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第1話

「やっと引越し終わったー!」


教室ほどの広いスペースを家賃一万で借りられるのでとてもお得な買い物をした。ただ問題があるとすれば、ここは地下二階なので日差しがないことと、一階フロア付近に半グレ集団みたいなのがよくたむろしてることだ。まぁ、俺は金がないからそこは目を瞑らないといけないんだけど。


ぴょんぴょん!と俺の愛犬、ピョンが俺に向かってジャンプしてくる。


「ピョン!散歩行きたいのか?よしよし!」


リードを繋いで外に出ると、外はもう夜だった。荷解きしただけで、もうこんな時間か。日光がないと時間感覚狂うなぁ。自宅マンションの近所をピョンと歩き回って、家まで帰るとまた半グレ集団が一階エントランスにたむろしていた。


「お姉さん、こんな夜遅くにお散歩?危ないよ」


なんて声を無視して、ピョンを抱き抱えて、エレベーターを待っていると、


「ねぇ、お姉さん聞いてる?」


と半グレ三人衆に後ろにつかれた。


「ねぇねぇ、俺らと遊んでくれない?」


「いえ、遠慮します」


「お姉さん、見ない顔だね。最近ここに越して来たの?」


「一昨日」


「ここに来る奴はみんな訳ありだからねー。お姉さん、気をつけてよ?」


「ご忠告、ありがとうございます」


とエレベーターに入ると、その半グレ三人衆も同じエレベーターに入ってきた。小さいエレベーターだから四人でぎゅうぎゅうだ。


「お姉さん、何階?」


「地下二階。あの、そんなに押さないで下さい。犬が潰れます」


ピョンが凄い嫌がってる。煙草臭い身体を押し付けられて。


「ごめんごめん!ここのエレベーター狭くって」


地下二階に着いた。エレベーターから降りると、廊下で発狂している人がいた。


「あぁ、今日は何だ?コカインか??」


とその半グレ三人衆は笑ってる。俺のお隣さんってこれなの……?と絶望した。地下二階には部屋は三つしかない。俺は真ん中の部屋を使っているので、どう考えてもお隣さんだった。


「な?俺らがついてきて良かったでしょ?」


と半グレ野郎にしたり顔を見せられた。


「部屋まで送って下さりありがとうございます。もう大丈夫なのでお引き取り下さい」


と怒気を込めて淡々と言うと、その半グレ三人衆は俺を嘲笑った。


「お姉さん、お礼ってのは身体で示すものだよ」


と俺が半分だけ開けていたドアを無理やりこじ開けて部屋の中に入ってきた。俺は咄嗟に包丁を手に取り、半グレ三人衆へと順々に向けた。


「大丈夫だって、気持ち良くするからさあ」


とその三人衆は俺に銃口を向けた。俺は包丁では銃には勝てないと瞬時にわかって、包丁を床へと置いて、両手を上にあげた。


「良い子だね」


とその男は包丁を蹴り飛ばすと、俺にじわじわと距離を詰める。


「嫌だ!誰か助けて!!」


「おっと、これ以上騒ぐと撃っちゃうよ?」


パッと口を手で塞がれた。その男の子分のような二人が俺にずっと銃口を向けている。


「んんっ、わかったからぁ……」


と俺は自分でパンツを下ろして、男の方にお尻を向けた。


「わぁ、めっちゃ可愛い!俺、素直な子好きよ?」


「俺はお前のことが嫌いだ」


男が俺の穴へと自分のを挿れる。が、小さすぎて全然、感じなかった。


「強がってんのも可愛い!俺ら付き合っちゃおうか」


「誰がお前なんかと……」


「俺ので感じてるくせに、生意気だね〜!」


感じてねぇよバーカ。気持ち悪くて吐きそうだ。


ワンワン!とピョンが泣く声が聞こえる。


「うるせぇなあの犬、撃ち殺せ」


と男が命令すると一人の子分がピョンを捕まえに行った。


「ダメ!!ピョンだけはダメ……!!」


俺が毒親に殴られて、家出した時、ピョンも一人で草むらで小さい身体を震わせていた。俺が撫でてやると、弱々しくぺろぺろと俺の指を舐めてくれた。俺が生きていこうと思えたのは、ピョンがいたからだった。だから、お願い。ピョンを殺さないでくれ。


