第12章8
大変ご無沙汰してしまいました。
ゼロとルシオンは神妙な面持ちでローレライを見つめていた。
「お兄様はもしかしてお母様から聞いている? ドレアスが私の運命を導くべき者だと言う事を」
「ああ、聞いた。邸を出る時に。だからレライを助けてあげなさいって言われた」
「ドレアスが導く私の運命……、パウリンを私が持って生まれた事の意味は、婚約者を探す為なの」
二人とも絶句した。
ゼロの表情は見る見るうちに険しいものになって行く。
「……お前が、パウリンの? ……では、お前はずっと、その婚約者を探していたのか!?」
「……そう。私は現王が国を滅ぼすとパウリンが見定めたから、新たな力となるパウリンを持って生まれて来た者なのよ……。だから婚約者となる新王となるべき人物を探すよう託された。そうザビーネ様が教えて下さったの」
「では、お前の持つパウリンに映し出される者こそが……」
「私の婚約者であり、この国の次代の王となる人……」
ローレライは震える拳を必死に握りしめ、奥歯を噛み締めながら今にも泣きだしそうな自分を必死に押さえ込んでいた。
「……そう、か……」
ルシオンには、ゼロの声が心なしか震えているように感じられた。
運命とは、なんと皮肉なものなのだろうか。
この二人は、きっと互いに惹かれあっている筈なのに……。
ゼロの本心を探る事は出来ないが、明らかに彼が妹の事を可愛がっていたのは事実だ。
そして、レライの方は間違いなく、ゼロに恋している。
見ていれば分かる。
兄としては複雑な心境ではあったが、兄だからこそルシオンには分かる事でもあった。
「レライ……、お前大丈夫か?」
兄からの労りの言葉に、見透かされてしまった心を必死に隠しながら、ローレライは小さくコクリと頷いた。
「今まで、何の反応も見せなかったパウリンが……、昨夜から時々光を放っているの。……あの……時から……」
昨夜の辛い出来事が、一瞬ローレライの脳裏をかすめた。
「本当か!?」
「でも、怖くて覘けないの……。あの時パウリンが反応を見せたという事は、……まさか、あのライサンドが……。そう思うと怖くてとても覘けないっ……」
それは事実だったが、ローレライの本心とは少し異なる。
運命を受け入れてしまったら、きっと今までの様にゼロと一緒にはいられなまなってしまう……。
その事が、ローレライを躊躇わせる本当の理由だった。
ローレライの手は、服の上から胸に下げられてあるパウリンを握りしめながら、フルフルと震えていた。
「馬鹿だなぁ、レライ。ライサンドの筈が無いだろ!? あってたまるか! 何を馬鹿げた事を言い出すのかと思えば……」
「でもっ……」
「いや、それには私も同感だ」
「ゼロ?」
「そもそもパウリンの導きが、我王の身勝手な治世を終わらせる為に見出された筈のものならば、引き摺り降ろした所で次の王がライサンドだなど先が知れている。それこそ別の意味で国の腐敗は確実に進む。そのような選択肢をあの神聖なるパウリンが導くとは到底思えない。パウリンの力は本来、国政をより良い方向に導き支えて行くものなのだ。何者が新王かは知らんが、悪しき力量しか持ち得ぬあいつが新王になる事だけはあり得んから安心しろ」
ゼロにしてみても、ローレライからの告白はあまりにも衝撃過ぎて、本当はとても彼女をを諌めてやれる心情では無かった。
しかし目前で辛そうにしている姿を見た時、ただ漠然と見守るだけ等、耐え切れなかったのだ。
手を差し伸べずにはとてもいられず、自分で自分の首を絞めている事を自覚しながらもそう思えてしまうのは、既にゼロの主観がローレライの目線になっている事を告げていた。
ここまでくれば自分は馬鹿としか言いようがない。
ゼロは自らの告げた言葉と同時に、言いようのない疎外感に襲われていた。
ゼロの言葉は、今のローレライにとって凄い説得力があった。
彼は自分よりも、パウリンの本質について知っているのかもしれない。
そう思えた。
ゼロの言う事はきっと正しい。
でも、知りたくない。
知ってしまえば自分の運命も、国の運命も大きく動き出すことになる。
(そうしたら、この想いは何処に行けば良いの?)
ローレライの心も、淡い恋心を胸に秘め、悲鳴をあげていた。
けれど……。
「……覗いてみます。運命に逆らう事は、私にはやはり出来ませんから……」
ゼロはローレライの導き出した答えに、静かに頷いた。
受け入れなければ……。
自分の手にはこの国の未来が託されているのだから。
そして何より、今の自分にはゼロの手助けが出来る。
その事だけが、今のローレライには救いとなっていた。
ムーンの方で色々とUPしてしまい、こちらが疎かになってしまいました。スミマセン^^;




