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第13章5

お待たせしています。久し振りの更新です。


 ゼロは我が耳を疑った。

 放たれた言葉があまりにも衝撃的すぎて……。


 ――形だけの……妻?


 歓喜した途端、奈落の底に突き落とされたような気分になり、その言葉だけが幾度となく頭の中を駆け巡る。


 《そうか、そう言う事か……。今更、この私が……。ありえんな》


 内に秘めていた言葉を飲み込むと、ローレライが自分に抱いてくれている好意の形が、自らの求めているものと大きな違いがある事を理解し、自嘲気味に鼻先で笑った。

 ローレライが抱いていた自身に対する感情は、おそらく友愛か師弟愛的なものだったのだ。

 もはや異性に対する愛情以外の答えを求めていなかったゼロにとって、それは残酷としか言いようのないものだった。

 ともすれば自暴自棄になってしまいそうな激情の中で、それでもローレライの傍にいることが出来る権利を与えられたのは、自身にとって幸運な事なのだろうか?

 ……いや。きっと辛く険しいものになるだろう。

 それでも、傍を離れると言う選択肢はゼロの中から沸いてこなかった。

 ならば、導き出す答えは一つしかない。


「分かった……。お前がそれを望むなのならば、私はお前と結婚し、サザーランド国の新王に就いてやる!」


 ゼロは吐き捨てるように険しい表情で言葉を口にしていた。



 ローレライはゼロの険しい表情を見て、やはり自分は生涯の伴侶としては求められていなかったのだという事を理解する。

 覚悟はして来た筈だった。それなのに……。

 心が搔き乱され、ローレライは溢れ出す涙を、最早止める事が出来なくなっていた。



「何を泣く必要がある? 私はお前の望みを叶え、運命を共に受け入れると言っているのだぞ!?」


 まさかローレライが泣き出すとは思っていなかったゼロは、戸惑いを隠せない。

 想い人から婚約者と告げられ歓喜していたのもつかの間、今度は形だけの妻で良いなどと言われるとは誰が想像するだろうか?

 心情的に複雑な立場に立たされているのは自分の方であって、決してローレライではない。

 女とは分らぬものだと思わずぼやきたくもなるが、言葉を吐き出した所で何かが変わるとも思えない。

 だが形だけと言う事は、自らが男として求められていないという事実に他ならず、ならば今後ローレライとどのような関係性を気づいていけばいいのかの判断もつかぬまま、途方に暮れたくもなるが、そこは惚れた弱みである。

 理解に苦しむと思いながらも、泣いているローレライを前に、このまま放ってはおけなかった。


「はい。……それは有難いと思っています。……でも、私ッ……、ゼロに無理強いしています」


 自らが本心ではゼロから望まれていないと思い込み悩み、ローレライが悲嘆し涙している事を知る由もないゼロは、ローレライの言葉に大きく息を吐き出した。


「悪かった……。私が投げやりな言い方をしてしまったから、傷つけてしまったか? 決してお前の導きを迷惑だと思っている訳ではない。新王になる事に対しては、勿論戸惑いもあるし考えは全く纏まってはいない。だが、お前と一緒にいる事は嫌ではない。だから今迄の関係性を壊すつもりもないし、急にだからと言って何かが変わるものでもないだろう?」


 ゼロはローレライのから告げられた言葉を配慮し、今自身が出来るであろう精一杯の言葉を紡ぎ出したつもりでいる。


「嫌では……ない? ……何も……、変わらないの??」


「それでは駄目か?」


 ローレライは涙を拭うと、ゆっくりと顔を上げ大きく首を横に振る。


「……腕に……、触れても?」


「ああ、構わない」


 ローレライはゼロを見上げると、その腕にしがみ付いた。


 ああ、やはりこの腕はこんなにも私に安らぎを与えてくれる……。

 女として見て貰えなくてもいい。

 傍にさえ居られればそれ以上何も望まない!


《せめてゼロに……、本当に好きな人が出来るまで、彼の傍にいる事をお許しください……》


 その温もりに触れながら、ローレライは心の中で神に祈った。


ローテーションと言いながら、ムーンの方を何話か更新していました。スミマセン。


色々と忙しく更新はスローとなりますが、引き続きお付き合い頂ければ幸いです。

次の更新は来月の予定です。

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