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63.クレマンソー侯爵王都邸

 宿を出た馬車は貴族街に向けて進む。貴族街は王都の中でも北側に位置していて、塀に囲まれ平民は勝手に入れないって話だった。

 でも私達はギルドマスターのお手紙を侯爵家に届けるという事で、貴族門を通してくれるってギルマスは言ってたけど・・・大丈夫かな~、不審者扱いされて捕まったりしたら困るわ。


 貴族門が見えてきた。当然と言えば当然なんだけど、門を護る門兵さんが2人立ってる。

 いきなり槍を突きつけてこないでしょうね。ドキドキするわ。

 門前に馬車を止めたテオに、門兵さんの高圧的な問いかけ。


 「要件は何だ。」

 「王都東支部ギルドマスターからの手紙をクレマンソー侯爵様にお届けに参りました。こちらが手紙です。」


 封蝋の印章を確認した門兵さんが手紙を戻す。


 「身分証はありますか。」


 あら、話し方が丁寧になったわ。なぜ?

 テオがハンター証を提示する。


 「あ~、『風鈴火山』ですか。聞いています。通る前に馬車の中を改めさせてください。」


 これも決まりですから、とか言って馬車の中をのぞき込まれたけど、私達が乗ってるだけで他にはたいしたものは載ってないし、結構です、と簡単に許可が出た。

 門が開かれ私達の馬車を通してくれる。


 「ここをまっすぐ行ったところに王宮が見えますが、その手前3?・・・いや、4ぐらいだったかな? そのあたりまでいけば屋敷の前に警備兵が立ってますから、聞いてください。」


 礼を告げて豪華な宮殿に向かって馬車を進める。

 さすが貴族街、不審者がいないかと目を光らせる警備兵があちらこちらに歩いてる。治安は良さそうだけど、不審人物見つけたみたいに私達をじろじろ見るのはやめてっ。


 王宮に近づいてきてるんだけど、どこがクレマンソー侯爵邸なのか分からないわね。どのお屋敷見ても、とても豪華だという事は理解できるわ。このあたりまでくればどこの門前にも警備の兵が立ってるし。

 あ、そうだ、聞けばいいのよ。


 「テオ、馬車を止めて。」


 止まった馬車から飛び降りて、門兵さんの前に走り寄る。

 さすがにこんな小さな子供が近寄ってきて、武器を突きつける事は無いでしょう、と思ってたら、槍を構えて威嚇されちゃいましたよ。


 「止まれ。何用だ。」


 慌てて両手を肩の辺りに挙げ手のひらをヒラヒラ、手に何も持っていない事をアピール。


 「あ、あの、クレマンソー侯爵様のお屋敷へ伺いたいんですが、どちらのお屋敷なんでしょう。」

 「ここがそうだが、何の用だ。」


 一番最初のお屋敷が大当たりよっ。門兵さんがぶっきらぼうだけどしょうがないわね。どこの誰とも分からない平民が、先触れもなく突然訪ねて来たんだし。


 「私達はハンターパーティー『風鈴火山』です。ハンターギルド王都東支部ギルドマスターのお手紙をお届けに参りました。それと、指名依頼の書類もあります。」

 「先触れもなく尋ねてこられても、」


 門兵さんの言葉をもう一人の門兵さんが止める。


 「待て、『風鈴火山』が来たらすぐに伝えるようにと、レオンティーヌ様に仰せつかっている。

 今しばらく待ってもらえぬか。確認をとってくる。」


 門兵さんが屋敷に向かって全速ダッシュ。

 しばし待てば、レオンティーヌお嬢様が屋敷から駆けだしてきた。その後ろから黒服のおじいちゃん?風の人が、お待ちくださ~い、と追いかける。

 元気な10歳児におじいちゃんが追いつくはずもなく、門兵さんとお嬢様が門にたどり着いた。


 「ヴィヴィ、待ちくたびれましたわっ。遅すぎよ。」


 そんなこと言われても~、私達は護衛のお仕事だったんだしね。なんて考えてる場合じゃないのよ。まずはご挨拶よね。


 「遅くなりまして申し訳ございません。本日はお手紙のお届けと、王都に着きましたご挨拶に伺いました。」


 お嬢様も、あ、といった顔をして、カーテシーからのご挨拶。


 「ようこそいらっしゃいました。『風鈴火山』の皆様。お招きに応じていただいてありがとうございます。まずは中に入っていただきましょう。

 あなたたち、門を開けてちょうだい。」


 門が開かれているところに息を荒げてたどり着いたおじいちゃん。


 「ゼーッ ゼーッ ゼーッ」


 大丈夫なのっ、おじいちゃん心臓止まらない?


