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86.Cランクへの推薦状

 侯爵様を前にレオンティーヌ様の水魔法の【治癒】は披露され、侯爵様はご満悦のご様子。


 「これほど早く【治癒】の魔法を会得できるとは思ってもいなかった。約束の300万ゴルビーを用意せねばならんな。その他にも魔法は会得できたのか?」

 「ご期待に添えるかどうか分かりませんが、水球と水槍を撃ち出せるようになりました。」

 「そうですわ、お祖父様。水球は連弾で撃ち出せるようになりましたの。」

 「れ、連弾?

 ヴィヴィ、連弾とは?」

 「たくさん撃ち出せます。」

 「??・・・ おい、的を用意しろ。」


 近くに控えていた騎士さんに指示して、庭に丸太が用意される。


 「レオンティーヌ、あの丸太に向かって水球を当てられるのか?」

 「お任せください、お祖父様。

 ヴィヴィ先生、おもいっきりやって構いませんか?」

 「相手が丸太ですしね、思いっきりやっちゃってください。」


 レオンティーヌ様のかざす両手の上に浮かんだ複数の水球。連弾で撃ち出され次々と丸太に命中、水の威力で丸太の表面が削られ木くずが飛散する。撃ち出された水球は次々と補充されレオンティーヌ様の頭上に待機。

 何の感想も出てこない侯爵様、この程度じゃ驚いてくれないのね。と、思っていました。

 侯爵様を振り返ったら、目は見開かれ口が大きく開きっぱなし。


 「侯爵様?」

 「・・・・・待て、待て待てーっ!! レオンティーヌ!! 魔力は、魔力は大丈夫なのかっ?!」


 頭上に浮かせた水球を全て廃棄、頭の上に落ちないように人のいないところへ放り出された水球が水たまりをつくる。

 気を抜いて頭の上の水球が自分に向かって落ちることのないように、レオンティーヌ様も学習したのよっ。


 「お祖父様、何をおっしゃっているんですかっ。水の精霊様のお導きにより魔法が発動されておりますわ。わたくしには負担はございませんのよ。」

 「・・・・・ん?

 ヴィヴィ、どういうことだ?」


 あまりあちこちに拡げたい情報ではないんだけど・・・ ちょっとボカした説明で納得してくれるかしら?


 「魔法を発動するにあたり、精霊へお祈りを捧げることによって魔力消費が抑えられております。侯爵様が心配するほどの魔力消費はありません。」

 「そう・・・ なのか? 私は魔法使いではないから理解が及ばないが、ヴィヴィがそう言うのなら信じよう。」

 「信用をいただき、ありがとうございます。」

 「う、うむ・・・ しかし、これほどとは思わなかったぞ。即戦力で誘われそうなほどだ。」

 「まさか、レオンティーヌ様を『魔の森』に送りこもうだなんて思っていらっしゃらないですよねっ。」

 「学園修了時、魔法の成績優秀者は王国騎士団の魔法騎士隊に配属される。今のレオンティーヌの魔法は、すでにその成績優秀者に匹敵するだろう。」

 「だからといって子供を魔法騎士隊に配属なんて事はしないでしょうねっ。」

 「お祖父様、わたくしも学園で勉学に励みたいですわ。」

 「うむ、もちろん学園には行かせる。だが、その魔法力なら魔法騎士隊は約束されたようなものだ。」

 「そんなっ、危険ではないのですかっ?

 レオンティーヌ様は魔法騎士隊なんかに配属されてもいいのですかっ。」

 「ヴィヴィ先生は何をおっしゃっていますの。魔法騎士隊はエリート中のエリートですのよ。ブルダリアス王国貴族家に魔法使いとして生まれて、魔法騎士隊に憧れを持たない子供はおりませんわ。」


 あら? こんな子供のうちから将来が決められちゃっていてもいいんですか。

 エリートで憧れでっていうのも、大人達に誘導されてそういう考えを持つようになったと思うんだけど、大人達も子供の頃には同じように教育されてきたんでしょうね。


 「わたくしの、水を少しだけ出す魔法では、きっと何もできなかったと思います。ここまでの魔法を習得できたおかげで、魔法騎士隊に手が届くのですわ。ヴィヴィ先生には感謝しかございません。」

 「レ、レオンティーヌ様がそれでよかったのなら、私もうれしく存じます。」


 本人が喜んでいるのよ。他の選択肢もありますよ、と指し示さなくてもいいかな?


 「最初の依頼以上の成果が出ている。約束ではギルドの依頼達成報酬200万ゴルビー、水魔法の【治癒】会得に対しての報酬300万ゴルビー、Cランクへのランクアップ推薦状、これらはすぐにでも用意して手渡すことにしよう。これ以外にレオンティーヌが会得した攻撃魔法については、どれほどの報酬を用意したらいいのだ?」

 「ええっ、そんなことおっしゃっても、私もどのくらい要求すればいいか分かりませんよ。」

「ふむ、そうか、セレスタンと相談してみるか。『風鈴火山』全員で私の執務室へ来てくれ。」


 侯爵様はレオンティーヌ様を連れてお屋敷に戻っちゃったわ。庭の片隅で見ていたおじいちゃん家令も一緒に。

 私は侯爵家お抱え騎士さんと剣術訓練をしてるテオを呼びに行かなきゃ。

 だけど全員で来いって言われても、ソフィは子供達のお世話をしに泊まり込みで孤児院に行っちゃってるのよね。ニコはソフィの付き添いで一緒に行動してるし。ソフィにしてみれば貴族家のお屋敷は居心地が悪かったんでしょうね。。

