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お気に入りは支援、応援し隊

作者: マヤノ

 私はイケメンが好きだ。というか、自分が気に入った人物にとことん甘くできている。


 イケメンではなくても、その性格や行動などにときめくこともある。イケメンとは宝である。美形とは宝である。美人とは宝である。中身が素敵な人は宝である。男子も女子も関係なく、素晴らしい人は素晴らしい。


 私の中でイケメンと認定された方々に対する支援力は、自分でも少しは自慢できると思うのだ。気に入った子のためにも頑張っている。秀でた才がなくても、努力する子は愛でるべきだ!


 スポーツ系ならば、差し入れから怪我した時の対処。文系ならば、欲しがっているものを調べ、自分のできる範囲でお手伝い。図書館で目的の本が見つからず、困っている可愛い子には場所を教える。そのために、図書館の本の配置や内容は完璧である。


 勉強ができないお馬鹿可愛い子のために、私は先生となるべく勉強にも力を入れている。先生が何やってるんだ、こいつは……と軽く引いていたけど気にしない。


 勉強ができて、教えるのがうまいと有名になったおかげで、勉強関連はお任せとなった。周りも公認しているなんちゃって先生だ。


 もちろん、家事関連の手は抜かない。お母さんからいつでもお嫁に行けるわねと絶賛された。家庭科などで困ったことがあれば、頼ってくれていいのよ?


 とまあ、いろんなことをしている私は、イケメン好きなミーハーちゃんとして学校でいつの間にか地位を確立した。我が校に存在するファンクラブの統括である。


 私と相性が合わなくて、言うことを聞いてくれないファンクラブもあるが、あれはよろしくない。悪質な面を考慮すると、似非ファンクラブだ。まったく、応援したい相手の邪魔になるとはファンの風上にもおけない!


 もちろん、努力する子を支援するためにも行動している。できることには全力で気合いを入れて手伝う。支援は任せて! だから、自分のやりたいことに青春を捧げて頑張ってね!


「おーい、真部(まなべ)。転校生がお前のことを呼んでるぞ」


 クラスメイトに呼ばれた私は、最近のイケメン情報を知りたがる恋する乙女たちと楽しく語っていたけれど、仕方なしに中断する。


「ん? 特別クラスの転校生ちゃんが? おかしいな。確かに彼女のことはチェックしてたけど、まだ接点ないよ?」


「知らねーよ。とりあえず校舎裏だってさ」


「え、校舎裏とかなんかやだ。それにしても、なんでかな? 転校生ちゃんが最近、特別クラスの選ばれしイケメンと急接近しようと動いているのは知ってるけど!」


「怖いわ、お前」


「周囲の状況を集め、お気に入りの子たちのために活用する。この偉業に関する行動を怖いだと!? 失礼な!」


「怖いくらい情報持ちで恐ろしい。というか、なんで普通クラスにいるのに特別クラスを把握してるんだ!?」


「真部の情報は学校だけじゃなく、自分の周囲だろ。この地区は知り尽くしてる的な」


 なにそれ、そんなふうに思われていたんだ。初耳である。まあ、地区以外にも興味ある場所なら知ってるけどね!


 だって、旅行行きたい。素敵な旅行プランを作れる自信がある。私があまり把握していないところに行きたいと言われたら、徹底的に調べ尽くしてみせましょう!


「まみちゃん、半端ないもん。怖さを突き抜けて、尊敬してる」


「ありがとう。でもさ、気に入った人が相手じゃないとやる気が起きない。誰にでもよくあることでしょ? 別に尊敬するほどじゃないから」


 苦手な先生の前だと勉強に身が入らないのと同じだ。仲のいい子から勉強を教えられると、理解しやすかったり、一緒に勉強する時間が楽しくて効率が上がったりするのと変わらない。


 好きな子に応援されて、全国大会に旅立ったとか。友人のために、普段ならしない賭け試合で勝利をもたらし、相手をコテンパンにするとか。ゲームをもらうため、テストの点数を驚くほど上げたりとか。


 やる気を出せれる要素が絡めば、人間はけっこうやれるものだ。


 私の言葉に周りがざわめいた。理解できるが、別次元だとかぼそぼそ口にしている方がいる。


「私はやる気があればできる子なんだよ。普通だから、すごい人を支えたい。素晴らしい人を応援したい! 支援、応援し隊に入隊してもいいよ? 隊長は譲らないけどね」


「まみちゃんくらいの支援は無理。入隊とか不可能だよ」


「応援にそこまで力を込められるわけないだろ。俺は運動会に頑張るわ」


 普通だと主張したら、なぜか過去の行動を暴露され始めた。そんなこと公開しなくていいじゃない! 私は今、弓道を頑張っているんだ。そんな私の過去話に反応して、またあれが出るじゃないか。部活勧誘とか、あれこれが!


