第二十五話 ブティック族との出会い
ナハル・ヴィーラ村の緑が視界の端で揺れた、その瞬間――。
「み、皆さん!! ナハル・ヴィーラ村が見えて来ました!!」
御者台のフカシアが、珍しく通る声で叫んだ。
「おお!! って――ラウスリーフ!! クッソでっかぁ!!!」
鳥車の屋根の上で寝転がっていたアデルが、勢いよく上体を起こし、目をひん剥く。
「こんなに大きいと塔がどこにあるかわからないじゃん!!」
隣で同じように屋根から身を乗り出したラセルも、少年らしい声を裏返らせて叫んだ。
鳥車の横では、緑の天蓋のように巨大な葉柄が、風に合わせてゆっくりと揺れている。一本一本が、普通の森の大木を小枝に見せるほどの太さだ。葉の裏側は陽光を受けて透きとおるような黄緑色に輝き、ところどころに水のきらめきが見えた。
「にゃはは〜、アデル少年とラセル、めちゃくちゃ興奮してるね〜」
客車の窓から顔を出したルナが、頬杖をつきながら楽しそうに笑う。
「わたしもさっき顔出して見たけど……客車の屋根が邪魔で、ラウスリーフの“葉柄”しか見えなかった……」
リノアは少し悔しそうに肩を落とす。その横で、ゼーラがぱあっと顔を明るくした。
「私達は、村に着いてからじっくり眺めましょうね!」
やけにテンションの高いゼーラに、ルインが目を細めて問いかける。
「ゼーラ、今日は機嫌よくないか? なんでだ?」
「なんでって言われましても……これから皆さんと塔の攻略が待ってますし、純粋にラウスリーフの中に入ってみたいんです! あまり見かけない光景ですから!!」
「お、おう……そうか……」
普段物静かなゼーラの意外なテンションに、ルインは思わず苦笑いを浮かべた。
――こうして、フカシアの鳥車は、ラウスリーフの根元に寄り添うように広がる村――ナハル・ヴィーラへと辿り着いた。
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村へ入った途端、鳥車の周りにわらわらと人影が集まってくる。
久しぶりの来訪者に胸を躍らせているのだろう。日焼けした顔、素朴な衣装。ざわざわとした声の波の中、ひときわ目立つ存在が、群衆をかき分けて近づいて来た。
頭の上で、白髪が鏡餅みたいに三段に結い上げられている小柄な老婆だ。
それを見た瞬間、フカシアが御者席から飛び降り、その老婆へ一直線に駆け寄る。
「おばあちゃん!!」
「お〜お〜フカシア〜、元気だったかい〜」
老婆は、丸いほっぺをふにゃりと緩ませ、孫をぎゅうっと抱き締める。
「うん! 元気だったよ!!」
フカシアも、いつものおどおどした様子が嘘のように、嬉しさを隠しきれない。
客車の扉が開き、リノア達も順に地面へ降り立つ。その姿を見て、村人のざわめきがぴたりと止まり――。
「聖女様だ……!」
誰かの小さな呟きを皮切りに、村人達は一斉に頭を垂れた。
「にゃはは〜、みんな急に頭下げたね〜」
「わたし達が“聖女”だから、かな?」
「きっとそうだと思います」
ルナとリノア、ゼーラの三人は顔を見合わせる。視線の先で、白髪の老婆――村長がフカシアへ声をかけた。
「フカシアや、聖女様を連れてきたんじゃね?」
「う、うん! そうだよ! おばあちゃん!!」
「よくやった、よくやった……」
村長は満足そうに頷き、それから周囲の村人へくるりと振り返る。
「おめえら! 聖女様方がいらっしゃったんだ! 食事の支度をするよ!! ありったけのもん、出すんだよ!!」
その一声で、村人達は一斉に散っていった。
一方、アデルとラセルは――巨大な葉柄から視線を外せずにいた。
「なあ……ラセル。ここでこの葉柄の大きさなら、真下まで行ったらマジですんげぇーーデケェーんだろうなぁ!」
「アデルさん、当たり前のこと言わないでよ。そりゃデカいよー」
「なあ、葉っぱの裏、よく見ると“波紋”みたいなもんが見えるよな?」
「……ああ、本当だ。水でも溜まってるんじゃね?」
二人で首を伸ばしながらそんな話をしていると、ルインがやってきて声をかける。
「おいお前ら。村長が“家に招きたい”ってさ。俺達も行くぞ」
「え? オレらを? なんでだ?」
「さっきの変な髪型の婆さんいただろ。あれ、フカシアの婆さんらしいぞ」
「え!! そうなの!? 見た目全然似てないからさ……あのお婆さん人族でしょ? もしかして、お爺さんが獣人の人なのかな?」
「ラセル、今そんなことどうでもいい。ほら行くぞ!」
ルインに半ば引きずられるようにして、アデルとラセルは村長の家へ向かった。
リノア達は、いつの間にか先に村長の家へ案内されていた。
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村長の家――といっても、村の中では一番大きな木造の建物だ。その奥にある食堂に通され、扉を開けた瞬間、全員の足が止まった。
「……うわぁ〜! すごく美味しそう!!」
長いテーブルの上に、色とりどりの料理が所狭しと並んでいる。葉を器代わりにした煮物。香草をまぶした肉。見たこともない果物や、透明なゼリーみたいなものまで。
「にゃはは〜、最近は焼いた肉と魚しか食べてないからね〜」
