表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理系令嬢、没落公爵家を科学で救う  作者: 此花サギリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/21

第12話 幼き令嬢の威光と勝利

初夏の光が城下町を優しく照らす朝。七歳の私、マリアンヌ・フォン・ルーベルは、商会の店の扉を開けると、今日も領民たちが整然と作業を進めている光景に目を細めた。発酵食品、石鹸、基礎化粧品はすでに棚に並び、店内は活気に満ちている。


「今日も大口注文がある……しかも、貴族令嬢の妨害も予想される」


胸の奥に少し緊張が走る。しかし、幼い私の心は冷静だった。領民たちの協力で商会は安定しており、何よりも腐っても筆頭公爵家の令嬢という地位がある。前世の知識と幼少期から積み上げた戦略、そしてこの権威を使えば、ライバルの令嬢も容易には手を出せない。


午前十時、商会の店に最初の客が訪れる。常連の主婦や城下町の商人、そして貴族の侍女たちだ。客が入るたび、私は領民たちに指示を出す。


「カットした野菜はすぐ瓶詰めに。石鹸と基礎化粧品は手に取りやすい位置に置くこと」

「はい、マリアンヌ様!」


領民たちは手際よく作業を進め、店内の秩序を保つ。小さな私の指示一つで、全員が動く――この光景は、商会の成長と団結を象徴していた。


そのとき、例のライバル令嬢が、豪華な装いで店に現れた。今日は侍女を従え、さらに策略を練っているらしい。香水や花粉を使い、店内の香りを乱すつもりだろう。


「ふふ、また会ったわね、マリアンヌ。商会の繁盛ぶりには感心するわ……でも、私が手を出せばどうなるか、覚悟はある?」


私は深呼吸し、冷静に答える。


「家族と領民を守るためにやっているの。悪いことはしていません」


令嬢は軽く鼻を鳴らし、棚に手を伸ばす。しかし、私はすでに策略を用意していた。香りの強い商品は奥に、見本として香りや触感を試せる商品は手前に置き、客の注意を自然に引きつける。さらに、領民たちは一斉に接客と説明を開始する。


「この石鹸はオリーブオイルとシアバターを独自配合しています。基礎化粧品は天然成分のみで作られ、肌に優しい設計です」

「発酵食品は保存期間が長く、味も安定しています」


客たちは説明に耳を傾け、手に取った商品に興味を示す。香水の妨害にも惑わされず、購入する者が次々と現れた。


令嬢の表情が次第にこわばる。自分の策略が通じないことに苛立ち、店内で怒声をあげようとする瞬間、私は軽く声を出した。


「今日は貴族の方々にも安心してお買い物いただけるよう、店内での行動にはご協力ください」


小さな声ながらも、領民と使用人たちが私の背後で整然と立つと、その光景はまるで城の公爵家の権威を示す護衛のようだ。腐っても筆頭公爵家の令嬢――その威光は、七歳の小さな体からでも伝わる。


令嬢は眉をひそめ、侍女を従えて少し後ずさるしかなかった。客たちの信頼は完全にこちらに傾き、妨害は無力化された。


「……負けたわね」


小さな声で呟いた令嬢に、私は微笑みながら答える。


「商会は家族と領民のためにやっているの。邪魔する理由はないでしょ?」


その後も販売は順調に進む。領民たちは商品の補充や説明、清掃までこなし、私の指示に従って動く。大量注文も滞りなく処理され、店内は活気と達成感で満ちていた。


午後の反省会では、領民たちが疲れた表情ながらも笑顔を見せる。


「今日は本当にありがとう。みんなのおかげで商会は大きく成長したよ」

「私たちも楽しかったわ! また手伝いたい」


私は胸の中で静かに誓う。領民とともに築いた商会は、私の力だけでなく、仲間の力で繁栄するのだと。腐っても筆頭公爵家の令嬢の権威に頼るだけではなく、知識、工夫、そして信頼で勝利を掴む――これこそが、幼き私の戦略だ。


夜、城に戻ると母が微笑みながら迎えてくれる。


「今日も大変だったでしょう……ライバル令嬢の妨害もあったみたいね」

「うん、でも領民と使用人たちが協力してくれたから、全部乗り越えられた」


ノートには今日の記録を丁寧にまとめる。

•商会の売上と大量注文の対応

•発酵食品、石鹸、基礎化粧品の製造状況

•貴族令嬢の妨害とその対策

•領民たちの協力体制と分業の成果

•店内での客の反応と購買動向


すべてが、未来の大きな成功につながる小さな勝利だ。幼少期の挑戦が、家族と領民を守り、悪役令嬢としての運命を変える基盤となる。


「知識と工夫、仲間の力、そして家の威光――三つ揃えば、運命は変えられる」


幼い私の拳は小さく握られ、決意はさらに固くなる。家族と領民を守り、未来を自分の手で切り開く――幼きマリアンヌの挑戦は、ライバル令嬢を蹴散らす勝利で、商会をさらに発展させたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