よくある学園の風景をご紹介いたします~食堂にて~
こんにちは、月乃まつりです!
よろしくお願いいたします!
「あぁ~ら、ごめんなさいね、手が滑りましたわぁ~?」
出た。
ご丁寧に今日もスープがこぼれますよとお知らせしてくれたので、座っていた椅子からさっと降りてほかの席に座る。
そんなことをしたら、当然だけど貴女も火傷するわよ。
と心の中でつぶやきながら。
案の定。
「あ゛!?あっつ!?あっちゃぁ!!!!??」
こぼれたスープは椅子と床を経由してびちゃびちゃと跳ね、いつもクラスメイトに攻撃的な態度をとるフーアに襲い掛かった。
「あなた!!フィオナっ!またわたくしに怪我をさせましたわね!?」
髪を振り乱して半狂乱になるフーアは、お世辞にも可愛いとは思えない。
「自損事故、という言葉をご存じで?」
わたしが淡々とそれだけ返すと、フーアの顔は真っ赤なペンキを被ったのかと思うくらい真っ赤に染めあがった。
そこは怒るとこじゃない、と指摘したくなる。
貴女がスープをわたしにかけようとしたのがそもそもの原因でしょうが。
「じ、じじじ、自損事故じゃなくてよ!?あなたがよけるのが悪いのですわ!!」
必死に理想のお嬢様像である『お嬢様言葉』を保とうとしているのが見なくてもわかる。多分、フーアはこう言いそうになったのだろう。『自損事故じゃねーわ!!あんたがよけるのが悪いんだろうが!!』と。
お嬢様とはとても思えない言葉遣いである。
はあ、とため息をつく。
今ならわたしに勝利できると思ったのかなんなのか。フーアはふんっと顔をそらせた。
迫力も何もない、ただ上からの視線。
そもそもでフーアは、わたしに勝てたことがない。
フーアは、136回戦中0勝136敗という記録的な数字を叩き出している。
しかもそれを日々更新中なのである。
それでもまだ懲りない、諦めない。
その忍耐強さだけは認めてもいいかもしれない。
「あ、あなたなんてっ!!あなたなんて!!冷たい氷のような目で人を見下ろして!!れ、冷血漢ですわ!!」
わたしは冷血漢じゃない。
言うならクールビューティと言ってくれ。
心の中で、声を大にして文句を言うフィオナであった。
だがそんな心のつぶやきはフーアには聞こえるはずもなく。
「ふん!!!」
と思い切り声に出してわたしを嘲笑うような仕草をする。
よくそんな声出せるな。
「ふん!!!」って発音するの、力いるんじゃなかったんだっけ。
心の中で思い切りぼやく。
「わたくしは用事がありますので、これで」
これは早々に話を切り上げたほうがよさそうだ。
と思ったのでさっさとその場を去る。
後ろでぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるフーアを振り返りもせずフィオナは歩を早めるのであった。
ーー何者かが彼女を監視しているのにも気づかずに。
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それではまたお会いしましょう!