第24話 幼き令嬢と王都服飾革命
王都のタウンハウスでのレストラン開店が大成功を収め、マリアンヌ・フォン・ルーベルの名声は王都中に知れ渡っていた。厨房の片隅で一息つきながら、ふと彼女は気付く。
「そういえば、この世界、服はみんなプリンセスドレスばかり……動きやすい服が全然ないわね」
厨房や商会の業務を続ける中で、従業員や領民が不便そうにしている姿を何度も見ていた。食材を運ぶ、調理する、接客する――すべての動作に支障が出ているのだ。
「科学と知識で解決できるわ……もっと便利で、美しく、着やすい服を作ろう」
マリアンヌはすぐにアイデアをノートに書き込む。布地の伸縮性や縫製方法を工夫するだけでなく、着脱を簡単にする新しい仕組みを導入することを考えた。そこで思いついたのが「ファスナー」だ。
「ボタンや紐で時間をかける必要はない。簡単に着脱できて、見た目も崩れない構造……これなら貴族も日常生活や外出で快適に過ごせる」
早速、試作に取りかかる。布地と歯車状の小型金具を組み合わせ、着脱が簡単で耐久性のある構造を作り上げた。試作段階で領地の技術者や縫製職人に送り、セバスチャン経由で改良点をフィードバックしてもらう。
「これで完成すれば、動きやすさと美しさを両立できる服ができるわ」
完成した試作品を王家に献上することに決めた。王妃に直接試着してもらうことで、広報効果も狙える。王妃は試着室で試作品を身にまとい、鏡の前で歩いたり腕を上げたりして動きやすさを確認する。
「これは素晴らしいわ……美しいだけでなく、動きやすい。まさに実用的な高貴さね」
王妃は気に入り、公式行事や舞踏会で着用することを約束した。これにより、マリアンヌの服飾デザインは王都中で注目され、自然と広告塔としての効果を生むことになる。
さらにマリアンヌは、このファスナーの構造を 特許として申請 することを決めた。前世の知識を応用し、文書化された図面と構造説明を準備。王家の後ろ盾があるため、王都の特許局で迅速に審査され、正式に登録される。これにより、彼女のデザインと技術は法的にも保護され、競合が模倣することはできない。
「科学と知識、工夫、王家の後ろ盾――これで服飾革命はさらに加速するわ」
マリアンヌはさらに季節ごとのデザイン、職業別機能服、冒険用衣装まで構想を練り、領地での生産はセバスチャンに任せる。布地の選定、染色、裁縫工程の効率化も指示し、王都の展示場や商会で体験型販売ができるように計画する。
夜、タウンハウスの窓から王都の灯りを眺めながら、マリアンヌは日誌を開く。
•王妃への献上と反応
•ファスナー付きドレスの試作と改良点
•特許申請手続きと登録完了
•展示会および商会での販売戦略
•レストラン事業との連携、全国展開の計画
「美食も文化も服飾も……私が手をかければ、この世界はどんどん変わる」
拳を握りしめ、決意を新たにするマリアンヌ。幼き令嬢の挑戦は、王都でさらに新たな章を切り開く。美食に続く、王都服飾革命は、王妃を広告塔として全国に波及していく――そしてファスナーの特許が、その勢いをさらに加速させるのだった。




