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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
3章 綺羅星の二重奏(デュオ)! 陰謀渦巻く新イベント!!
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タッグバトル! VS綺羅星の二重奏その2

「ここまで連携がなっていないのでは、テスト云々以前の問題だな。では、一気に決めさせてもらおう。スキルカード拡散ワイドスプレット

 カードより放たれた光がキングを包む。やがてその光は両腕へと集約された。輝く拳を構え、キングは白い歯を覗かせる。

「拡散は複数体バトルで効果を発揮する。通常の技は一体のみしか対象にすることができない。だが、このスキルカードを使うことで、二体同時に技を掛けることが可能。分かりにくいだろうから実際に見せてやろう。ジェミニキング、シャインナックルだ」

 命じられるや、ジェミニキングは両方の拳を腰の位置に構える。そして、大きく息を吸い、標的を見据える。朧とジオがたじろいだところで、気合とともに息を吐き出し、一気に拳を突き出した。


 光のオーラを纏った拳は、エネルギー弾としてジオドラゴンと朧へと向かっていく。直接殴りつけるどころか、オーラを具現化させてダメージを与える。もはや、ロケットパンチとでも称すべき代物だった。

 よもや、二体同時に攻撃されるなど思っていなかったのだろう。そうでなくても、諍いに夢中になって注意力が散漫になっていた両者。こんな不意打ちに反応できるわけがなかった。

 ロケットパンチの直撃により、両モンスターは虫の息にまで追いつめられる。特に、相性の影響で痛手を受け、朧はかろうじて生き残っている状態だ。アビリティでキングに反撃できたものの、それも微々たるものである。


 捨て鉢になって突撃するものの、クイーンが壁になって防御されてしまう。朧の太刀とジオの殴打を立て続けに受けてもけろりとしている。それどころか、自動回復ですぐさま治癒される始末だ。

「拡散の持続ターンは一ターンのみだが、それで十分だろう。ジェミニキング、各個撃破してやれ」

 ジェミニキングは指を鳴らしながらゆっくりと接近してくる。息も絶え絶えの両者は、立ち上がることすらやっとだった。


 進行方向からして、朧を先に標的にしているようだ。朧は剣を構えて牽制するも、キングは怯む様子がない。それどころか、右手に光を宿している。

 このまま朧が倒されては、僅かな体力で二体のモンスターを相手にしなくてはならない。そうなってはまず勝ち目がない。ライトはほぞをかむと、「あーっもう」と絶叫した。

「先に言っとくけど、あんたを助けるつもりじゃないからね。スキルカード逆鱗インペリアルラッシュ

 スキルカードから展開された光がジオを包み込む。同調して彼の内部より放出されるオーラで、全身がまばゆく輝きだす。血走った眼で、ギロリとジェミニたちを見据えた。


 敵が攻勢に出ると判断し、ミスターSTはクイーンを前衛へと移動させた。攻撃力が大幅上昇しているとはいえ、クイーンの防御力を以てすれば十分に防ぐことができるはずだ。そして、大技を放った後の隙を突けば、ジオドラゴンは落とすことができる。


 ジオドラゴンの両手にエネルギーが集約されていく。それは木枯らしなどに変換されることなく、そのまま塊として肥大する。余波で長髪を揺らしながら、ライトは大声で発射を宣言した。

「ガイアブラスター」

 地区大会において、土壇場で習得したジオドラゴンの最強攻撃技だ。溜まりに溜まったエネルギーがそのまま破壊光線として放出される。


 迫りくるエネルギーの潮流に、クイーンはしっかりと大地を踏みしめて備える。真正面から破壊光線に呑まれるが、攻撃の勢いは留まるところを知らなかった。

 なんと、クイーンを貫通し、朧へと差し迫ろうとするキングにまで到達したのだ。予期せぬ形で直撃を受けることとなり、キングは防御態勢をとることすらままならない。

「そうか、仕様変更の恩恵を受けていたか」

 ミスターSTは悔しそうに舌打ちしたが、後の祭りだった。守備に成功したクイーンはまだしも、キングはあろうことかクリティカルヒットしてしまった。攻撃寄り故に防御は低いというシンの推測は的中しており、キングの体力ゲージは一気に空になってしまった。


