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理系令嬢、没落公爵家を科学で救う  作者: 此花サギリ


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第1話 悪役令嬢、幼少期の奮闘

私は、筆頭公爵家の一人娘、マリアンヌ・フォン・ルーベル。

だが、この家は――表向きの華やかさとは裏腹に、財政は崖っぷちだった。


「……えっと、どうして私、お金がないの?」


七歳になったばかりの私は、書斎で母の家計簿を見つめて眉をひそめる。前世では大学で化学や物理を学んでいた理系オタク。歩く辞典と言われるほど知識を詰め込んできた私にとって、この数字の羅列は無意味ではない――むしろパズルのようで面白い。


けれど、そこに書かれた数字は、ただただ恐ろしい現実を示していた。


収入はほとんどなく、支出は膨大。使用人の給料、庭の手入れ、城の修繕……。これでは、華やかな貴族生活は幻想に過ぎない。


「そうか……そういうことか」


私は幼いながらも、眉間にしわを寄せて考える。前世の知識を使えば、少しはこの状況を改善できるかもしれない。保存食、発酵食品、効率的な調理法――知識はたくさんある。


「まずは、家の中から工夫しよう」


私の最初のターゲットは、食料の無駄だった。母や使用人は優雅に暮らしているが、食材は捨てられることが多い。前世の化学知識で腐敗の原因を理解し、保存方法を改良すれば、家計は少しは助かるはずだ。


「よし、実験してみよう」


私は自室の小さな机で、野菜や果物を使った簡単な発酵実験を始めた。乳酸発酵、塩分濃度、温度管理――すべてを頭の中で計算しながら、瓶に詰める。七歳の小さな手にしては大きな冒険だったが、科学的思考は年齢を超えていた。


数日後、ほんの少し酸味のある漬物ができあがる。香りは少し強いが、味は悪くない。私は嬉しくて、母に見せた。


「マ、マリアンヌ……これ、自分で作ったの?」

「うん! これで、捨てる野菜を減らせるでしょ!」


母は驚きと少しの困惑を混ぜた表情で頷いた。

「……ありがとう。でも、無理はしないでね」


私は小さくうなずく。無理はしない。けれど、諦めもしない。幼い私の目には、この城を、家族を救う未来が見えていた。


次に取り組んだのは、家の効率化だった。暖炉や水道、家中の電灯(?)はないが、光や熱の管理はできる。前世の物理知識で、簡単な仕組みを考え、使い勝手の良い配置に変える。小さな子供ながらに、家の隅々を観察し、改善点をノートに書き留める。


使用人たちは最初、私の行動を不思議そうに見ていた。七歳の子供があれこれ指示を出すのだから当然だ。しかし、次第に彼らは私の計算と工夫に感心し、協力してくれるようになる。


「マリアンヌ様、これは……便利ですね」

「でしょ? 少しずつ、無駄を減らすの」


私は笑顔を返す。悪役令嬢だからと言って、ただ華やかに振る舞うだけではない。知識を使って、現実を切り開く――それが、幼い私の生き方の第一歩だった。


そして、ある日の午後。窓の外を眺めながら、ふと思う。


「ヒロイン……が、この世界に来るのよね?」


ゲームでは、私が主人公の恋路を邪魔する悪役令嬢として描かれる。だが、私は知っている。運命は書き換えられる。前世の知識があれば、未来は自分で作れるのだ。


「まだ小さいけれど……負けない」


小さな拳を握り、私は心の中で決意する。

この城を、家族を、そして自分の未来を守る――そのためなら、どんな困難でも乗り越えてみせる。


幼少期の小さな実験、家庭内の工夫、そして観察眼――すべてが、後の大きな戦略の基礎になる。悪役令嬢と呼ばれても、私には科学という武器がある。


夜、ろうそくの明かりの下でノートに計算式を書く。今日できたこと、改善点、次に試すこと。すべてを記録しておくのだ。


「没落令嬢? そんな言葉、私には関係ないわ」


幼い私の目には、希望があふれていた。前世知識と行動力で、必ず家を救う――未来のマリアンヌは、そう決意したのだった。



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