 「セレスタン、わたくしのお客様の前で失礼ですわ。下がりなさいっ。」


 なんてことを言ってるんですか、このお嬢様は。息も絶え絶えのお年寄りに向かって、もう一度屋敷まで戻れとでも言うのっ。そんなことさせたら本当に心臓止まっちゃうかも。


 「いけません、お嬢様。お年寄りは大事にいたしましょう。」


 うずくまって息を荒げているおじいちゃんの背中に手を添えて【治癒】を発動させれば、治癒の光に包まれるおじいちゃん。次第に呼吸が落ち着いてくる。


 「水魔法の【治癒】だなんて言ったけど、それ光の【治癒】じゃない。ヴィヴィはやっぱりヴァランティーヌ様の加護があるのねっ!!」

 「いえ、そんなものありません。そのヴァランティーヌ様の加護というもの自体、教団が既得権益を守りそれを元に利益を生み出させるためのシステムだと思ってください。」


 そうなのよ、宗教ってのはありもしないものを創り上げて、それを信者に信奉させて崇めさせる。その課程で神様への献金の名目でお金をふんだくるのよ。そもそも神様が財宝を欲しがる事はないし、贅沢をしたいという意識を持つはずが無いわ。

 お金を欲するのも贅沢を欲するのも全ては人なの。ヴァランティーヌ教国、いえ、ヴァランティーヌ教団のトップに居座る連中がどんな生活をしているのか、白日の下に暴き出してみたいものだわ。


 「何を言ってるのか理解に苦しむわ。加護が無ければ聖女達はどうやって光の魔法を行使するというの。」

 「お嬢様、問答をする場ではございません。お客様をお迎えしましょう。

 ヴィヴィさんでしたかな。ありがとうございます。落ち着きました。わたくし、クレマンソー侯爵家王都邸にて家令を務めさせていただいておりますセレスタン・ラヴィルニーと申します。まずは屋敷へどうぞ。」


 ゼーゼーと死にそうになってたおじいちゃんが復活したわ。


 「皆さん、馬車は私が動かします。ええっと、あなたは?」

 「テオです。」

 「テオさんですか、後ろの荷台に移動してください。私が御者を務めます。

 お嬢様も御者台におかけになってください。」


 おじいちゃんの御者でお屋敷の玄関前まで移動、玄関前がロータリーになっていて馬車が回れる様になってるのね。

 馬車が玄関に近づけば、お抱えの兵士さん達がワラワラと出てくる。

 玄関前に止めた馬車からおじいちゃんが兵士さんに指示をする。


 「おまえ達、お客様の馬車を厩へ回してください。馬に水を与えるのを忘れない様に。

 では、皆さん。馬車をお降りになってください。ご案内いたします。」


 案内された部屋は豪華な・・・ 豪華すぎる・・・ 応接間? ですよね。

 ふかふかのソファに座るように勧められて、私達4人とお嬢様が対面に座る事になった。おじいちゃんはお嬢様の後ろで直立不動なんだけど、おかしいでしょ。若者が座ってお年寄りを立たせておくなんてっ。お年寄りには椅子を勧めるべきだと思うんですけど。

 でも指摘はしないわ。わしゃ年寄りじゃ無いっ、て怒られても困るし。


 「『風鈴火山』の皆様には大変お世話になったと、お嬢様より聞き及んでおります。心

よりお礼申し上げます。」

 「セレスタン、そんな堅苦しい挨拶をいつまでもしていないで。私は『風鈴火山』に指名依頼を出してるのよ。ここを尋ねてくれたのは依頼を請けていただけるという事なの。依頼内容の確認をしていただきたいわ。」

 「お嬢様、その指名依頼はアリステイド様のお名前で出されています。アリステイド様のいない間にお嬢様が話を進められるものではありません。」

 「お爺さまはいつ帰ってこられるのかしら。」

 「お客様ご来訪の一報はしましたが、ご公務中でございます。夕方ぐらいになると思われます。」


 ええー、何のために私達ここに座ってるのよ。手紙だけ置いて帰った方がよかったんじゃ無いの。


 「侯爵様のお帰りが遅くなるようでしたら、私共も宿を決めてこねばなりません。出直して参ります。」


 とてもいいタイミングでテオが進言。出直しましょう。こんなところでずっと待ってるのは無駄な時間だわ。


 「お待ちください。そろそろ昼食の時間になります。昼食をご用意いたしますので、お嬢様とご一緒にいかがですか。」

 「そうよ、ヴィヴィ、昼食をご一緒しましょう。わたくしはもっとヴィヴィとお話したいわ。」


 お嬢様と昼食をご一緒する事になったけど、食べたら帰るわよ。他にやる事もないし。

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