ルナは早くもよだれを飲み込む音を立てる。
「見てください、ルナさん、リノアさん! なんですかね、このブニョブニョしてそうな食べ物!!」
ゼーラは興味津々で皿を覗き込み、青い瞳をきらきら輝かせる。
アデル、ラセル、ルインも、テーブルの上を見渡してゴクリと喉を鳴らした。
「おいラセル! あのぶどうはオレがいただくからな! とったらぶっ飛ばす!!」
「あー! 僕も食べたいんだけど!!」
「俺はあの赤いのと紫色の木の実もらうからな! とったら頭へこますからな!!」
「なら僕は、あの黄色い実を貰うからな!」
三人の男達は、獲物を見つけた狼みたいに目を光らせ、さっそく狙いを定めている。
ほどなくして、フカシアと村長が食堂に姿を現した。
「み、皆さん! ようこそナハル・ヴィーラへ……って、“ようこそ”って変ですかね?」
フカシアは両手をぎゅっと握りしめ、精一杯の声を上げる。
「フカシアって、こんなに大きな声出すんだね! 初めて聞いたよ!」
リノアが目を丸くすると、フカシアの顔はみるみる真っ赤になっていく。
今度は村長が、一歩前に出てゆっくりと口を開く。
「聖女様とそのお仲間の皆さん、長い旅ご苦労様であった……。我々村一同で料理を作ったのでのぉ、たーんと食べておくれ」
「ならもう、ふってもひぃひぃのか!?」
「アデル!! ちょっと、もうぶどう口に詰め込みながら言わないの!」
既に山盛りのぶどうを口いっぱいに詰め込んでいたアデルが、もごもご喋る。
「ふるへぇ〜、ヒィノハァ〜!!」
ほっぺたがリスみたいに膨れあがっていて、全然説得力がない。
他の仲間達も、それぞれ気になった料理へ手を伸ばしていく。フカシアも皆と一緒に席に着いた。
「あの、フカシアさん。このブニョブニョしたの、なんですか?……」
ゼーラが箸でつまんでいるのは、透明で少し茶色がかった、細切りの“何か”だった。
「あ、そ、それはダッソウクラゲを茹でたものです……」
「ダッソウクラゲ、初めて聞きました!」
「こ、この辺りでは、ラウスリーフにしかいないので……」
ゼーラは、慎重に口へ運び――。
「……っ! コリコリしてて、美味しいです!」
気に入ったのか、ぺちぺちと頬を赤くしながら、夢中で咀嚼し始めた。
その一方で、別のテーブルでは――。
「おい! アデル!! てめぇ、ぶどう食いすぎだぞ!!」
「そうだよぉ! アデルさん! 僕の分も取っといてよ!!」
「ふるへぇ〜!! フゥドーはへんふぅ! ホォレロだぁああ!!」
「アデル!! さっきも言ったでしょ! 口に含んだまま喋らないの!! あと!! わたしもぶどう食べるのぉお!!」
リノア、ラセル、ルイン 対 アデルという、ぶどう争奪戦が静かに勃発していた。
そんななか、ルナは一人、場の賑やかさそのものを楽しむようにゆっくりと食事をしていた。そこへ、村長がちょこんと隣に腰を下ろす。
「賑やかだのぉ〜」
「にゃはは〜、ルナの仲間達は賑やかなのだぁ〜。ねぇねぇ村長さん、聖女パーティが来たら、毎回ルナ達と同じように歓迎会してるの?」
ルナの問いに、村長は少し遠い目で頷いた。
「そうじゃよ。これが我々の“使命”みたいなもんじゃよ……」
「使命? なんでぇ〜?」
「聖女様の“塔の試練”の為にここへ来る聖女パーティは多いが、戻ってくるパーティは、ほんのわずかじゃ……。わしらは、塔の内容なんぞ全く知らん。だが、帰ってこんパーティが多いということはのう……ラウスリーフで亡くなったのか、塔で亡くなったのかも分からんのじゃ」
静かに語る村長の声に、ルナの笑顔が少しだけ和らいで、真剣な色を帯びる。
「わしらは、せめてここで“たくさんうまいもん”を食べさせてやってのう。少しでも楽しい思い出を残してもらおうと思って始めたんじゃ。トラウスの塔付近にある村の、“使命”だとわしは思っとる」
ルナは、その皺だらけの手をぎゅっと握った。
「ルナ達は大丈夫だよ〜。心強い仲間達がいるし、サクッと塔なんて攻略しちゃうもんね〜。またルナ達のパーティが戻ってきたら、盛大にまた歓迎会してね〜」
「うんうんうん。あい、分かった!」
村長が笑った、その時――。
「アデル!!」
リノアの悲鳴にも似た声が、食堂中に響き渡った。
ルナと村長が慌てて声のした方へ駆け寄ると、そこには喉を押さえ、顔を真っ青にしているアデルが仰向けに倒れていた。
「何があったのじゃ!」
「アデルがぶどうを喉に詰まらせたの!!」
リノアの声は半ば泣きそうだ。
「リノア! ヒールでなんとかならねえか?! このままだとアデルが窒息死してしまうぞ!!」
ルインも完全にパニックになっている。
「こんなの、ヒールでもどうにもならないよ!! 直接、口に手を突っ込んで出すしか!!」
「あ、アデルさん!!」
「アデルくん!!」
周りが慌てふためくなか――。
「僕に任せろ!!」
ラセルが、誰よりも大きな声でそう宣言した。
「ラセル! お前、一体どうやるんだ!!」
ルインが叫ぶと、ラセルは真剣な表情でアデルの横隔膜あたりに拳を当てる。
(こいつには、感謝してもしきれないし……それでも“くそったれ”って言いたくなる時もあるけど……死なせるわけにはいかない!!)
