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第10章3

お待たせしました。

先王の時代まで額に三日月の白斑馬は、足も速く持久力もあり頭も良い三拍子揃った名馬で王家の馬として珍重されており、その名馬の噂は他国でも知られる所であった。

交易のある国々からは今まで何度となく譲渡の申し出はあったが、これを前王の世代までは断わり続けていた。

初代サランドル王から受け継がれ血統を守り育てられている名馬。

王族に近い者にしか代々与えられぬとされている名馬を他国に出すなど考えられない事だった。

我王も馬に興味はないまでも、暗黙に了解しているようだったのだが、ある時城に出入りしている隣国の交易商の者から放たれた一言で、考えを変えてしまったようだった。

その者は自国の王に世継ぎが生まれたお祝いにと、是非とも名馬を分けて欲しいと言い出し、最初は流石に渋っていたものの、それが叶えられれば今までの借金は全て帳消しにしてやっても良いと言われ、早急に探し出して譲渡すことを約束したと言う。

その話をたまたま城に上がった時に小耳にはさんだライサンドは、今後の地位確立の為に何としても自分が名馬を手に入れ、我王に引き渡そうと思ったらい。

その話をザグソンが聞きつけた。そして二人は契約を交わし、ライサンドはザグソンに誰よりも早く何としても情報を掴むように指示を出した。

かねてからライサンドに怪しまれずに近づくには農夫となり信頼を勝ち取り、屋敷の出入りを許されることが一番の近道だとだと考えていたニックは、戻って来てからザクソンの所で働けるよう活動を始めた。何とか農夫としての職を得て、そこで信頼を勝ち取るために身を苦にして働き、そこそこの信頼を得る事が出来た。そして仕上げとなるのが今回の血統馬だと考えたのだ。

目をかけて貰えるように興味をそそる話を持ち掛け、純種の血統馬を探し出す命を受けた。2か月かけて情報を集め、やっと見つけ出したのがドレアスだった。

早速ライサンドに報告したザグソンは、ライサンドから信頼できる者をやるから首尾よく動けと言われ、その者に全てを託したそうだ。

ザグソンはニックに道案内をさせ、盗みに入ったのはライサンドが寄こした一癖ありそうな面々。ライサンドは寄こした者が何者かは告げなかったらしいが、元キールに居たニックはアシュド邸に盗みに入った者達の手口や行動でライサンド派の若いキールの者だと確信したらしい。

難なく仔馬が手に入るとライサンドの機嫌は更に良く、ザグソンも今まで以上に屋敷への出入りを許された。

ザグソンからの信用を得たニックは、段取りは順調に進んでいると思っていた。

ザグソンに付き添い屋敷の出入りも許されるようになった。

より信頼を得た頃合いを見はからってライサンド暗殺を実行するつもりでいた。


ザグソンはライサンドから足がつかぬようにカモフラージュに使った仔山羊は早々に始末するように言われたらしい。

そこで当初、仔山羊を牧場に連れ帰ると直ぐに言われた通り処分しようとしたのだが、夫人から金になるのにみすみす殺すのは勿体無いと言われたらしく、暫く牧場に置く事にしたのだと言う。

夫人は自ら足がつかずに手放す手段は無いかと策を講じており、色々調べ競売の事を聞きつけると、夫には内緒で処分した事とし、ニックに頼み自分に目が向かぬようにと、今度は旦那の名を使って競売に出したと言うのが今回経緯だった。


「あの強欲な夫人に感謝しなくてはなりませんね」


サビエルがクスリと笑った。


「本当だな。ミゲル、早速で悪いがゼロ様に早馬を出してくれ」


「招致致しました」


そう告げるとミゲルは早々にバラサインを後にした。



ニックの目的は唯一つ、ライサンドへの復讐だった。

こちらの主も6年前のライサンドの所行には胸を酷く痛めており、このまま不問にするつもりは毛頭ない事をニックに告げると、ランドンの説得もあり、こちらに協力する事を約束してくれた。

検証はしていないので何とも言えないが、ニックの話が全て本当ならば公爵家の跡継ぎと言えど謹慎で許される程度の所行ではない。

確実に実刑が科せられるはずだ。

ただ、我王は自分に媚び諂う者にかなり寛大であるから現我王の政権下では闇雲にされる可能性もある。

聞き及んでいる前王の時代ならば良くて投獄、流刑、もありえる話だ。

ゼロ様は、ゆくゆくは我王を引き摺り下ろし、聡明なザンゾール公を新王に就けることをずっと望まれていた。

しかし、こうなってはそれももう難しい話となるだろ。


“ゼロ様が新王に就いてくれれば……”


ゼロは己の保身の為に我王を討つ等、決して自ら豪でそのような事をする人物ではない。

生粋の騎士だからこそ自分が仕えるに値する主君の許で働きたいと願っている人だ。

その事を十分に分かっているはずのフリードルだが、今はそう考える以外妙案は思いつかなかった。



バラサインから早朝、まだ陽が昇る前にトランゼに到着したミゲルは、その足でゼロの部屋に赴いた。

直ぐにシドを呼ぶように言われ、呼びに行くと二人で再びゼロの部屋を訪れた。

ミゲルが事の詳細を報告し、協議の結果ゼロが決定を下した。


「公爵に正式に来訪する旨書状を出しておけ。内容はそうだな……、避暑に友人と近くを訪れたから、ついでに顔を見に寄るとでも書いておけ」


「いよいよか! 腕が鳴るな」


シドはとても楽しそうだ。


「しかし、公はこの件に関して何も知らないのであろうか? 今回の事は知らぬにしても、今までライサンドが行ってきた所行を全く気付いて居ない筈はあるまい。その事に関して何の手立てもしておらぬならば酷い話だ。私の今までの計画は諸刃の剣となり消えゆくかもしれんな……どうしたものか……」


「今考えるのは止せ。全ては行ってからだ」


「そうだな」


全てはこれからだ。

ゼロは拳を強く握った。


夜明けと共にシドは配下の者にゼロの書状を持たせてバラサインのザンゾール公の屋敷と、エルの許にそれぞれを届けさせた。


仮眠を少し取り、地下支部に姿を現したミゲルは再び皆と合流した。


「そう言う事でザンゾール公の屋敷に行くのはゼロと私にそこの兄妹とエルの5人、それに従者として配下の者3人に就いてもらう」


今回ゼロ、シド、エルは王宮で既に名前も知れているから本名での滞在になるらしいが、その代わりローレライとルシオンはアシュド伯の子息、息女と分かると不味いので偽名を使う事となった。


「じゃあ、俺がシオンでレライはレライで良いでしょ。紛らわしくないし」


「駄目だ。調べられたら不味い。パーシーとサンドラだ」


「何故!?」


「喜べ。私には下に弟と妹が二人ずつ居る。パーシーは今22歳でサンドラは16だ。年も近いしそう言う事にしておけ」


姿は似ていないが、髪だけでも似せれば少しはとりつくろえると言われ、ローレライとルシオンは髪の毛をシドと同じ暗めの茶髪に染め上げた。


「いよいよか! 何だか楽しみだな」


ルシオンは本当に避暑にでも行く気なのか?

この陽気さはある意味良いカモフラージュになるかもしれないとシドは薄笑みを浮かべた。

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