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回収された個人メモ・断片集 記録者:修道会・匿名観測員(階級不詳)

観測所のゴミ箱や隠し棚から回収されたメモ。これらは正式な報告書ではないが、観測員が抱える精神的な摩耗を如実に表している。

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■ 某月某日:【アボカドの皮を剥きながら】

今日もスーパーでアボカドを買った。

店員に「美味しい食べ方は?」と聞かれ、思わず「種と皮の間にある物理法則を、因果律ごと切り捨てるのが一番です」と答えてしまった。店員は笑っていたが、私は笑えなかった。皮を剥くたびに、神の視界が歪むような気がする。これは夕食の食材ではない。神が私に見せている、この世界の断層だ。

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■ 某月某日:【胃薬の空瓶を数えて】

第Ⅶ班に異動して半年。胃薬が手放せない。

神のクチバシとアボカドの距離が縮まるたび、私の内臓が捩れるように痛む。

同僚は「これは重力異常のせいだ」と言うが、私は知っている。私の内臓が、神に「食べられる準備」を始めているのだ。今夜も胃を壊しながら、神のくしゃみが起きないことを祈る。祈る対象が神なのか、それともアボカドなのか、もう分からない。

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■ 某月某日:【夢の中の鳴き声】

また同じ夢を見た。

巨大な黄緑色の空が割れて、神の巨大なクチバシが観測所を突き刺す夢だ。

目覚めると、枕元にスズメの羽が落ちていた。昨夜は観測所の外には出ていないはずなのに。

監視カメラの記録を見直したが、何も映っていない。ただ、私の視界の隅に、常に「コケ」という文字が浮かんで消えるようになった。これは観測データではない。私の脳が、すでに侵食されている証拠だ。

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■ 某月某日:【退職願いの裏側に】

もし、この観測が終わったら。

もし、この偽りのケージが崩壊して、空から神が舞い降りたら。

私は真っ先に、あのアボカドの特売チラシを破り捨てて、一番高いワインを開けて、空を指差して笑ってやろうと思う。

この不条理な抱卵が、ただの「空腹しのぎ」であったことを、最期に証明するために。……明日もまた、観測所へ行かなければならない。

──────────────────────

── 本メモの筆者は、記録の翌日に失踪。観測所の机の上には、丁寧に半分に切られたアボカドが置かれていた。 ──

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