「くそったれぇえ、アデルゥウウ!!!――“鉄拳制裁”!!」
ドガッ、と鈍い音が響いた。
ラセルの拳がアデルの横隔膜にぐにゃりとめり込み、アデルの体がくの字に折れる。その反動で体が戻った瞬間――。
「ぶっ……!」
アデルの口から、一粒のぶどうが弾丸みたいに飛び出した。軌道上にいたラセルの瞼に、見事に直撃する。
「いてっ!! 目がぁあ! 目がぁああ!!」
「何してんだぁあ!! ラセル!! アデルゥウウ、大丈夫かぁあああ!!」
「ラセル!! 何してるのぉおお!! いくらアデルがムカつくからって!! “溝”撃ちはないでしょ!! せめてお腹にしてよ!!」
「リノアさん……お腹もよくない気が……」
「ア、アデルさんの……顔色が、よくなってます……」
フカシアが半泣きで言うと、ルナがけらけらと笑う。
「にゃはは〜、フカシア少年の言い方紛らわしいよ〜。アデル死んだかと思ったじゃん〜」
アデルはしばらく咳き込んだあと、ケロッとした顔でヒョイっと立ち上がった。
「ゲッホ……あっぶなかったぜぇ!! リノア、すまん!! 助かった!!」
アデルは勢いよくリノアに頭を下げる。
「あのー……わたしじゃないの……」
「……あん? じゃ誰だよ!」
リノアが顎で指し示した先――右目を押さえながらしゃがみ込んでいるラセルが、顔をしかめながら立ち上がる。
「僕のおかげで助かった命だ!! 感謝しろよ!!」
「ああ! すまんな! ラセル!」
アデルが笑いかけた瞬間――。
(やっべ……“くそったれ”って、普通に言ってたよな、今……聞こえてないよな? いやでも――)
冷や汗がラセルの背中をつうっと流れた。
「なあーラセル……オレの聞き間違いならいいんだけどさ……オレのこと“くそったれ”って言って殴ったよな?」
(終わったぁああああ!!!)
