃったよ。むしろチャンスなんじゃない」

「そうじゃないんだ、ライム。あのスキルカードはアルファリスに隠された真の力を発揮させるもの。降臨モンスターで初めて実装された禁断の能力、融合だ」

 あまりに有名なため、ファイモンのプレイヤーの間では常識となっているアルファリスのアビリティ。その名もずばり「フュージョン」である。

 同じチームにオメガリアが存在し、スキルカード「融合」を使用した時に発動する。オメガリアを戦闘不能にする代わりにアルファリスの体力を全回復させ、状態異常も解除する。


 それだけでも強力だが、真の恐ろしさはこれから発揮されようとしていた。アルファリスの下半身と左腕が徐々に青色に染まっていく。フリーになっていた左手にも剣、それも氷の剣が収まり、二刀流となった。後光のように燃え上がっていた炎の中にも氷が混じり、目玉にあたる光球も赤と青が混ざった紫へと変色していた。

 その様はまさに、アルファリスとオメガリアが合体した姿。その名もずばりアルファメガである。

モンスター紹介

アルファリス 炎属性

アビリティ フュージョン:チームにオメガリアがいて、スキルカード融合を使用した時に発動する。オメガリアを戦闘不能にし、HPを全回復、状態異常をすべて解除する。以降、このモンスターはアルファメガとして扱われる。

技 デスボルカニック ブレイズソード

降臨モンスターとして登場した、当時炎属性最強とされた亡霊。

非常に高い攻撃力を誇り、技を半減できるモンスターでも一撃必殺してしまうこともある。

普通に戦っても強いのだが、オメガリアがチームにいることで融合を発動し、真の力を発揮することができる。

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