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75.柔軟に行きましょう

 ご褒美・・・ 何を?


 そう・・・ 相談よ。お父様を迎えるための・・・ これからのガエル村を発展させるための・・・


 「あの、相談に乗っていただけますか?」

 「褒美の金額の相談か? どの程度要求する?。」

 「お金ではありません。季節が変わって暖かくなれば、ガエル村に私を訪ねて知人がやって来ます。その知人の居住権がほしいのです。」

 「知人か。どのような関係の知人だ?」

 「それをここでお話ししなければいけませんか。」


 侯爵様の視線がチラリとレオンティーヌ様に移り、私がレオンティーヌ様に聞かれたくないことを察してくれたみたい。


 「後は執務室で話そう。付いてきなさい。」

 「お祖父さま、わたくしは、」

 「私とヴィヴィだけだ。」


 ぴしゃりと否定されてシュンとなってしまったレオンティーヌ様。ごめんなさい、とても聞かせられないわ。でもいつか話せるときが来たらレオンティーヌ様にもお話いたします。



 侯爵様の執務室、テーブルを挟んでソファーに座る。

 お父様の居住権の相談なんだから、私の素性も明かさないといけないわね。すでに私のトレードマークになっている深くかぶったニット帽とメガネを外せば、腰までの長い銀髪がバサリと垂れる。


 「ほう、ここまで美しい銀髪と金の瞳はなかなかにお目にかかれぬぞ。」

 「わたくしの名前はヴィヴィアン・ライオネットと申します。」

 「辺境伯の娘か。死産だったはずだが、そうではなかったか。」

 「ご存じなのですか。」

 「ブルダリアス王国も他国の情報は収集しておるからな、耳にははいってくる。」


 そんな情報が入ってくるなんて、よほど高い地位にいらっしゃるとか。情報局長官みたいな?


 「銀髪金瞳の子供がらみで侯爵家が取り潰されたことがあったな。その後に生まれた子か。」

 「その通りです。誰にも会わずに隠れ住んでおりましたが、査察が入るとの報せでテオとニコに護られて逃げ出しました。その逃げる先がガエル村の教会だったのです。」

 「そうか、ガエル村に来た神父も、辺境伯の手の者か。」

 「はい、わたくしは会ったことはございませんが、父の依頼で神父教育を受けガエル村に教会を開いたそうです。このわたくしが平穏無事に暮らせるようにと。」

 「そこへ父母が会いに来るのだな。」

 「はい、伯爵位は身内の者に譲り平民として来るそうです。わたくしは父と母の居場所を用意してあげたいのです。」

 「そうか、褒美の約束をしたのだ。なんとかしてやりたいとは思うが・・・・・」


 侯爵様が何やら考え込んでしまったわ。無理そうなのかしら。


 「そうだな、ガエル村は今は誰も管理をしておらぬ。あそこをクレマンソー侯爵領として申請してみるか。そうすれば私の領民としてガエル村に住まわせ代官職に就けても問題はなかろう。」

 「そ、そんな簡単に領地を増やせるんですか?」

 「ガエル村に関しては開拓村として拓いたのだが、土地が痩せていて作物の生育が悪い。そこを治めていた代官も諦めて逃げてしまったぐらいだ。そこをもう一度開拓し直すといえば、私の管理下に入るだろう。ただ、開拓のやり直しだ。生産性を高め税を徴収できるようにしなければならない。税の徴収はどんなに先延ばしにしても5年程度だろう。それを約束できねば私は手を出せぬぞ。」

 「手を出せないとは?」

 「失敗することが分かっている事業には手は出せぬという事だ。王宮内にもこの私の失敗を心待ちにしている貴族共もいるのでな。」


 それって、侯爵様は盤石の立場じゃないって事なの? 一挙手一投足を監視され、わずかなミスを大きく取り上げ引きずり下ろそうとするような、揚げ足取り集団に囲まれてるって事なの?

 怖すぎるわ。私が関わってガエル村を発展させる保証なんてない。このままだと人口が減って消え去る運命の村を、発展させることができなかったら私が侯爵様の足を引っ張ってしまうことになる?

 何か・・・・・ 何か無いの? 人口を増やす手立て・・・ 

 そうだわ、ここまで来る間にも、町や村にも孤児はいたわ。王都みたいな大きな街なら孤児院とかあるはずよね。そこの子供達を労働力に使って・・・何をするの?

 農業? 孤児達に農業とか・・・ ハードル高すぎ? いえ、村には農業で生計を立ててきたお年寄りがいるのよ。子供達の指導をお願いすればなんとかなるわ。


 「そこまで思い込まずともよい。少々脅かしはしたが、ガエル村の再開拓だ。開拓のための資金もかかるだろう。その金が動く事業、その心構えを問いたかっただけだ。私も子供にそれほどの期待はしてはいない。最終的にはクレマンソー侯爵領からの資金と人員投入でなんとかするつもりだ。」