 私はレオンティーヌ様の家庭教師で忙しかったけど、ソフィは何もやることなかったから、孤児院での交渉から帰ってきた後思い詰めたような顔で『孤児院に行かせて。』なんてことを言い出した。

 一人で行かせるのも心配だったからニコに一緒に行ってもらった。

 きっと、ソフィは何のストレスもなく生活できてると思う。これならガエル村の新設孤児院にはソフィにも入ってもらっても良さそうね。

 まあ、それはさておいて剣術訓練中のテオを連れて侯爵様の執務室へ向かうのよ。



 「なんだ、全員で来いと言ったのに二人なのか?」

 「ニコとソフィが孤児院へ行っております。」

 「そうか、この屋敷にいる間は自由に行動してよい、とは言っていたからな。問題は無い。では、ヴィヴィ、レオンティーヌへの魔法の伝授に対するここまでと、これからの報酬を書きだしてみた。確認を頼む。」

 「まず、こちらが魔法の家庭教師の依頼に対しての依頼完了伝票です。何の問題も無く最高評価A判定でございます。もう一枚の紙がヴィヴィさんが手にする金額の計算書でございます。」


 おじいちゃん家令が手渡してきた紙を受け取り、計算書の内容を確認。


 ◇◇◇◇◇


 依頼達成分報酬

 魔法の家庭教師の依頼  ギルド経由 200万ゴルビー

             ギルド手数料はクレマンソー侯爵が負担

 水魔法の【治癒】の会得       300万ゴルビー

 その他の魔法の会得         300万ゴルビー


 進行中依頼

 算術の家庭教師報酬   ギルド経由 100万ゴルビー

 特別報酬              100万ゴルビー


 合計              1,000万ゴルビー


 ◇◇◇◇◇


 「いっ、1,000万ゴルビー?! こっ、こんなにもらっちゃっていいんですかっ。」

 「いや、今回は水魔法の【治癒】の会得とその他の魔法の会得、併せて600万ゴルビーだ。ギルド経由の200万ゴルビーはギルドで受け取ってくれ。」

 「そ、それだけでもっ、800万ゴルビーありますよっ。あ、それって税金とかひかれて減っちゃったりとか?」

 「ギルド経由の報酬は税を引かれた金額だから問題は無い。私からの報酬はこちらで納税手続きをしておくからその金額は全て『風鈴火山』のものだ。」

 「あ、ありがとうございます~!!」

 「侯爵様、お待ちください。今回の依頼は『風鈴火山』としては何もしていません。全てヴィヴィの成果です。報酬はヴィヴィ個人にお願いします。」


 ええっ、突然なにを言い出すのよ、テオは・・・・・

 た、確かに『風鈴火山』で請けた依頼なのに、テオの言うとおり私一人で依頼をこなしてたわ。だからといって私が報酬総取りははできないわ。


 「テオ、この依頼は『風鈴火山』で請けたのよ。私だけが報酬を受け取るわけにはいかないわ。」

 「何もしてない我々が報酬を受け取りにくいのも事実です。ガエル村ではお金も入り用になります。今回の報酬はヴィヴィの個人資産にしておきましょう。」


 ガエル村、そうよ、確かにお父様お母様がガエル村に来たときには、それなりにお金も必要になりそうだわ。蓄えはしておくべきよね。


 「分かったわ。侯爵様からいただく報酬はそうさせてもらうわ。でもギルド経由の報酬は『風鈴火山』が依頼を請けたから、パーティーの資産にするわよ。」

 「いえ、それもヴィヴィが」

 「パーティーリーダーの私の決定よっ。」

 「え・・・・・ いや・・・ はい、分かりました。」


 そうよ、私がパーティーリーダーなのよ。決定権は私にあるし、理不尽なことを言ってるわけでもないんだから、少しぐらい我を押し通してもいいんじゃない?


 「話はまとまったようだな。では私からの報酬はヴィヴィ個人に支払うという事で事務手続きをしておこう。

 セレスタン、持ってきてくれ。」


 おじいちゃん家令が白い布がかぶったトレイを持ってきて、私達の前に置いてくれた。布をどけたトレイの上には・・・ 白金貨が6枚よっ!! と、封筒が二つ?


 「まずは、水魔法の【治癒】とその他の魔法の会得、その報酬として600万ゴルビー。こちらの封筒はA判定の依頼完了伝票、もう一つが約束していたCランクへのランクアップ推薦状になります。」

 「ありがとうございますっ。これで私達もCランクハンターですっ。」

 「推薦状があっても、簡単にはランクアップはできぬだろう。」


 侯爵様の否定的意見に、上がりまくったテンションもダダ下がりよっ。


 「どうしてですか? ランクアップ審査に受かる自信はあります。」

 「将来性のあるハンターをランクアップさせてお抱えにしようとする貴族家が、推薦状を持たせて審査に行かせるのだが、ほとんどが落とされる。あのエルフのギルドマスターは厳しすぎると、もっぱらの噂だ。」

 「そ、それでも、Cランクのランクアップ審査は受けますよっ。」

 「そ、そうか。頑張れとしか言ってはやれぬな。」

 「頑張ります。必ずやCランクハンターになります。つきましては明日ランクアップ審査を受けに行ってもよろしいでしょうか?」

 「構わんが、行ったその場で審査は受けられぬだろう。事前に申し込んで後日審査になると思うぞ。」

 「じゃ、じゃあ、今から行ってきますっ!!」

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