「おい、騒ぐとお前も殺すぞ」


と言われても、俺はピョンを失うなら死んでもどうでもよかった。


「お願い、何でもする!だから、ピョンだけは殺さないで!」


うわっ、うわああ!!とピョンを殺しに行った子分の叫び声が聞こえた。


「あっ、ここ。こんな可愛い子ちゃんが越してきたんだぁ♡」


とドアに寄りかかりながら、気絶した子分の一人を床へと捨てた。


「お前は、(ワン) 姄罠(ミンミン)……!!」


誰!??ここの界隈の有名人らしいけど。もう一人の子分がそのワンミンミンに銃口を向けているが、手の震えが酷い。


「その子、僕にちょーだい♡」


そいつがふざけたようにそう言うと、俺を抱いてた男はすぐさま俺を抱くのをやめて、俺をそのワンミンミンに向かって投げるように突き飛ばした。


「ありがとね!」


とそのワンミンミンは俺を自分の懐に入れて抱くと、さっきまで俺を抱いてた男に回し蹴りをした。


「ぴぇっ!??」


思わず変な声が出た。そして、その子分が俺らに向けて銃を撃ちまくってるけど、かすりもせずにまたワンミンミンは素早くかかと落としをして、そいつを気絶させた。


「やっぱ感謝は身体で示さないとね〜!」


半グレ三人衆を片付けた彼は、俺を抱きしめるとシャワーブースまで連れて行ってくれた。


「気持ち悪かっただろ。身体、綺麗にしな」


「別に、慣れている……」


と気を遣われるのには慣れてない俺は微妙な反応をして、シャワーブースへと引きこもった。何なんだあいつ。ちょっぴりヒーローみたいでかっこいいって思っちゃった。


シャワーブースから出ると、ワンミンミンが半グレ三人衆を床に土下座させていた。


「今日からあいつは僕のものだから、誰だろうと手出したら殺すから。あの若頭にも伝えといて」


「はい、承知致しました。この度はご無礼を働いてどうもすみませんでした!!」


「お前、ケジメの付け方わかってるよなぁ?」


とワンミンミンが俺を抱いた男にナイフを渡している。


「はい!小指詰めさせて頂きます!!」


「ちょっ、ちょっ、ちょっと!!待って!!やめて???」


俺は慌てて彼らを止めた。みんな何で?みたいな顔してる。


「ここ、俺の家!見たくないからそーゆーの!」


「でも……」


ワンミンミンがちょっぴり落ち込んだような顔をした。


「お前が俺のことを助けてくれたのはありがたいと思ってる。でも俺、もう別に怒ってないし、ケジメとかそーゆーのいらないから」


「じゃあ、せめて俺らに護衛させて下さい!!」


と半グレ三人衆に土下座された。


「は?お前らなんか信用ならねぇ!僕がこの可愛い子ちゃんを守るからいい」


ワンミンミンは気に食わないように俺の腰を抱いた。何で俺はこいつにこんなにも気に入られてしまったんだ……!!


僕が絶賛、指名手配犯の僕が教える、殺し屋の殺し講座の予行練習をぬいぐるみに向かって行っていると、白黒のボストンテリアが僕に向かって飛びついてきた。


「可愛い〜♡何この子!お前、何処から来たの?」


と頭を撫でてやると、その子はこっち来て!というようにワン!と吠えてから僕を誘導した。すると、その犬を殺そうとしている輩に出会ったので、すぐさま返り討ちにした。僕は動物を殺す奴は嫌いだからだ。そして、隣の部屋を開けて!と犬がドアをカリカリしている。その部屋は不用心にもドアの鍵がかかっておらず、その中からは誰かの嫌がっている声が聞こえてきた。そして、僕は目にしてしまった。長い艶々した金髪ロングウルフヘアで長い睫毛に潤んだ瞳、流し目が色っぽいその子に出会ってしまった。心臓をグッと掴まれた感覚がした。その一瞬で、僕はこの子と結婚すると決めた。めちゃくちゃな一目惚れだった。



「ミンミン、お願いだから帰ってくれ」


半グレ三人衆を帰らせた後、「やっと二人きりになれたね♡」なんてワンミンミンから迫られた。


「嫌だよ。君を守らせて♡」


「守って欲しいなんて頼んでない!」


「助けて欲しいって顔してたよ」


今日あった最悪な出来事がまたフラッシュバックする。


「それは……とにかく、今日はありがとう。今すぐ帰れ!」


誰かに優しくされるのも慣れてなくて、こいつといると調子が狂う。


「わかったわかった。せめて、君の名前だけ教えて?」


(ロン) 游昊(ユーハオ)


とぶっきらぼうに言うと、


「ユーハオ、またね!」


って出ていったと思いきや、


「あっ、ここ鍵閉めるの忘れないでね!」


とまた扉を開けて、伝えてきた。


「はいはい、わかったから」


鍵を閉めてから、ため息がでた。相変わらず、何処へ行っても俺は生きにくい。ベッドに寝っ転がった俺の顔をピョンはぺろぺろ舐めてくれた。


「お前だけだよ。俺の生きる希望は」


そうピョンを布団の中に入れて、その日は眠りに落ちた。

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