 「わたくしには・・・ 何も期待していない・・・?」

 「世間を知らぬ子供に何を期待しろと?」

 「ガエル村を発展させるためにいろいろ考えましたっ。」

 「ほう、聞いておこう。」

 「ガエル村がどのようになっているのかはテオから聞いた話ですが、年寄りばかりで村の人口が激減しているらしいのです。まずは働き手の確保、これは王都とジルバストルの孤児院を回りガエル村で働いてくれる孤児達を募集します。そしてガエル村、あそこはこの先農業だけでは立ちゆかなくなります。農業しかないところに人は集まりません。人を集めるには産業です。ガエル村での農産物を利用して生産業を発展させようと思います。そうすれば生産業と共に農業も発展するはずですっ。」

 「さすが伯爵家の娘、領地経営にも長けておる。どれだけの英才教育を施せばこうなれるのか。真にうらやましい限りだ。だがな、ヴィヴィアンの言うことは期待はできる。しかしすべて不確定要素だ。」

 「不確定ではございますが、限りなく確定に近づけるためにわたくしは動きます。有言実行です。」

 「わかった、任せてみよう。いつから動く予定なのだ?」

 「レオンティーヌ様の授業の無い日に王都の孤児院を訪ねてみようと思います。数日間のお休みを頂けたらジルバストルの孤児院も尋ねるつもりです。」

 「そんなに早くか。私の方でもガエル村の再開拓の書類提出を急がねばならんな。その書類には、何を起業すると記せばいいのだ?」

 「料理に使う油は動物性油脂類がほとんどですよね。」

 「いや、私は料理人ではないから知らぬぞ。」


 そりゃそうよ。侯爵様が厨房に入る事なんて、絶対無さそうだし。自分がどんな油を口にしてるかなんて知るよしもないはずだわ。


 「動物性のなんだ、それは何を示している?」

 「油です。動物性の油は料理がクドくなります。植物性油を使えば料理が美味しく健康にもいいのです。この植物性油を生産できたら売れると思いませんか。」

 「見たことも聞いたこともない、それを味わうこともできぬ。それが売れるかどうか判断も付かぬ。」


 え~っと・・・ ごま油とかが一般的だったけど、大豆でも油がとれるはずよね。

 侯爵家の厨房なら大豆ぐらいあるはずよ。大豆を搾った油で調理してもらえば、侯爵様の感想が聞けるんじゃない?


 「では、厨房に移動しましょう。」

 「なに? その油を持っているのか。」

 「いえ、厨房の食材で油を絞り出します。」


 侯爵様と厨房へ移動する前に、しっかりニット帽をかぶり直してメガネも装着したわ。金銀の子としてハデに人目に付きたくないし。



 「ア、アリステイド様、このようなところへ、な、何かご用事でもございましたか。」


 料理長さん、かな? 厨房なんかに来るはずのない人が突然来たおかげで、慌てふためいてる。


 「ああ、少し食材を使いたいのだが、

 ヴィヴィ、何を使いたいのだ?」

 「大豆があればわけてほしいのですが。」

 「それなら、こっちの麻袋に入ってます。好きなだけ使ってください。」


 何か容器はないかしら? あ、フライパン、これでいいわ。後は布巾をフライパンにかぶせて、大豆をざらざらと布巾の上ににあける。その布巾の端を持ち上げ大豆が布に包まるようにする。

 さてここでオリジナル魔法よ。布巾ごと大豆を【加熱】【加熱】【加熱】っ!!からの~【圧縮】【圧縮】【圧縮】っ!!

 フライパンから持ち上げられた布巾の内部が【加熱】によって熱され大豆に含まれている油分が柔らかくなる。そこへ大豆に強烈な【圧縮】がかかれば、布巾の下からボトボトと油がしたたり落ちる。


 魔法での強制圧縮のおかげで絞り尽くせたみたい。もうこれ以上は無理というとこまで絞ったわ。


 「これは何なのですか。」

 「植物性の油です。皆さん料理に油を使うとき、動物性油、ラードをお使いのようですが、この植物性油を使ってみてほしいんです。さらっとした油で料理の食感もひと味変わりますよ。」

 「い、今使わせていただいてもよろしいのですか?」

 「ええ、何か一品作っていただいて、侯爵様に味見をしていただきたいんです。」

 「かしこまりました。

 おい、火を入れろっ。

 おまえは野菜を洗って刻んどけ。」


 料理長さんが指示をすれば、料理人がキビキビと指示通りに動く。

 熱されたフライパンに私が絞ったばかりの大豆油が引かれる。そこへ野菜が放り込まれ手際よくフライパンが振られる。


 皿に盛られた野菜炒め。フォークで口に運ぶ侯爵様と料理長さん。料理長さんの口からいち早く感想が述べられた。


 「確かに、口当たりがさらっとしてる。ラードのギトギト感も臭いも無い。こ、これは何処で手に入りますか? あ、大豆だ。大豆で作ればいいのか。」

 「待てっ!! これを作ってはならんっ。口外も許さんっ。」

 「どうしてですか。この油があれば侯爵家の食卓もとても良いものになります。」

 「我が家の食卓などどうでもよい。これは開拓村の命運がかかっている。早々とこの油が世に出たらあの村の発展の道が閉ざされてしまう。」


 侯爵様、そこまでガエル村のことを考えてくださったんですね。でも油がダメでも他のこと考えますし~、柔軟に行きましょうよ。

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