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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
3章 炎と氷の亡霊! 史上最強の中ボス!!
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VSアルファリス、オメガリアその1

 イナバノカミと交戦した広間よりも若干広い一角。モンスターの気配はなく、最奥に上り階段が設置されている。

 地図を確認すると、ライトたちは約束の地点へと向かっている最中だった。上の階層は通路が複雑になっている分、到着まで時間がかかるのだ。

 なので、先に階段を上がって二人を待とう。そう決めて、テトとライムは広間を横断していく。


 だが、階段へと差し掛かる直前、進行方向にただならぬ気配を感じた。透明な壁が行く手を阻んでいるかのようだ。

「テト、この先に何かがいる」

「そのようだな」

 足を止める二人の前に魔法陣が展開される。それも二つだ。経験則上、この局面で立ちふさがって来るモンスターと言えば相場が決まっている。大ボスの前に最大の障壁となる中ボスだ。


 カドマツンの実力を考慮すれば、そこまで強力な相手は出てこないはずであった。だが、次第に姿を現す敵にテトは唖然とした。

「嘘だろ。どうしてこんな奴が中ボスなんだよ」

 赤と青の二色に染まった亡霊モンスター。顔の部分には黄金に光る巨大な球体が点っており、琥珀色のプレートアーマーを纏っている。赤の亡霊は燃え盛る炎の剣、青の亡霊は冷気が迸る氷の剣を携えていた。


 対照的な二色の亡霊を前に、テトはすくんでしまっていた。一方、勝手が分からないライムは首をかしげている。

「ねえテト。こいつら知ってるの」

「知ってるってもんじゃない。ファイモン初の降臨モンスター。あの当時、炎属性と水属性でそれぞれ最強とも呼ばれた悪魔。その名も、アルファリスとオメガリアだ」

 先史より繰り返されてきた戦で命を落とした戦士たち。その怨念が集まり、闘志を燃え上がらせた紅の亡霊がアルファリス。対照的に冷酷に復讐の機会を窺う、残忍な霊の集合体が蒼の亡霊オメガリアである。

 数時間限定でしか戦えない降臨モンスターとして数年前に実装された。その実力は半端ではなく、コンティニューすることなく倒すのは不可能とされたほどだ。


「僕もあいつらを倒すのに、所有していたコンティニュー用の宝石を軒並み使った覚えがある。ドロップするまで粘ったら、十連ガシャができそうなくらいの石が吹き飛んだぜ」

「つまり、とんでもなく強いってわけね」

「アルファリス一体でもお腹いっぱいなのに、オメガリアまで引き連れてくるとは」

 正直、イナバノカミを超越するといっても過言ではない。そんな奴らが中ボスとは明らかに不自然だった。

 同時に、テトはある懸念を抱いていた。この二体は単体でも恐ろしいのだが、加えてあるギミックを有している。しかもそれは、アルファリスとオメガリアが二体揃った時に発動可能となる。

「ライム、手加減は無用だ。いざとなったらウイルスの能力も使うけどいいな」

「もちろん。私の本気、見せてやるんだから」

 啖呵を切るライムであったが、二体の亡霊は意に介せずといった呈で佇むのであった。


「どうデス。この二体ならライムに確実に勝てマス」

 ゲームネクストのモニタールームでは、レイモンドがどや顔を決めていた。現在は対抗できるモンスターが出てきたとはいえ、かつて炎と水で最強と称されたモンスター。田島悟が想定していた作戦としては最悪だが、単純にタイマンするなら申し分ない。

「っていうか、油断させて倒すよりも、キライムを搭載したこの子たちで挑んだ方が確実に勝てるんじゃない」

「うむ。さすがのライムでも、最強クラスのモンスター二体が相手では分が悪いからの」

「それに、操るのは全国ランク一位。こりゃ負ける要素がねえな」

 四天王たちも作戦の成就を信じて疑わなかった。徹人は気づいていないだろうが、すぐそばでムドーが透明のまま待機している。彼のプレイイングが加われば鬼に金棒どころか、鬼に原子爆弾だった。


 相手が二体同時に出現しているように、このバトルは複数体同時バトルで進められるようである。以前のようにライム単独で挑もうとしたが、タイムアタックの最中にそんな道楽をしている場合ではない。