ラセルの思考が真っ白に飛ぶ。
「ぼ、ぼ、ぼ、僕が言うわけないじゃないか!! 僕は“食ったもん吐け”って言ったんだよ!!」
「食ったもん吐けって言ったのか!! なんだよぉ〜、変な言い掛かりつけて悪かったな〜」
アデルはあっさりと納得し、ラセルの肩をポンポン叩いて、何事もなかったかのように再びご飯に戻っていく。
ラセルはその場にへなへなとへたり込んだ。
「あっぶなかった……」
ルインとリノアも、ひとまず安心して食事を再開する。ゼーラとフカシアは、相変わらずクラゲ料理や村の食材の話で盛り上がっていた。
「にゃはは〜、ラセル、上手く誤魔化せたねぇ〜」
「ルナちゃんうるさいよぉ〜……」
ルナとラセルも席へ戻り、食事に加わる。賑やかで、暖かい笑い声に満ちた食堂。その光景が、村長の胸に嬉しさと、そして少しの切なさを同時に灯していた。
――この中の何人が、塔から戻って来られるのだろう、と。
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〜夜〜
外では、急に降り出した雨がパラパラと屋根を叩いている。だが、ラウスリーフの下――葉が重なり合う“ラウスリーフ”の内部では、その音は鈍い響きに変わり、時折ドンッ、ドンッと、大きな水滴が落ちたような低い音が遠くで鳴り響いていた。
宴会でさんざん騒いで疲れたはずなのに、アデルはまったく眠れず、村長の家の廊下を行ったり来たりしていた。
「……」
気配を感じて顔を上げると、廊下の向こうからリノアがこちらへ歩いて来ていた。
「あれ? アデル、どうしたの?」
「どうしたって言われてもなぁー。ただ眠れねえだけだ……」
「そっか。……わたしもそうなんだよね」
二人は並んで廊下の先――窓の外、暗い森の向こうにそびえるはずの“トラウスの塔”の位置をぼんやりと眺めた。
「なあ……リノア。オレが八年前から言ってた、“全ての塔を攻略する”って話、覚えてるよな……?」
「うん、覚えてるよ。うるさくて、大きな声で言ってたよね!」
リノアがくすっと笑うと、アデルも鼻で笑った。
「オレ達、いろいろあったけど――やっと“第一基目”に来たな」
「そうだね。……どう? アデル。ここまで“長かった”って思う?」
「オレの頭の中じゃよぉ……もっとドンドン塔に挑んで、サクッと攻略できると思ってたんだが……全然サクッといけんかったわ」
「やっぱ、実際に冒険に出ないと分からないこと、多いよね」
「ああ……」
しばし、言葉を交わさずに外を見つめる時間が流れる。
リノアが口を開いた。
「アデル。絶対攻略しようね。――仲間達、誰も失わずにね」
アデルはいつものように、力強く笑ってみせる。
「任せろ!! 全部“一撃”で終わらせてやる!!」
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一方その頃、家の別の縁側では――ルインとゼーラも、並んで夜の景色を眺めていた。
「ゼーラ〜、俺全然寝付けねーよ。これ“緊張”だよな?」
「ルイン! 私も緊張してるよ!」
「つか、二人っきりで話すの久しぶりだな!」
「なんか、そんな気がするね!」
最初は、ルインとゼーラ、二人だけの旅だった。そこにアデル達が加わり、さらにルナとラセル、フカシアが加わって――今は、ずいぶん賑やかな一行になった。
「最初は俺達二人だったけど、アデル達、ルナ達と一緒に冒険するようになって……なんか、賑やかになったよな」
「私、賑やかなの好きだから嬉しいよ! ねえルイン――絶対、皆で攻略しようね!!」
ゼーラが真っ直ぐな瞳でそう言うと、ルインはその視線をしっかり受け止めて頷いた。
「ああ。――誰一人欠けることなくな!」
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その頃、別の部屋では――。
「ラセル、寝るの早いなぁ〜。せっかく暇だから遊びに来たのにぃ〜」
床で大の字になって眠っているラセルを見下ろしながら、ルナは少しバツの悪そうな顔をした。
(ラセルと村を出て、聖女の旅……正直、ルナには“これがやりたい!”って願いなんてなかった。ただ“聖女だから”って理由で塔に向かってた)
(でも――アデル少年達と出会って、楽しい冒険ができて……ルナは、結構もう満足してるかも)
いつまでこの時間が続くかは分からない。塔の先に何が待っているのかも。
(こわい、って気持ちは……正直、ある)
それでも。
(リノア少年、アデル少年、ルイン少年、フカシア少年、ラセル……もっともっと、一緒にいたい)
胸の内で、ぽつりと願いが形になる。
(塔の攻略を、絶対に成し遂げて――もっといろんな国を、みんなで見に行きたい。ルナは、そうしたい)
窓の外で、雨音が少しだけ弱くなった。
