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出会い

ぴよー!ぴよー!

えぇ、もう朝…?

鳥から呼ばれてベッドの中で目を擦り、暫しボーッとする。スマホを見ると、午前9時の表示が目に入ってきた。いつも仕事開始は9時、その10分前には鳥を籠から出して部屋でのんびりするのが日課のため、焦れてわたしを呼んでるに違いない。

ぴよー!ぴよー!

はーい!ちょっと待って~

居間に行き鳥籠の扉を3羽分開けて、寝室に戻った。背後から、鳥が飛び立った音が聞こえる。もちゃんが冷蔵庫の上に飛んでったのかな。

ベッドに戻り、未だ電波が来ないスマホを取り出して機内モードをOFFにしようとしたけど、機内モードにはなってなかったみたい。おかしいな。なんでだろ。

居間に行ってwifiの光を確認したら消えてる?んー、夜のうちに電源が抜けちゃったのかな?電源を指したけど光は戻ってこない。え?なんで??居間の電気を点けようとしてみたら…、つかない!えー?停電??この辺全部停電してるのかな、春セールで半額だった内側がもふもふの冬仕様のクロックスを履いて、外に出てみた。

ん?え?あれ???

見覚えのある空き地、少し離れたお隣さんのおうちはそこになく、赤錆色や深い紫色、藍色の見たことのない草たちが一面に広がり、ところどころ、葉っぱが赤い光を反射してほんのり光っていた。薄青く光るきのこも見えた。深い紫色の空に、地平線の近くは暗い赤色をしていた。太陽は白ではなく、赤だった。5月だというのに、山の上のような、少し肌寒く、湿った冷たい空気が鼻の中を通っていった。

…………

え!?えー!!!!

足元を見ると、慣れ親しんだ家の回りの茶色い土が切り取られたようになっていて、少しボロボロ崩れていた。それが、不自然に暗紫色の地面と繋がっている。

もしかして、謎の星にワープしてきた??うちだけ??

てか昨日うたさんが驚いてたのはこのせいだったんだな…

てかそうだとしたら、今電気も水もトイレも使えないからめちゃくちゃやばい。とりあえずトイレ作らないとやばいことになってしまう!!

幸い無事だった家の庭の物置小屋に、スコップを取りに行く。歩いて5分くらいのところに穴でも掘っておくか。昔行った科学館でバイオトイレの作り方解説した展示あったけどなんだったっけ、木くずに生息する好気性微生物がいいとかなんとか…、とりあえず穴掘って、木くずか枯れ草か無かったらその辺の草入れとけばなんとかなるか…?空気の循環良くする方法ってなんかあるのか??

逡巡しつつちょっと歩き、ちょっと湿った黒紫色の地面を見つけてスコップを地面に刺そうとしたその時、白銀色の物体が、スコップの先に現れた。その物体は球体で現れたあと、丸い体を平たくして土の上に広がってスコップを刺せないようにしてきた。そしてチカチカと白い光を出してきた。

どういうことだろう。掘っちゃダメなのかな?

静かにその場を離れて、今度は乾いた土を掘ろうとしてみる。物体は平たい形から球体に変わり、プカプカ浮いてついてきた。どうやらここは掘ってもいいらしい。かかとから膝までくらいの深さまで掘れたところで、適当に近くにあった灰紫色の枯れ葉を取ってきて、穴の底に敷いてみた。

壁がないと恥ずかしいな、何か壁になるようなものがないか、辺りを見回してみる。

少し離れた場所に、赤紫色の布?みたいな植物?木?が地面の上に平たく繁っていた。その近くには、枯れているのか、灰色になった布みたいな見た目の植物が落ちていた。軽い、地面の形に沿った板みたいだ。それを4枚拾って、さっき掘った穴の方に持っていった。

うーん、ちょっと掘った方がいいかな。結構掘らないと倒れるかな…

スコップで細い溝を掘ろうとしたが、どんどん横から乾いた土が溝を埋めていってしまってうまくいかない。困ったな…

地面に座ってボーッとしていると、白銀色の物体がふわりと近づいてきて、溝の中に入っていった。そして、溝に沿った形に変形していき、青白い光をひときわ強めた。

すると…、土がゆっくり、ひとりでに掘られていき、掘られた土の側面は固まっていった。

え!!どうして??

近づいてよく見ると、土の中から米粒くらいのスライムみたいな物体が土を掻き分けてたくさん出てきて、土を掘り進めている。白銀色の物体が出す光が当たったところが、桃色に光っていて、嬉しそうだ。どうやら、この生き物は地中に住んでいて、光が好きらしい。また、掘ったトンネルが壊れないように粘液を出して固めることができるみたいだ。

30cmくらい掘ってくれたところで、白銀色の物体がチカチカ光を点滅させ、スライムは地中に帰っていった。

すごい!!しかも手伝ってくれた!!

この子たちのお陰で壁が作れる!

溝に布板を差し込むと、簡単には倒れなさそうな壁になった。

同様にして四方を囲むと…、トイレの完成だ!


ほんとにすごすぎる!

白銀色の物体に「ありがとう!」って言ってみると、ふわふわ漂い、柔らかい光を一回つけた。

「お名前、なんていうの?」

聞いてみると、ふわふわ揺れてお返事してくれた。

うーん、ちょっとわからない。


名前をつけるために、白銀色の物体をじっくり見てみると、ダチョウの卵くらいの大きさで、半透明の繭みたいな雰囲気。繭の中にはいくつもの光の粒がゆっくり漂っている。たまに粒が繭の外に出ると、新しい小さな繭が生まれて、それが大きな繭のまわりを回ったり、また合体したりしている。

ふむふむ、ちっちゃい光が集まってひとつの意思?みたいになってるみたい。それに、土の中の別の生き物とも交流できていたな。

そう言えば、大学のときの研究室の先輩のテーマが「クオラムセンシング」だった。細菌は口がないけど、化学物質を発したり受け取ったりすることで、自分以外の細菌とコミュニケーションしているんだって。

この繭は、自分自身の中でもちっちゃい光同士でコミュニケーションを取っているみたいだし、土の中の別の生き物ともコミュニケーションを取っている。細菌ほどじゃないけど、みんなちっちゃいし、クオラムセンシングから名前を取って、クオルムにしよう!


「えっと…、クオルムはどうかな?お名前。」

聞いてみると、白銀色の物体は優しくゆっくり光った。

うーん、これは、いいってことかな?

とりあえず、ほんとうの名前がわからない間は、クオルムって呼ばせてもらおう。


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