「真部ってさ、確かピアノとかコンクール優勝半端ないんだぜ」


 おじちゃん先生がいい人だったんだよ。全力で褒めてくれるんだもの。頭を撫でられるのが嬉しかった。


 幼稚園の時におじちゃんが亡くなっていたからね。憧れてたんだ、祖父と孫の関係に……ほのぼのしたよ。癒しだったおじちゃん先生。懐かしい。


 おじちゃん先生はもう歳だからって途中で辞めたけどね。だから、私もピアノを辞めた。止める声なんて、知らない。やだよ、スパルタ先生とか。一人で勝手に頑張ってください。


「こいつよくはしゃぎ回るくせに、茶道、華道いろいろお任せできるんだ」


 和服に萌えたんだ。それ以外にも華道の美女な先生にうっとりしました。あの立ち居振舞いは、女子として憧れる。


 茶道はちょっと厳しめな先生だったけど、和菓子が好きで幸せそうに食べている姿が可愛かったんだ! お茶と和菓子、そこに先生を足せば最強。


「お前、なんなの。基本的に残念なのに、ほんとなんなの。無駄なスペックだらけじゃん」


「無駄とか言うな! 褒められたり、癒されたり何かあれば頑張れる。それが私」


 きりっとした表情で告げれば、普通の意味が違うと全力でつっこまれた。


「まあ、いいや。転校生ちゃんが呼んでるんだよね? 一体、なんだろう……」


「行く前に聞きたいんだが、苦手なものとかできないことってあるのか?」


「私は人間だからもちろんあるよ! まあ、教えないけどね。普通に見てたらわかるでしょ」


 じゃ、いってきます。


 手を上げて、教室をさっさと退出した。基本的に自分が残念だと知っている。


 やる気が起きないと、できたことができなくなる。苦手なもの関連など、とことんできない。情けないくらいできない。わざとなの? バカなの? と言われるくらいできない。


 どんなにお気に入りの子に応援されても無理なものは無理だ。あまりのできなさ加減にべっこりへこんで、隅っこで丸くなるという行動にでるくらいだ。キノコが生えそうだ思った、と感想をもらった。


 校舎裏につくと、まさに乙女ゲームといえるくらい整った女子がいた。転校生ちゃんではなく、ヒロインちゃんと呼ぶべきかもしれない。


「私のこと、呼んだ? どうしたの? 学校の面白い噂とか知りた――」


「あなたね! あなたが彼らをたぶらかしてるんでしょ!」


 な、何事? たぶらかす? 支援、応援し隊の隊長である私にはそんなことをしている暇はない。残念ながら、この隊に所属しているのはまだ私一人だけである。


「えーと、さっぱりだけど転校生ちゃんの言う彼らの情報が欲しい感じ? 恋する乙女なら応援するけど、恋に落ちるの早いね。ついでに一人に絞るべきだよ」


 まだ学校に転校生ちゃんが来てからそんなに経っていないはず。一目惚れ?


 それにしても、彼らが何人かわからないけれど惚れやすい子だな。難易度が低すぎてどうしようもない勢いの惚れやすさ。


「せっかく、トリップしたのに……攻略できない理由を探したら、あなたのせいだってわかったのよ!」


「……はあ、すみません?」


 首を傾げて、どれだけ考えてもわからない。転校生ちゃんは日本語を喋っているのに、私には理解できない。


「トリップじゃなくて、転生にしてたらよかった。まさか先にここに来てる敵がいるなんて」


 ぶつぶつ言い始めた転校生ちゃん。


 うーん、転校のことだろうか。私は転校して来たんじゃなくて、春からしっかり入学した生徒だ。私より先にこの学校に通うなんて、無理じゃないのかな。


「私、諦めないから! 彼らの目を覚ますんだから! 特殊能力持ちの彼らを騙すなんて、セコい真似をするあなたには負けないから」


 特殊能力? よくわからないんだけど、私の知り合いにそんな人物いたかな。さっぱりわからない。


 というか、特殊能力ってなに? 漫画とか小説が好きなんだろうか。いくら好きでも現実と混ぜる考えはよくないな。


「かなり誤解してるよ。それ、本当に私のせい? 身に覚えないし、間違ってない? 特殊能力とか意味わからない。まあ、諦めずに頑張ってとしか言えないけど」


「余裕ってこと? 今に見てなさい! この乙ゲーは私のためにあるのよ!」


 走り去る転校生ちゃんの姿を私はぽかんと見つめた。


 誰か、翻訳する人を呼んで欲しかった。いくらいい見た目をしていようと、電波ちゃんを応援したい気持ちは一ミリもない。


「なんだったの、あれ……まあ、いいや。私には関係ないことだろうし」


 まったく、無駄な時間を過ごした。昼休みが短くなってしまう。転校生ちゃんの相手をせず、他のことに時間を使えばよかった。

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