なれそめ。
・・・なぜだろう。
なぜ私は今、走ってるのだろう。
あと半分・・・15周・・・
ああ・・・早く家帰りたい・・・
私は伊藤麻奈。怠け者の中学1年。
友達だってある程度いるし、それなりに幸せ、ごく普通の中学生・・・だった。
ついこないだまでは・・・
あれは、ちょうど4月の終り頃だったろうか。
体育の授業で長距離のタイムをはかった時だ。
運動嫌いで怠け者の私は、長距離なんてもってのほか。
さっさと終わらせたくて仕方なかった。
「1000m!?うわぁ、トラック5週だよ・・・かったるー」
友達と話しながら、スタートの位置に並ぶ。
「よーい、スタートっ!」
・・・きっと、あの瞬間から私の人生の歯車は狂ったのだろう。
かったるかった長距離のタイムはまずまず。中の上といったところだろうか。
運動嫌い&運動オンチである私にとっては感心するような成績だったが、まぁ平凡といったところだろう。
そう平凡だった。なのに。
授業後教室へ帰る途中。たまたま私達の授業の様子を見ていた先生が、私に「ちょっといいかな?」と話しかけてきた。
「はぁ・・・」何の先生だっけ?そんな疑問を感じつつ、話は進んだ。
「キミ、部活まだ決まってないよねぇ?陸上部で駅伝やらない?」
・・・はぁ?
唖然としてしまった。自慢じゃないが、私は体育の通知表で1を取ったことがある。
それも一度じゃない。4年まではいつも1だった。
それに、大してすごい記録でもなかったはずだ。
もちろん断ろうと思った。「いえ、私は・・・」言いかけた瞬間。
「お前、才能あるよ。」
・・・ああ哀れな自分。
こんな一言で・・・こんな嘘みたいな一言で・・・
まるで騙されたかのように・・・ 入部してしまった。
あと5週・・・
ああ・・・早く家に帰りたい・・・