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Fantasy with O3  作者: 砂海
12/18

もっと親しい呼び方をしよう!

「まだ、ラグエル卿の領地?」

「いや、もう過ぎました」

「フィノ卿の所だ」

「魔法使いの居る山の手前一帯が、フィノ卿の領地です」

 

 なるほど、ゴールは近いぞ!

 

「お嬢ちゃん、このフィノ卿ん所は結構でけぇからな、山裾までまだまだだぜ」

 

 あ…遠くなった。

 ただ今慣れた野宿の支度も終わり、現在楽しい食事中。

 

「今度こそ、何事もなければいいな」

 

 あー、言っちゃった。そんな事言ったら、絶対逆の現実がスキップして近寄ってきちゃう。そんな不幸な予感。きっと、また…ここでも何かあるんだろうなぁ…。

 

「んで、体は大丈夫かぁ?」

 

 首を横に振ると、体がギシギシ言った。全然ダメダメ。

 

「あのおっさんは、すっげぇ強ぇだろ?」

 

 初心者は、強さの上下を図れません。朝練についていくのがやっとだった。

 

「ローランさんとフレデリクさんは、ラグエル卿に剣を教わったんだよね?」

「はい」

 

 横で、フレデリクさんも頷いている。

 

「強いはずだぁ」

 

 体育会系の領地には、朝練があった。

 にこやかに笑うラグエル卿さんに引きづられ、あたしも参加するはめに。あれですか?昨日の仕返しですか?あたし、いい事したよね?悪い事してないよね?

 

「デュカス卿も、凄かったな」

「あれは、日々の鍛錬なくては出来ん」

 

 ラグエル卿のお弟子さん二人は、しみじみと頷いている。

 

「うんうん。リゼットさんと、やっているのを見た。カッコ良かった~」

 

 なぜか、デュカス卿も朝練に来ていた。でも、あれは自主的に来たんだと思う。だって、楽しそうだったもん。文官でも、もんのすごぉ~く体育会系な人だった。

 

「お嬢ちゃぁ~ん、俺はぁ~?」

 

 ファビオさんを見る。

 

「叔父様と言うに相応しい優雅な叔父様が、強いってあたりがカッコいいの」

「え~、俺だって、叔父様じゃん」

「叔父様は、じゃん言わない」

 

 目の前でぶーぶー言ってるあたりが、叔父様から激しく遠のく。

 

「まさか……デュカス卿の十年前あたりって……」

 

 縋るようにローランさんを見上げる。あたしの指は、震えながらもファビオさんを指しています。

 

「安心して下さい。デュカス卿は、昔と変わりません」

 

 安心した。ものすごぉく安心した。

 

「ただ…」

 

 あぁっ…なんか接続詞がっ!

 

「あの武勇伝は、デュカス卿だったな?」

 

 何それ?

 

「フレデリクさんっ!」

「何だ?」

「言わないでぇ~。ものすごぉく、お願いっ!あたしの夢を壊さないでぇ~~~」

 

 ファビオさんが、聞く気満々で、続きを待っている。でも、親切なフレデリクさんは、「分かった」と一言言って食事を続ける。ありがとう、あぁりぃがぁとぉ~。

 

「なぁ、お嬢ちゃん」

「ん?」

「そろそろ、ファビでいいんじゃねぇの?」

「ファビ…さん?」

「ついでに『さん』も取っちゃえ」

「あーーーー、それは無理。

 うん、ファビさんだね」

 

 横でフレデリクさんが、自分を指差している。

 

「ディックさん?」

 

 食べながら、頷いてくれた。そして、ローランさんが、期待するような瞳で見ている。えっとぉ…。

 

「あの~、ローランさんって、普段どう呼ばれているの?」

「ローラン」

「ローランだ」

 

 今まで聞いていたとおり。

 

「ローさんだと、変ですよねぇ」

「ラン、でどうだ?」

「ローランでいいだろ」

 

 あーなんか、寂しげだ。捨てられた子犬だ。

 

「あ、あの、ローランさんって、もっと長い名前があるんですよね?」

「……ローラン・フィノ」

「フィノ…ちゃん?」

 

 あー、あたしの意見は、ダメだったみたい。

 

「フィンは、どだ?」

 

 少し考えている?!

 

「可愛いすぎだ」

 

 フレ…じゃない、ディックさんが、ばっさり切っちゃった。

 確かに、フィって音が付く様な雰囲気の体をしていない。なんだろ?フィって、可愛らしい感じがする…から?

