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80.アンナは頑張れる子よ・・・多分

 よっしゃーっ!! 難関攻略ねっ!!


 「セレスタンさん、ガエル村での孤児院の建設もお願いします。」

 「待ってください、人口が減って空き家がたくさんあるはずです。そこへ子供達を振り分ければよろしいのでは?」

 「大人が面倒を見なければいけない小さな子供達は、一カ所に集めておくことが望ましいと思います。それに、ここの孤児院だけではありません。ジルバストルにも孤児院はあると聞いています。そこの子供達も受け入れたいと思います。」

 「労働力にならない子供達ばかりを増やしてどうするんですか。」

 「活気です。子供の声が聞こえない町には活気がありません。人が年老いていくのと同じように、活気の無い町は町自体が年老いていきます。ガエル村を発展させるためにも、子供を増やしましょう。しかも、その子供達は数年すれば働けるようになります。労働力は増えるし、成長した子供達は家庭を形成し子が産まれ、村の人口が増えていくのです。この孤児院建設は決して無駄な投資ではありません。」

 「そう・・・ですね。確かにヴィヴィさんのおっしゃるとおりです。分かりました。アリステイド様には、孤児院建設の経費算入も進言しておきましょう。」

 「ついでに近隣の町の孤児も受け入れられるように、大きめの規模でお願いしますね。そして、最も重要なことは、この孤児院はクレマンソー侯爵領直営にしていただきたいのです。教団からのちょっかいを出されたくないですからね。」


 私とおじいちゃん家令の会話が途切れるのを待っていたように、アンナが思い詰めたような顔をして話かけてきた。


 「あのっ、ヴィ・・・ヴィさん・・・ あの、あの、さっきはごめんなさいっ!!」

 「私もあなたたちの事情を考えていなかったのもいけなかったの。」

 「でも私は、盗み聞きしたり、ヴィヴィさんにとっても失礼な言葉で怒鳴っちゃいました。でも、こんな私も連れてってくれるって・・・・・うわぁ~ん、ヴィヴィさ~ん」


 また泣き出しちゃったわ。ソファーに立ってアンナをヨシヨシして抱きしめてあげる。

 だから~、小さな私がそれをしても絵にならないって~、前にもこんな事あったじゃない。

 でも、私に抱きついて胸でむせび泣くアンナ。ご、ごめんなさい、ふくよかな胸じゃ無くてっ。


 「私は気にしてないし、アンナも気にしないで。」

 「ありがとうーっ、ヴィヴィさーん。」

 「今、アンナにお礼を言われても困るわ。」

 「えっ?」

 「だって、ベルトランさんに口利きはできるけど、出店する新店舗にアンナが配属されるか、私は知らないわ。」

 「そ、そんな、ヴィヴィさんのお口添えで、ガエル村異動は決定なのでは?」

 「アンナがガエル村の店舗で必要と思われなければ、。ベルトランさんだって異動はさせないわよ。」

 「必要って・・・ 私は真面目に働きます。絶対必要とされますっ。」

 「従業員がたくさんいる本店勤務ならお客様接待だけしていてもいいけど、小さな店に行ったら店番だけじゃ済まないのよ。お金のやり取りでは計算能力が重要になるし、店が終われば売り上げ計算からの帳簿付け。アンナにそれができるの?」


 エステルお母さんを振り返るアンナ。


 「お母さん、帳簿って知ってるの? 私に教えてもらえるの?」

 「私も孤児院のお金の出入りを記帳はしているけど、簡易的な帳簿なの。お店の帳簿なんて教えられないわ。」


 それって多分、お小遣い帳とか家計簿的なアレよね。そのくらいなら私でも付けられそうだけど、もっと難しい出納帳とか? そういえば前世ではお父さんが言ってたわ。売り掛けとか、買い掛けとか、貸借対照表とか、全然意味分かんないわよっ。もしかしてお父さんは簿記に興味を持ってほしくて、そんな言葉を私に聞かせてたのかな。もっとしっかり聞いておけばよかったわ。