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〜翌朝〜
まだ空気に冷たさの残る朝。リノア達の準備はすべて整っていた。
「村長、フカシア。昨日はありがとう! めちゃくちゃ美味しかった!!」
「そ、それはよかったです……」
「わしら村人全員で作った料理は、うまいんじゃよ!」
ルインはきっちりと腰を折って礼をし、それに合わせてリノア達も揃って頭を下げる。
「また全員で戻ってくっから。飯頼む!」
アデルは、子どもみたいな無垢な笑顔でそう言い放った。
「もー、アデル! 図々しいでしょ!!」
リノアに襟首を掴まれて、無理やり深く頭を下げさせられる。それを見て、フカシアも村長も、くすりと笑った。
「聖女様とお仲間の皆さん、くれぐれも気をつけるんじゃぞ。ラウスリーフは上から特大な雨粒が落ち、厄介な魔物もおる。危険が多いからの〜」
「にゃはは〜、ルナ達は大丈夫〜」
「ルナちゃん、どこからそんな自信が出てくるんだよー」
村長は目を細め、続けた。
「それとな……ラウスリーフには小人族“ブティック族”がおる。そ奴らは森を熟知しとるでのう、力になってくれるはずじゃ。ただ少し“癖”があるが、決して悪い奴らではない。特にアデルよ、決して怒るでないぞ……?」
「おい村長! さっきから何言ってんだぁ?」
「会えば分かる!」
村長は意味ありげに笑ってごまかした。
「み、皆さん!! ど、どうか……どうか無事でっ!! 塔を攻略して、みんなで戻ってきてください!!」
フカシアの目には、涙が浮かんでいた。
「任せろぉおお!! オレがいる限り誰もしなん!! 笑顔で戻ってくるぜぇ!!」
アデルの宣言に、村長が目を細めて呟く。
「頼もしい小僧だわい……」
こうしてアデル達は、ナハル・ヴィーラ村を後にし、ラウスリーフ――あの巨木の森へ歩みを進めた。
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「おい! これがラウスリーフか!! 急にデッケェーなぁ!!」
「……ああ。地面を見てみろよ。緑っぽいし、“波紋”みたいになんかなってるぞ」
アデルとルインは、足元と頭上を交互に見比べる。
もはや森というよりも、“巨大な一枚の葉の裏側”というべき光景だった。頭上には、何層にも折り重なったライフリーフの葉。ところどころ、垂れ下がった葉の縁から、水がぽたぽたと落ちている。
地面――正確には葉の裏から透ける光が揺れ、揺らめく水面のような模様が一面に広がっていた。
「これ、僕が思うに……葉っぱに水が溜まってるんだと思う。それが陽の光に照らされて、地面に波紋が映し出されてるのかもね!」
ラセルが周囲を見回しながら、眼鏡をクイッと押し上げる。
「にゃはは〜。葉っぱの上で魚が泳いでるの、わかるよ〜!!」
ルナが指さした先――遥か高み、葉の窪みにできた巨大な水たまりの中を、小さな魚影が確かに泳いでいた。
「本当だ……。よく葉っぱがどうなってるか見たいけど……」
「リノアさん……これ、登るの無理な気がします……」
ゼーラが引きつった笑みを浮かべる。
しばらく歩いていると――。
ポツ、ポツ、と。
リノアとゼーラのいるあたりに、微かな水音が落ちた。
「ん? 雨?」
「でも、陽は差してますよね……?」
不思議そうに空を仰いだ、その瞬間――。
「よけろぉおおお!!」
アデルとルインが、ほとんど同時に叫んだ。
リノアが反射的に顔を上げると、頭上から“巨大な水の塊”が落ちてきていた。普通の雨粒とは比べ物にならない。まるで桶いっぱいの水を丸ごと固めたような、透明な塊。
「う、そ……」
ゼーラは咄嗟に魔法の詠唱に入るが間に合わない――そう思ったその時。
アデルがリノアの体を横から抱き寄せて飛び込み、ルインはゼーラの腰を掴んで横へと転がした。
次の瞬間。
ズバーーンッ!!
さっきまで二人が立っていた場所に水塊が落ち、地面が大きく抉れた。半径五メートルはあろうかという大穴が、そこに広がっている。
「にゃはは……。あぶなかったね……。ナイス、アデル少年とルイン少年」
ルナが苦笑混じりに言う。
「これが“エルフの涙”……ルナちゃん!! まだ降ってくるかも!!」
ラセルの言葉に、全員が空を見上げる。
案の定、さっきと同じように、ぽつりぽつりと周囲に雨粒が落ち始め――。
「みんな!! また来るよぉお!! 早く立って!!」
リノアの声で、アデル達はすぐに体勢を立て直し、ルナとラセルのいる方へ走り出した――が。
バシャァンッ!!
目の前に、再び巨大な雨粒が落ちる。慌ててブレーキをかける形になり、泥水が跳ねあがった。
「あっぶね!」
「アデルさん! ラウスリーフの“茎”の所へ行ってください!!」
ラセルの指示に、アデル達は近くの太い茎の根元へと身を寄せた。そこだけは、葉が厚く重なり合っていて、上からの水滴がほとんど落ちてこない。