 

「サミ殿、呼び捨てで」

 

 ずいっと、顔が寄って来る。必死だよ。何で?

 

「えー、それは、最年少者として絶対ダメだと思うなー」

「言葉使いも、普段のままなのですから大丈夫です!」

 

 何が、大丈夫なのっ?!

 

「ローラン………さん」

「ダメです」

 

 一応ファビさんと、ディックさんに視線だけで助けを求める。即効、無理という表情が返ってきた。役立たず!

 

「分かりました……ローラン……で、いいですか?」

 

 心の中で『さん』を付ける。

 

「その間は?」

 

 うわっ、なんか鋭いヨ。何で?

 

「が、頑張ります…」

「えー、俺も、呼び捨てでいいのになー」

「やっ!」

 

 助けてくれなかったくせにっ!きっとあたしの目は、恨みがましい視線がバリバリ出ているヨ。

 

「さっさと食べろ。訓練時間がなくなる」

 

 さっきから、要所要所突込みを入れるだけで、黙々と食べていたディックさんは、もう片付け始めている。あたしは、慌ててお皿とスプーンを持って食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

「ディックさん」

 

 全部食べ終えて食器を片付けたあたしは、さっさと棒を振り回しているディックさんの背中を叩く。

 

「何だ?」

「ありがとうって気持ちとか、さようならとか、こんにちわとか、あたしの国だと、こんな風にお辞儀をするの」

 

 ディックさんに一礼。

 

「ここでは、どういう風にしたらいいの?」

 

 魔のラジオ体操をする前に、前からどうしていいか分からなかった事を、忘れる前に解消!

 

「左胸に右拳を当て、頭を下げる」

「こんな感じ?」

 

 ディックさんが、目の前でやってくれるのを真似てみる。

 

「お嬢ちゃん、腰曲げちゃぁダメだろ」

 

 お尻を叩かれた。

 その後、ファビさんがローランに殴られた。あたしのやる事は、それを眺めているだけ。まぁ、攻撃してもどうせ当たらないけどさ。

 

「これは?」

「いいだろ」

「どれぐらいの間、下げていたらいい?」

「気分だ」

 

 なるほど。

 

「お嬢ちゃぁん、何で俺に聞かねぇんだ?」

「そりゃぁ、ディックさんなら、ちゃんと教えてくれるもん」

「えーーー、俺だって手取り足取りちゃんと教えてやるぜぇ~」

 

 教えるのの前がいらん。

 

「サミ殿、私は?」

 

 あ~……、なんか恨めしい視線が…。

 

「えーーっと、なんか、すっごいの教えてくれそうだった……から、かなぁ?」

 

 笑って誤魔化せ日本人。

 

「お前の事だ、正装したナデージュがやりそうな事を教えるだろ?」

 

 ディックさんの言葉にあたしも頷く。あれは、ドレスじゃないと格好がつかない気がしますよ~。

 

「女性なのだから、あれが正解だろう?」

「この格好でか?」

 

 力強く頷かれても…ローランさん。

 

「えー、ラジオ体操しましょう。うん、しましょう!」

 

 無理やり話題転換だ!

 

「なぁ、お嬢ちゃん」

「はい?」

「ラジオタイソウって他にもねぇの」

「うん、第二、っ、な、無いからっ!!」

 

 口が滑った。チラリとファビさんを見ると、ニンマリと笑っている。

 話題転換失敗。もっと悪くなったヨ!

 

「もう一つあるんだな。教えやがれぇ~」

「絶対、嫌ぁぁぁぁっ!!

 さぁ~ラジオ体操だぁ~、ばんばんやるぞぉ~」

 

 後半台詞棒読みだけど気にしない。のびの運動をさっさと始める。

 なんつーか、君達は日本人か?と問いたい。何で曲も無いのに、同じ動きを始めるんだ?別に一緒にやらなくてもいいのに。ってか、一緒にやりたくないんだよぉぉぉ~~~。

 とにかく、ファビさんの方は見ない。一生懸命、体を動かす。

 絶対に、第二体操は教えない!最初のあれ。腕と足を曲げのばす運動を騎士様達がやってるのなんか、絶対、絶対、絶対見たくないよ!!

 

少々中途半端ですが、全部のせるのは長すぎるので、ここで切断!


ファンタジーでラジオ体操第二だけはやっちゃいけないよねぇ……まぁ、第一もやっちゃいけないけどさw

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