 「それじゃあ、ヴィヴィさん・・・ 教えていただけるんですか?」

 「私はアンナより小さい女の子よっ。私だってそんなの知らないわよっ。」

 「ええっ!!  お、お、女の子ーっ?」

 「驚く所、そこっ?」

 「ごめんなさい、男の子だと思ってました。」


 「さて、ヴィヴィさん、こちらの孤児院へのお話も、伝えたいことは伝えられたようですし、そろそろお(いとま)いたしましょうか。」


 おじいちゃん家令に促されて、それもそうねと頷く。アンナとの話もグダグダになってきたし、帰ってもいいわね。もう一度ブランシュ商会へ寄ってかなきゃ行けないし。ベルトランさん、忙しかったらどうしよう。門前払いとか・・・ 無いことを祈りましょう。



 無事ベルトランさんに取り次いでもらえた。たびたびお時間を取っていただいて申し訳ないことです。


 「孤児院の件はどうなりました? 子供達はガエル村へ行ってくれそうですか?」

 「子供達が帰ってきたら相談するみたいです。でも私が提案してきたのは、ガエル村に孤児院を建設して全員で引っ越しちゃいましょう、という話なんですよね。」

 「ほほう、考えましたね。まず人口が増えなければ村の発展はありませんからね。大人が移住して家庭ができ子供が産まれ、との手順をとばして最初から子供達を増やしてしまおうということですね。」

 「それもありますが、孤児達は孤児だからという色眼鏡で見られ、働きに行った先でも虐げられているようです。あっ、アンナはそんなこと言ってませんでしたよ。『商会長にはとってもお世話になってます』って言ってました。」

 「働いた分はちゃんと給金は払われてるはずですからね。」

 「普通はそうなんです、でも孤児が相手だからと、奴隷のようにこき使ったり、まともなお給金を払わなかったりと、そのように虐げられているのも事実なんです。でも、ガエル村では荒れ地を開墾すれば、その畑の所有権を与えるようにします。働けば働くだけ財産が増えていくようにしてあげたいんです。」

 「そうですね。自分の所有物が増え、暮らしが豊かになっていけば、働く意欲もさらに増しますね。」


 そうだわ、アンナの件をお願いしなきゃ。たとえベルトランさんにダメだと言われても、一応伝えておきましたよ、とアンナに言わなきゃいけないし。


 「アンナの事なんですが・・・」

 「そうですね。アンナの事をどうするか、アンナがここにいたいと望むならここでの勤務をお願いしますし、ガエル村に行きたいと言えば新店舗への異動も考えましょう。」

 「えーっ、そんな簡単に決めちゃっていいんですか?」

 「アンナは子供達の面倒をよく見る子だと聞いてますよ。その子達がガエル村に行くのなら、アンナも行きたいと言うのではないでしょうか?」


 な、な、なんですか、ベルトランさん。達観しちゃってませんか。


 「その通りです。アンナは子供達が行くのなら一緒に行くことを望んでいます。でも、アンナはお客様接待しかできませんよね。新店舗で必要とされるのでしょうか?」

 「一人に店を任せるわけではありません。計画している新店舗の規模から考えて7人程度は必要と考えています。だから、全員が何でもできなければいけない理由はありません。まあ、少人数の中で揉まれていれば、アンナも覚えざるを得ない状況になりますからね、追々できるようになっていくでしょう。」


 確かに仕事上でやらなきゃいけない事できない事は、そのときに覚えればいいんだけど、今なのよっ!! アンナは今やる気になってるわ。


 「アンナには、必要とされなければ新店舗への移動は無い、と言ったら、本人は学習する気になってます。今お店での必要とされる店員の教育以外にも、事務仕事も教え込めば吸収も早いと思います。」

 「そうなんですね。本人がその気になっているのなら、教えるべきですね。算術は教えている途中らしいですが、将来は店を預けるぐらいに教育してみましょうか。」

 「はい、お願いしますっ。」


 私の事ではない事で、勝手にお願いしちゃったけど大丈夫よね。アンナは頑張れる子よ・・・・・多分?

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