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第12章3

大変お待たせしました。

地下へと続く階段を下っていると、シドの罵声が耳に突き刺って来る。


「この期に及んでまで、お前はまだシラを切り続けるつもりなのか!!」


どうやら聞き出すのに、かなり手間取っているようだ。


「シザーレ、変わろう」


「すまん……」

 

少しだけ申し訳なさ気にそう告げると、シドは肩をすくめながら頼むとばかりにゼロの肩に軽く右手を置いた。

シドの隣には昨夜からずっと地下牢の監視をしているタウリンも居る。こちらもゼロの訪れにすがるような眼差しで深々と頭を下げている。

ライサンドは地下牢に入っても反省の色は全く無いようで、それ所かそのふてぶてしい態度を一向に変えていない様子だ。


「やあ、アイスラント。随分と慌ただしいみたいじゃないか。何か大事でも起こったかい?」


悪びれるこちらを茶化すような白々しい態度に、ゼロがライサンドを鋭い目つきで睨みつける。


「仔馬を、何処にやった」


「唐突に、何を言い出すんだい? 訳が分からず困惑していると言うのに、そんなに怖い顔するなよ。相変わらず無遠慮であからさまな奴だなぁ。何が出来るって言うんだい? この囚われの身の私に」


「最初から、捕まった場合も想定しての行動だったのか?」


「はあ? だから訳が分からないって」


「その割にはお粗末な結果だったな。バラサインだからと言って、何でも自らの思い通りになると思っているとしたら大間違いだぞ」

「なッ……、人の領地まで来て、しゃしゃり出るなよ!」


「お前の領地ではない。伯父上の領地だ!」


「っ……、だが、何れは私のものだ!」


「私欲に塗れ、領民を食い物にしているお前が領主に等なれるか!」


「昔の事を未だに蒸し返すのかい? お前も結構了見が狭いんだ,ね。今の私は昔とは違う良識人になったと言うのに、まんまとあの女に嵌められた結果被害者だよ。サンドラもずっと物欲しそうな眼差しで私に気がある素振りを見せていたからわざわざ部屋まで訪ねてやったのに、どいつもこいつもホント大げさすぎるよ。……、あっ、もしかして今回の件は、お前が私を陥れる為に、あの女に私を誘惑させたのか? そうか、そうだったのか。やっぱり私は悪くないじゃないか!」


突拍子もないライサンドの都合の良い思い込み発言に、ゼロの拳が怒りでワナワナと震え出した。


「……お前と、言う奴は……ッ」


このように腐った人間が身内であると言う事に、ゼロは激しい憤りを覚えていた。

ライサンドと言い……我王と言い……、狂った輩にこれ以上付き合うのはもうウンザリだと感じていた。


「……私の事をどう言おうと構わん。しかし、あいつを侮辱する事だけは許さん! 気がある素振り!? 何処がだ! お前のような者を……、私は絶対に許さん!!」


「別にお前に許して貰う必要は無いさ。もう全ての駒は回り始めている。今更どうにもならない」


そう告げると、ライサンドは不敵に微笑んだ。 


「……何をした!?」


「まぁいいか。もう峠は越えている頃だしな、どうせ追いつけない」


「やはり、お前は伯父上の使者をッ」


「フッ、今更気付くとは、生ぬるい奴だな。そろそろ父上には隠居して頂く。私が父より拘束され、家督が危ぶまれた時の対処は既に言いつけてある。おそらく今頃父が持たせた書状は、私の手の者がすり替えている筈だ」


「……何だと!?」


「残念だったな。だから今更何をしても無駄だ。このバラサインでは、もう誰も私には逆らえなくなるという事だ! ふふっ」


小さく鼻で笑った後も、ライサンドの不気味なまでの笑いは収まらない。余程自らの策に自信があるのだろう。

だが、ライサンドの不敵な微笑みにもゼロは落ち着き払っていた。


「今、私の手の者が信用のおけるキールの者数名と、ソイドとその周囲の者達の行方を追っている」


「な……ッ!?」


ゼロの一言で、明らかにライサンドの表情が硬直する。


「このような話、お前には関係のない事だろうから気に留める事もないか。その者はかなりお前と故意にしているようじゃないか」


「……ばっ、馬鹿を言え! ソイドとは確かに面識はあるがそれだけだ。奴は父の大のお気に入りなんだぞ。そんな……、わっ、私の言う事など聞く訳が……」


明らかに落ち着きのない様子で事実を否定しようとするライサンドの様子にゼロは微笑する。

ライサンドはまさかソイドの事が知れるとは夢にも思ってもいなかったのだろう。

ソイドは現キールにおいて中心的人物の一人で、公爵からの信頼も厚い。その者が本当は自分の側にいると言う事実は、おそらくライサンドにとって、今までかなり強力な切り札だった筈だ。

だがその事実は、自らの保身の為に、決して受け入れられる事実ではない。

何があっても、ここはシラを切り続けるしか無いとライサンドは思った。

色々と最近、執筆が遅れがちですみません。

活動報告が書けない時はツイッターで時々呟いているので、ご覧ください。

出来る範囲でこれからもムーン様の連載とローテーションで進めていきますので宜しくお願いいたします。

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