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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
1章 ライム誕生! スキルカードを取り戻せ!!
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ライムVSメガゴーレムその1

「ここは防御だ。スキルカードはつ……」

「そんなの必要ないよ」

 「硬化メタリック」を発動させようとしていた矢先、ライムがウインクして制止させる。すでにメガゴーレムの拳はライムの額にまで迫ろうとしていた。このままでは直撃は免れない。やむを得ず、テトはスキルカードの発動を続行しようとする。


 しかし、カード発動が確定するより前に、ライムがその場から消え失せた。対象を見失い、拳は空振りに終わる。

「スカかよ。あの野郎、どこ行きやがった」

 ゲンが鼻息荒く吼えかかる。すると、ライムは澄ました顔でメガゴーレムの腕に寄りかかった。

「こんなスローパンチ、テトの手を煩わせるまでもないわよ。攻撃が当たらなければいい。そうよね、テト」

「ま、まあ、回避重視の戦法ってのもありだな」

 元々使っていたネオスライムは鈍足のため、テトは「硬化メタリック」などで防御力を高めて相手の攻撃を凌ぐ戦法を使っていた。だが、ライムはそのスマートな体型から察せられるように、攻撃回避に特化しているようである。


 気合を入れた一撃が不発に終わったわけだが、慌てることなくメガゴーレムは拳を引っこめる。ゲンもまた、平然としていた。

「メガゴーレムの技は命中率が低めだからな。かわされるぐらいは想定の範囲内だ。むしろ、回避専門なら防御力は弱いはず。大技を一発でも決めれば逆転は不可能だぜ。メガゴーレム、レインストーム」

 上空に亀裂を発生させ、無数の岩石を降らせる技だ。これを回避し続けるのは至極困難である。


 防御を犠牲にしているのなら、硬化メタリックを発動したとしても効力は薄い。そう判断したテトはとっさに指示を飛ばす。

「ライム、お前の攻撃技であの岩を対処できないか」

「そんなの簡単よ。バブルショット」

 ライムは右の親指と人差し指だけを立てて銃を模す。そして、人差し指の先から泡の弾丸を発射した。


 子供のおもちゃのシャボン玉程度の大きさしかないが、その弾丸が岩へと命中するや、一気に亀裂を生じ、そのまま爆砕した。矢継ぎ早に放たれるシャボンの弾丸は次々と岩石を捉え、あれよという間に数を減らしていく。

「きゃはは、これ楽しい」

 遊園地のアトラクションに興じている気分で、ライムは降り注ぐ岩石を破壊する。よもや、レインストームをこんな形で防がれるとは思ってもみなかったのであろう。ゲンの額から汗がこぼれ落ちる。


 やがて、すべての岩石が粉砕され、ライムの足もとには砂利の山が降り積もった。その山を蹴り崩し、ライムは指鉄砲の標的をメガゴーレムに定める。

「今度はそのお人形さんを崩しちゃおっかな。テト、好きにやっちゃってもいいよね」

「あいつには水属性のバブルショットが有効だけど、策があるのか」

「ちょっとね。そうか、そのお人形さんは水が苦手なんだ。じゃあ、こうしちゃおっかな」

 ライムの指先が光り、魔力が体現する。岩石を砕いたあの攻撃が来る。そう察知したゲンはすかさずスキルカードを発動した。

「馬鹿の一つ覚えみたいに水技を使うなんて、全然成長してねえな。スキルカード旱魃ドライ。これで水の攻撃は無効だぜ」

 カードの光がメガゴーレムを包む。これによりバブルショットを放とうともダメージを受けることはなくなった。しかし、すでに発射準備は整っており、今更別の技に変更するなんてことはできそうにない。


 そして、ライムの指先から弾丸が発射される。弊害がないと分かっているのか、メガゴーレムは悠然と構えていた。あの巨大で回避を求めるのは酷だが、防御すらしないというのは舐めたものだろう。ライムが放ったシャボンの弾丸は無意味に弾け飛ぶ。

 そう思われたのだが、事態は予期せぬ方向に動いた。ライムが射撃を行ったのは間違いない。だが、その弾丸の種類があまりにも妙だった。

 それはどこからどう見ても炎なのである。

「まさか、バブルショットじゃないだと」

 ゲンは狼狽するが、一度発動してしまったスキルカードは取り消すことはできない。旱魃ドライが無効化できるのは水属性の技だけ。当然、炎の弾丸を消滅させるのは不可能だ。


 油断していたメガゴーレムに炎の弾丸が直撃する。それとともに、HPゲージが削られる。体力は四分の三を残していたものの、この奇襲による精神的被害は計り知れない。なにせ、ライムの使い手であるテトでさえ呆気にとられていたからだ。

「おい、ライム。お前バブルショットを使ったんじゃないのか」

「素直にそれを撃ってもよかったけど、こっちの方が面白いじゃない。バブルショットだと思った、残念、ヒートショットでしたってね」

 テトとの会話の流れからバブルショットを使うと思わせておいて、実際は全然違う技をお見舞いする。ライムが複数属性の技を使えるということに心理戦を加えた一撃であった。

「くそ、いきなり火属性の技を使うなんてインチキだぞ」

「インチキもなにも、そのゴーレムも火属性の技を使ってきただろ」

 それを指摘され、ゲンは行き詰った。複数属性の技を使えるモンスター自体は珍しくもない。差別化を図るために、火属性で唯一水属性の技を使うことができるなんてモンスターもいるくらいだ。


 顔を真っ赤にしたゲンは拳を握りながら、新たなスキルカードを使用する。

「スキルカード炎上バーニング。水属性無効は不発でも、こっちの火属性攻撃の威力を上げる効果は残っているぜ」

 体を燃え上がらせ、HPを少し削ったメガゴーレムは再び上空に亀裂を生じさせる。二枚のスキルカードの恩恵を受けて放つ、彼の必殺の一撃だ。

「ライム、もう一度バブルショットだ。この後隕石が降り注ぐから、それを迎撃してくれ」

「さっきの岩石のバージョン違いか。また同じことやらなくちゃならないなんてつまんないな」

 不満そうに足を揺らすも、右手はちゃっかり銃を象っている。ちらりと目線を上空に飛ばしており、挙句こっそりと左手で挑発さえかけていた。


 小馬鹿にされて憤慨するかと思いきや、ゲンは平生を保っている。それが逆にテトにとっては恐ろしくもあった。全国ランク三桁を自負する男である。あんな奇襲を前にして、このまま素直に攻撃してくるはずがない。

 そして、その懸念は的中してしまうのである。

「単に隕石を飛ばすだけならそりゃつまんないだろ。だから、もっと面白くしてやるさ。俺はスキルカード捕縛バインドを発動する」

 ゲンが三枚目のスキルカードを使用すると、メガゴーレムではなく、ライムの足もとに光が生じた。空ばかり注視していたライムは文字通り足元をすくわれる結果となった。

「しまった。そのカードはマズい」

 効力を把握しているテトは声を張り上げる。しかし、油断していたライムは回避しようとしたものの出遅れてしまう。

モンスター紹介

ファーラット 土属性

アビリティ 俊足:素早さを少し上げる

技 突進

素早いネズミを英訳してファーラット。ストーリーモードで最初のボスが使うモンスターでもある。

アビリティの影響で同じような能力値のモンスターと比べると素早さが高く、先制で攻撃を加えられるのが強み。似たタイプのモンスターにシャンクスがいるが、あちらはフィールドが森でないと真価を発揮できないため、巷ではシャンクスの上位互換とも言われている。

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