あちこちに落ちるエルフの涙が地面を抉り、煙のような水しぶきが上がる。しばらくの間、その恐ろしい“雨”が続き――やがて、嘘のように止んだ。
アデル達は、ラセル達の居場所まで戻る。
「にゃはは〜。すっごいね〜このエリア!!」
「ルナちゃん!!! 笑ってる余裕ないんだよ! あれに当たったらペチャンコだぞ!!」
アデルはまだ心臓の鼓動が早いのか、眉間に皺を寄せたままだ。
「アデル……ありがとう。急に目の前に見たことない大きなの雨粒が来て、びっくりして足が動かなかった……」
「私もです……。ルイン、ありがとうございます……」
ゼーラも胸に手をあてて深呼吸する。
「これ……一筋縄ではいかんな」
ルインが空を見上げながら呟く。
「クッソ! うっぜぇなあ!! 塔まですんなり行かせてくれねえのかよ、ボケッ!!」
アデルが吐き捨てるように空へ文句を言った、その時――。
ルナの視界の端を、黒い大きな影が横切った。
「にゃはは〜、みんな、まだ油断できないかも……」
「ルナちゃん、急にどうし……?」
ラセルがルナの顔を覗き込み、その視線の先を追って――息を呑んだ。
茎の影から、巨大な“バッタ”の魔物が身を乗り出していた。
頭よりも巨大な複眼がぎょろりとこちらを睨み、巨大な後ろ脚を上下左右に小刻みに揺らしている。その顎は、大人の男の頭を丸ごと噛み砕けそうなほど大きかった。
ラセルはアデル達に伝えようとしたが、その必要はなかった。アデルは既に“殺気”を感じ取っていたからだ。
「おい、これ――先行はオレらでいいよなぁ!!」
アデルがニヤリと笑う。
「珍しく、“突っ込まない”んだね!!」
リノアがツッコミを入れる。
「ふん! うるせぇよ!」
ルナが一歩前へ出て、人差し指を前に突き出す。
「アクア・グッタ(水滴弾)!」
放たれた水の弾丸が背後のバッタへ向かう。しかし、バッタは凄まじい脚力で横へ飛び、避けきると――。
ズシン、と音を立ててアデル達の目の前に着地した。
「おい……クッソでけぇーな。オレがよく捕まえてたバッタとは、まるで違うぜ……」
アデルが眉をひそめる。
「気持ち悪い……バッタ、こんなに大きいと気持ち悪い……」
「リノアさんもですか……わ、私もです……」
二人の聖女は完全にドン引きだ。
「おまえらな……」
アデルは呆れた声を出しながら、一歩踏み込んだ。
「くたばれ、デカバッタ!!
プグヌス・ディレクトゥス(直進する拳)!!」
地面が割れるほどの勢いで踏み込み、その勢いのまま繰り出したストレートが、バッタの頭部に直撃する。
「どうだ、ボケッ!!」
「流石アデル少年!! アクア・グッタ!!」
間髪入れずルナの水滴弾が同じ箇所へめり込む。二人の攻撃で、バッタの頭部には大きなヒビが入った。
怒り狂ったように、バッタは大顎を大きく広げ、リノア達へ襲いかかる。
「ソルマ・アクス(岩針)!」
ゼーラが地面へ手を叩きつける。すぐさま地面から無数の岩の針が生え、バッタの顎の下を串刺しにした。
その隙を逃さず、ルインが叫ぶ。
「ゲネシス・ノワークラ(生成・短剣)!
コンパクション(刺す)!!
ラセル!! ヒビ入った場所を攻撃しろ!!」
「わかってるよ!! フォルマ・ラメナ(飛火)!!」
ラセルの放った飛ぶ火が、ヒビの入った頭部へ連続して突き刺さる。
リノアも、右手にマナを集中させながら走り出した。
「わたしの日々の修行の成果、見せてあげる!!」
凛とした声と共に、バッタへ向かって跳び上がる。
「アネマ・フルゴル(瞬風衝撃)!!」
アネマよりもさらに重い風圧が渦を巻き、バッタの頭部に叩き込まれた。
ビキビキビキ――。
頭部のヒビが広がり、そのまま砕け散る。
「とどめだぁああ!!」
アデルとルインが叫び、同時に飛び込んだ。
「ゲネシス・マレウス(生成・槌)――ヒットぉおお!!」
「プラーガ・カルキス(踵落とし)!!」
土の槌が側頭部を打ち砕き、アデルの踵が頭頂部を踏み抜く。バッタの巨体が、ぐらりと揺れ――地響きを立てて倒れ込んだ。
「にゃはは〜、いいコンビネーションだったね〜!! ルナ達、いいパーティーだね〜!!」
「へっ! こんなの余裕だぜ!!」
アデルが鼻を鳴らす。
「よし。エルフの涙がまた来るかもしれないから、先に進むぞ」
「うん!! 行こう!!」
そう言った矢先――。
パサパサパサ、と。
嫌な音が、頭上からいくつも重なって聞こえてきた。
全員が音の方向を見上げる。
さっき倒したのと同じような巨大なバッタが――十匹以上。葉の影から、次々と姿を現していた。
「はっ! 雑魚がワラワラと出やがって!!」
「うぅ……気持ち悪いです……」
「第二ラウンドだ! さっさと倒すぞ!!」
「僕に任せろぉおお!!」
今度はラセルが先陣を切る。
(ここで活躍しなきゃ、ただ“性格がやばい奴”のままだ!!)