 魔法陣の中へと還元され、ミスターSTの場にはクイーンがいるのみとなってしまった。形勢逆転できたものの、よもや攻撃が貫通できるとは思っておらず、ライトは呆けてしまっていた。

「まさか、自分で自分の首を絞めるとは」

 自嘲するように吐き捨てると、訳が分からずにいる対戦相手に解説を始める。

「複数体同時バトルを導入するにあたり、いくつか技の仕様を変更したのだ。単純にいえば、一部の技は同時バトルの際に、複数体に一度に攻撃できるようになっている。ガイアブラスターもまた、その一つだ」

「要するに、知らぬ間に全体攻撃可能な技を使っていたわけね」

「ど、どうよ。これが私とジオの実力よ」

 偶然とはいえ、相手陣営を一気に壊滅寸前まで追い込んだのだ。勝ち誇るようにライトは胸を張る。


 劣勢となってしまったミスターSTだが、うろたえることはなかった。それどころか、クイーンに反撃の指示を下す。充填されるエネルギーの標的となったのはジオドラゴンだ。

「とんだ一撃だったが、まだ勝負は終わっていないぞ。大技の反動でジオドラゴンはまともに動けないはず。風前の灯火の体力では、クイーンのライトニングですら耐えきれないだろう」

 二対一とはいえ、キングのロケットパンチにより、一撃も被弾が許されない状況にあるのだ。気が抜けてしまったのか、ジオドラゴンは座り込んでしまい、動くことすらままならないようである。

「ジオ、危ないわ。早く立ち上がって」

「すまぬが主よ。脱力したようで、思うように起き上がれぬ。畜生、ここが我が死に場所だったか」

「物騒なこと言ってんじゃないわよ」

 怒声を張り上げるが、ジオドラゴンに再起の見込みはない。もはや万事休すか。


 だが、そんな彼の前に朧が立ちふさがった。愛刀を構え、クイーンへと鋭い眼光を送っている。

 ライトがシンを一瞥すると、シンはそっぽを向いて吐き捨てた。

「別に、助けようってつもりはない。ただ、一気に決めようと思っただけ」

 おもむろに朧が右手を掲げると、そこに新たな剣が出現する。むんずとつかみ取るや、禍々しい軌跡を描きながら振りぬいた。

「エンチャントスキルカード村正。残り体力が少ないほど攻撃力を上げる」

「そいつで一気に勝負を決めるつもりか。だが、そうはさせんよ。スキルカード硬化メタリック。素早さを犠牲に防御力を大幅に上げる」

 キングが退場したことで、クイーンの防御力は減少してしまっている。それを補うために、ミスターSTは防御上昇のスキルカードを使用する。


 だが、クイーンに生じたエフェクトはステータス下降を示すトーンダウンであった。瞠目するミスターSTに、シンは一枚のスキルカードを提示した。

「スキルカード天邪鬼パーバセネス。あなたがこの局面で、ステータス上昇のカードを使うことぐらい容易に推測できる」

 ステータスの変動効果を逆転させるカード。これにより、クイーンの防御力は大幅に減少してしまう。


「舞台は整った。決めなさい、朧」

「御意。目にものみせてやんよ。諸刃斬り」

 防御しきれないと判断したのか、クイーンは逃走を図ろうとする。しかし、疾走する朧からは逃れることができなかった。慌てて防御へと転じようとするが、時すでに遅し。防御をかなぐり捨てた朧の一刀がクイーンを真正面から捉えた。


 気持ちいいぐらいの袈裟懸けにより、クイーンの体力もまた底を尽く。魔法陣が展開してクイーンが光へと還元されるとともに、試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。

モンスター紹介

ジェミニクイーン 光属性

アビリティ 双星の鉄壁:チームにジェミニキングがいる時、防御力が上がる

技 ホーリーリング ライトニング

綺羅星の二重奏の一派で、可憐な女性戦士。

キングとは対照的に防御力が高く、アビリティで更に伸ばすことができる。彼女が敵の攻撃を引きつけている間に、キングで攻撃するというのが常勝戦法。

反面、攻撃力が低いので、彼女単体では決め手に欠けるのが難点か。

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