「不本意かもしれないけど、複数体同時バトルってのを利用してこっちも二体で戦わせてもらう。来い、ネオスライム」

 テトが新たに召還したのは水色のゲル状モンスター。かつて、ライムと戦った時に使用した二体目のネオスライムだ。


「ライムはまだしも、ネオスライムやなんて、相当な舐めプやなあ」

 姿を隠したまま、ノヴァは蔑むように両手を広げる。一方でムドーはじっとライムを注視していた。単なる趣味か。あるいは陽動作戦か。どちらにせよ、彼の標的はライムだ。そっと右手を上げると、音声を掻き消したまま指示を飛ばした。


 刃向う愚者を確認したのか、まずはアルファリスが動く。剣を振り上げた途端、一気にネオスライムに肉薄。悲鳴を上げる暇も許さず、火炎を纏った刀身で切りかかった。

 炎属性の攻撃技ブレイズソード。高威力ではあるが、相性により半減されてしまう。しかし、直撃を受けたネオスライムの体力は瀕死となってしまった。


 アルファリスを最強たらしめている所以は突出した攻撃力。登場以来、長らく攻撃力のステータス値一位を誇っていた。その気になれば半減される技でも一撃必殺は可能である。相手がAI故に、アルゴリズムに助けられたということか。


 そうテトは考えていたのだが、実際は相手の動向を窺うための牽制であった。ネオスライムがギリギリで攻撃を耐えるアビリティを有していることぐらい、ムドーは承知している。どうせ一撃で倒せないのなら、初めから本気を出す必要はない。


 まずはアルファリスを落として攻撃力を削ぐ。そう心づもりをしていたテトだが、易々と作戦通りにはいかしてくれそうにない。

 ライムとネオスライムが同時にバブルショットを放つが、それより先にオメガリアが立ちふさがる。そして、右手を広げて氷の壁を発生させた。


 水属性の防御技「絶対氷壁」。炎属性で攻撃されるまで、自軍のモンスターの防御力を大幅に上げる。同時バトルでは任意の味方を対象に使うことができるらしく、アルファリスを守るように氷壁が待ち受けている。

 二発のバブルショットにより壁は砕けるが、かなり勢いを削がれてしまった。そのせいで、アルファリスは弱点を突かれたにも関わらず、一割ほどしか体力を減らされていない。


 オメガリアは絶対氷壁を駆使した、圧倒的な防御力が自慢であった。この技が発動している間は、弱点技でさえも一撃必殺は不可能とすら言われている。


「アタッカーとディフェンダーのコンビって、綺羅星のなんちゃらみたいな組み合わせだな」

 テトが呟いた通り、相手の組み合わせはジェミニコンビを踏襲していた。単純なステータス差からしても、前哨戦以上の難敵となっているのは間違いない。

「あの氷の壁をどうにかしないと、まともにダメージを与えられない。ライム、炎属性の技が使えるお前が壁を壊すんだ。その間にネオスライムでアルファリスを攻撃する。これで行こう」

「え~、私が攻撃役になりたい」

「気持ちは分かるけど、効率を考えたらこうするしかないんだ。アルファリスを突破できたら、オメガリアはお前に任せるからさ」

「でもさ、この子じゃ力不足じゃない。テトの仲間にこんなこと言いたくないけど」

 ライムがなおも不満を顕わにしているのは尤もだった。弱小モンスターの代名詞であるネオスライムが、最強を誇る亡霊コンビに刃向うなど酔狂の極みである。


 もちろん、このまま突撃させようとは考えていない。テトはスキルカード「回復」でネオスライムの体力を回復させると、ライムにそっと耳打ちした。すると、眉を潜めていた彼女の顔がぱっと晴れ渡って来る。

「そんな作戦を思いつくなんて、お主も悪よのぉ」

「お前、どこでそんな台詞を覚えたんだ。まあ、いいや。頼むぞ、ライム」

 テトに肘打ちをしていたライムだが、気を引き締めるとアルファリスたちに向き直る。さっそく仕掛けてくるか。そう思われたのだが、急に方向転換し、標的を味方のネオスライムに定めた。

モンスター紹介

オメガリア 水属性

アビリティ ???

技 絶対氷壁

ファイトモンスターズでは初となる降臨モンスターイベントとして登場した。その当時は水属性最強のモンスターと謳われていた。

高い防御性能を誇る上、最強たらしめている所以として「絶対氷壁」という技がある。防御力を大幅に上げる技だが、炎属性の技で攻撃されるまで効果が持続する。あえて効果が薄い技で攻撃しないと解除できないため、相手プレイヤーは一ターンを無駄にして壁を崩すかどうかの決断を迫られる。

単体でも強力なのだが、アルファリスと揃うことで更なる力を発揮するという。

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