「フォルマ・エンシス(火剣)!!」
炎の剣を手に、目の前のバッタの脚を片っ端から斬り落としていく。
「ラセル!! わたしも援護する!! フラッゲルム!!」
リノアが風の鞭を生み出し、バッタの複眼を打ち据える。
「二人して勢いすごいね〜。ルナも援護しなきゃ。アクア・グッタ!」
ラセルの火剣と、リノアの風の鞭、ルナの水滴弾――三人の連携で、あっという間に三匹のバッタが沈んだ。
「オレも行くぜ!!」
アデルが飛び出そうとしたところで、ルインが肩を掴む。
「待てアデル。……正直、俺達、別に行かなくてもいいんじゃね? 見てみろよ。アイツら、結構いい感じで戦ってるぞ」
「ルイン! 何言ってるんですか! 早くバッタを倒して、リノアさん達の負担を減らしますよ!!」
「はいはいー。アデル、行くぞ!! ……どうした、アデル?」
アデルの表情が真剣そのものに変わっていた。
「おい……なんか、来るぞ」
「はあ? “なんか”ってなんだ?」
「あの茎の中心に移動したぞ。よく見ろよ」
ルインはアデルの指さした先へ視線を向ける。
――そこにいた。
鎌のように鋭く湾曲した二本の腕。逆三角形の頭部が左右にゆっくりと揺れている。おぞましいほどに研ぎ澄まされた“捕食者の気配”。
葉と同じ緑色の体色で、さっきまで完全に背景に溶け込んでいたその魔物は――。
「色が緑で、一瞬わからんかったけどな……。見つけたか?」
「ああ……」
「私も見つけました……。あれは――マンティスです……」
ゼーラが小さく息を呑む。
「マンティスって魔物、初めて聞くぞ!」
「アイツは動きが速い。目もいいから攻撃が当たりにくいんだ。ただ、頭部がめっちゃ柔らかいから、そこが弱点だ」
「なんでゼーラとルイン、そんな魔物に詳しいんだよ!」
「しっかりと事前に、目指す場所を調査してるからだ!!」
ボンッ!!
派手な爆発音が響く。リノア達の方へ目を向けると、バッタ群は残り一匹になっていた。
「おい。リノア達がバッタを倒した瞬間――マンティスは俺達を狙ってくるぞ!!」
「どうしますか、アデルくん!!」
「アイツを“殺る”しかねえ!!」
アデルは、一歩前へ出て構えを取った。
「アデル。その構えは……」
「リノア達がバッタをぶっ飛ばした後、マンティスは必ずオレの方へ来る。だから来た瞬間――オレの“ペガルイム・プルス”をぶち込んで、一撃で仕留める!!」
「アデルくん!! 失敗したら――」
「そうなったら、ゼーラ! ルイン!! オレを守ってくれ!」
珍しく“守ってくれ”と言われ、二人は力をこめて頷いた。
やがて――。
「やった! 僕達三人でやれたぞ!!」
「ルナの援護があって、やりやすかったよ!!」
「にゃはは〜、どう致しましてぇ〜。アデル少年達は一体何して――」
ルナが振り返ると同時に、それを見た。
アデルの頭上――茎の影から飛び出したマンティスが、鎌を広げながら一直線に降下してくる。
「リノア少年!! ラセル!!!」
ルナの叫びで、リノアとラセルも状況を把握する。
三人が一斉に魔法を放った。
「アクア・グリッタ!!」
「ラミーナ!!」
「フォルマ・ラメナ!!」
だが――。
マンティスは、それらをすべて“見てから”避けた。
「嘘だろ!!」
「あれを避けるの!!」
「にゃはは〜、まずい〜……」
リノアはすぐさま、ルインとゼーラの名を叫ぶ。
「ルイン!! ゼーラ!!」
だが――二人は既に“動いていた”。
ラセルがアデルの横へ飛び出す。その瞬間、マンティスの巨大な鎌が、アデルの左右へ突き刺さった。
「アデルさん!! 逃げて!!」
ラセルの声に、アデルはちらりと笑う。
「おまえ、ルインとゼーラを“見習え”」
マンティスの鋭い顎が、アデルの頭部を喰らわんと突き出される。
アデルは、ギリギリまで引きつけて――。
(タイミング、位置、完璧……!)
「ペガルイム・プルス(殴る衝撃)!!」
拳がマンティスの頭部にめり込み、爆発したかのように頭部を吹き飛ばす。
巨体がぐらりと揺れ、そのまま崩れ落ちた。
「雑魚だったぜ!!」
アデルが肩で息をしながら笑う。
「んったく、ヒヤヒヤさせんなよアデル!!」
「そうですよ!! アデルくん!! 二つの鎌が来た時、焦りました!!」
「まあでも、オレの宣言通り“一撃”だぜ!!」
リノア達も合流し、安堵の息をつく。
「おまえら! ナイスだったぜ!!」
「アデルさん、本当驚かせないでよ!! ここの森、マンティスもいるのかよ〜!!」
「にゃはは〜、本当油断できないね〜」
「まさかアデルの方にも魔物がいたなんて……」
そんな会話を交わしていると――。
ポツ、ポツ、と。
再び頭上から水音が聞こえ始めた。
ルインは即座に叫ぶ。
「エルフの涙が来るぞ!! 早くラウスリーフの茎へ走れぇえ!!」
全員が近くの太い茎の下へ駆け込む。次の瞬間、あちこちに巨大な水塊が落ち、地面が抉れる音が響いた。
アデルとラセルは、同じ茎の根元に寄りかかりながら、周囲の様子を窺う。
「もお〜。時々こんなこと起こると、全然塔まで行けねえーじゃん!! なんか、エルフの涙が当たっても耐えられるドュドュいねえかな〜」
「いるんじゃねえか? まだこの森、そこまで知らんけどよ……」
アデルがため息をついた、その時だった。
背中の辺りを、ツンツン、と小さな何かが突く感触が走る。
「ん? なんだ?」
振り向くと――そこには、アデルの腰くらいの高さしかない“小さな人物”が立っていた。
尖った耳。小柄な体。だが目だけは妙にギラギラしている。
「何してるんゴミか?」
「おいコラ、チビスケ!! オレのこと“ゴミ”って言った?」
「アデルさん、コイツ、もしかして“小人族”かもしれ……!!」
ラセルが慌てて耳打ちする。
「何!! これが小人族か!!」
アデルはしゃがみ込んで小さな人物と視線を合わせる。
「そうゴミ、そうゴミ!! 僕達は“ブティック族”ゴミ!!」
「テメェ〜!! さっきからゴミゴミゴミばっかり言いやがって!! ぶっ飛ばすぞぉおお!!」
「アデルさん!! 落ち着けって!! ナハル・ヴィーラ村の村長が言ってた“癖がある”って、このことなんじゃない?!」
ラセルが慌てて止める。
やがてエルフの涙も止み、散っていた仲間達も合流してくる。
ルインは仲間の怪我の有無を確認していたが、ふとアデルを見ると――。
アデルの膝の辺りで、小さな人がちょこまかと動いているのが目に入り、盛大に悲鳴をあげた。
「うぁああああああ!!」
「ルイン!! 急にどうしたんですか!!!」
「ゼ、ゼーラ!! アデルの膝辺り見てくれ!!」
ゼーラが恐る恐る視線を向ける。
「ええ!! 小人族……ですか?」
ゼーラがアデルの足元で屈み込み、小さな人物へ話しかける。
ルナとリノアも気になってそちらへ向かい、アデルも足元を見る――。
そこには、胸を張った小さな“ブティック族”がいた。
「はい! 小人族ゴミ!!」
「え……ゴミ……?」
「アデル……コイツ殴っていいか?」
「オレも思う……」
「二人とも駄目だって!!」
リノアが慌てて間に入る。
「あのさ、なんでアデルに着いて来るの?」
「それが、仲間達とはぐれちゃったんゴミよ! それでエルフの涙から逃げる為に雨宿りしてたら、アデルと君が来たんゴミ!!」
ブティック族はぽすんとその場に座り込み、ぺこりと頭を下げた。
「おまえらは“聖女パーティ”だろ! どうかお願いがあるんゴミ! おれ、仲間とはぐれちゃって……だから“仲間”を見つけて欲しいんゴミ!!」
「は? なんでオレらが……」
アデルが眉をひそめると、ブティック族は胸を張って言う。
「もちろんタダじゃないゴミ!! おれ達が乗ってる“鎧亀”に乗せてあげる!!」
「なんだ? その鎧亀って」
「エルフの涙を耐える亀ゴミ!! コイツがいれば、わざわざ雨宿りする必要がないゴミ!!」
その言葉を聞いた瞬間――。
「それ、めっちゃ重要じゃん!!」
リノアがすかさずしゃがみ込み、ブティック族と視線を合わせた。
「もちろん任せて! わたし達、“聖女パーティー”がしっかり仲間を探すから! 見つけたら絶対、その鎧亀に乗せてよ!!」
「もちろんゴミ!!」
「おい! リノア!! 急に勝手に決め――」
「うるさいアデル!! 鎧亀は、この森では絶対必須なの!! もし鎧亀に乗れれば、早い段階で塔へ行けるんだから! みんなもいい?」
「にゃはは〜、全然いいよ〜!! ルナ、鎧亀乗ってみた〜い!」
ルナが両手を上げる。
ルイン、ゼーラ、ラセルも、それぞれ頷いた。
「それじゃあ――仲間探しに行くよ!!」
リノアの掛け声と共に、アデル達一行はブティック族の仲間を探すべく、ラウスリーフの奥深くへと足を踏み入れていった。
魔物
ダッソウクラゲ、ライフリーフの葉っぱも上に生息してるクラゲ、水滴が落ちてくる時、時々ダッソウクラゲも水滴に混ざって落ちてくる
マンティス
カマキリみたいない奴、動き速い
巨大バッタ
肉食系で、獲物を常に探している
シアワセ草
抜くと寿命が八年伸びると言われてるらしい、抜いた瞬間ヨッシャっと聞こえるっぽい、マジムリ草とオッカナ草と同じエリアに生えてる




