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61.ハンターギルド王都東支部

 朝、宿を出た私達は、ベルトランさんを訪ね馬車を受け取った。馬はライオネット伯爵領からずっと一緒に旅をしてきた2頭。

 その馬車に私達と『魂の絆』の面々が乗る。

 行き先は同じなんだから、一緒に乗っていきましょうということになった。馬車で移動してもハンターギルドまでは半日かかるらしいし。王都、広すぎよっ。


 「ここまでの旅ではずいぶんと『風鈴火山』に世話になった。改めて礼を言うよ。ありがとう。」

 「ちょっとジャックさん、突然改まって何ですか。」

 「ヴィヴィ、ずっと一緒にいる訳じゃないんだ。礼を言う機会は今ぐらいしかないだろう。私からも、ありがとう。」

 「ありがとう。」


 ダダン姐さんだけじゃなく寡黙であまりしゃべらなかったアルバンさんまでお礼を言ってるんですけど。


 「あら、それなら私達だって『魂の絆』には助けられてるわ。私達だって感謝しているのよ。」


 ニコまで感謝してるとか。何を言い出したのよ。


 「こんなところでお互いに感謝したり、今生の別れみたいじゃない。」

 「いや、そんなつもりはないぞ。ヴィヴィにはまた会いたいしな。」

 「私だってダダン姐さんに会いたいわよっ。」

 「私達は魔の森へ向かうし、めったに会うことはなくなるんだ。今のうちに礼ぐらいは言わせてくれ。」

 「う、うん・・・ 私も・・・・・ ありがとう・・・・・」

 「そんなにしょぼくれてどうするんだ、ヴィヴィ。また会えるさ。気を落とすな。」


 そうよね、私達が王都にいれば、ダダン姐さんもたまには魔の森から帰ってくるわね。え、だけどガエル村も行かなきゃいけないし、王都だけにいる訳じゃないのよ。会える会えないは運任せね。


 ガラガラと進んでいた馬車が止まり、テオが誰かと話してる。馬車置き場はどこだ、とか。

 着いたのね。ハンターギルド王都東支部。

 馬車がまた動き出して建物の裏に回っていく。裏口の近くにあった馬車置き場に馬車を止めて、歩いてハンターギルドの入り口に向かう。

 大きな建物だわ。さすが王都。

 とりあえず何か驚くことがあれば、さすが王都、と言っとけば間違いないわね。

 扉を見つけて中に入れば、だだっ広いホール、その奥に受付カウンター、受付嬢は二人?

 10人ぐらい横並びできそうなカウンターに二人って・・・ っていうか、並んでる人が数えるほどしかいないんだけどね。

 今は賑わう時間じゃないのね。お昼時だし。

 右手側がテーブルが並べられて、食堂になってる。そっちはたくさんの人が座って食事をしてる。


 「ちょうど昼時だ。俺たちも食事にするか。」


 ジャックさんに賛成一票よっ。


 皆で食事をしながら、今後の予定を話し合う。


 「私達はまずギルド宛ての手紙を渡さなければいけない。ハンターの登録がルクエール支部所属になっているのを、王都支部の所属に変更してもらうんだが、ジャック達は所属の変更はするのか。」

 「俺たちはそのつもりで来てないな。ま、気が向いたら所属変更も考えるか。」

 「そうなのね、それで問題はないのね。ルクエールのギルドマスターは私達のルクエールでの情報を勝手に手紙にしたためてたわよ。」

 「そうか、俺たちもモーリスに書類を書いてもらえばよかったのか。」

 「いや、私達が移籍するなんて言ったら、モーリスが激怒するだろ。」

 「激怒する前に、ギルマスやめて俺たちに付いてこようとしそうだぞ。」

 「うん、ありそうだ。」


 モーリスさん? ああ、『魂の絆』の元メンバーだった人か。そうね、オオカミ討伐の時に復帰したいみたいな事、言ってたような・・・


 さて、受付窓口が混み合う前に受付のお姉さんにご挨拶しときましょうか。

 受付カウンターには数人が待っている程度だったから、すぐに私達の順番が回ってきた。


 「こんにちは、ハンターギルド王都東支部へようこそ。初めての方達ですね。本日はどういったご用件でしょうか。」


 こういった場所で口火を切るのはテオよね。だって私の身長じゃカウンターに頭さえも出ないんだもん。


 「我々はルクエールから来たハンターパーティー『風鈴火山』だ。」

 「『風鈴火山』さん・・・ですか。何か依頼があったような・・・確認しておきます。」


 それってクレマンソー家のお嬢様じゃないの? もう依頼を出しに来たって事かしら。そんなに急がなくてもいいのに。


 「他にご用件は。」

 「王都支部への移籍の予定で、ルクエール支部のギルドマスターからの手紙を持ってきたのだが、受け付けてほしい。」

 「確認させていただいてよろしいですか。」


 テオが渡した手紙を受け取った受付嬢が、宛名と差出人を確認して、封を開けずに後ろで事務仕事をしていた男性に渡す。


 「ルクエールからの手紙、来てましたよね。確認お願いします。

 直送された手紙と内容が一致すれば、受理できます。しばらくお待ちください。」


 なに、メンドくさい。2通の同じ手紙を出して照らし合わせるとか。途中で書き込んだり付け足したりする奴がいるって事なのかしら。


 「もう一通手紙があるのだがいいだろうか。」

 「いいですよ。どなた宛てですか。」


 その手紙を受け取った受付嬢が、宛名を確認して、おや? と表情が変わる。差出人を確認して、ああ、と納得の顔。

 今度は後ろの事務系女性に手紙を渡す。


 「ギルマス宛ての手紙で~す。」


 ムーレヴリエ子爵様の手紙だったけど、さすがに差出人の名前を大きな声でしゃべらないのね。

 手紙を受け取った女性が即座に立ち上がって早足で奥に行っちゃった。え、手紙の受取証みたいのは無いのね。

 あれ? 私達が長くかかりそうだと思ったのか、ジャックさん達が隣の窓口で手続きを始めた。隣がちょうどあいたみたいね。じゃあ、私達が手間取っても大丈夫ね。


 「他には何かありますか。」

 「依頼完了伝票があるんだが、これを頼む。」


 受け取った伝票を確認して、受付嬢が話しかけてくる。


 「ブランシュ商会の商隊の護衛ですか。報酬は150万ゴルビーとなっておりますがお間違いないでしょうか。」

 「ああ、間違いない。」

 「ではご用意させていただきます。お待ちいただく間、こちらの受取証にサインをお願いします。あ、ちなみにサインはパーティーリーダーにお願いしてますが、あなたがリーダーでお間違えないでしょうか。」

 「いや、私ではない。」

 「こちらのお嬢さんは違いますよね。そちらの女性ですか。」


 ソフィは見えてるけど、カウンターから頭さえも出ていない私は確認もされてなかったのね。

 テオに脇の下に手を入れられひょいと持ち上げられる。


 「『風鈴火山』のリーダーだ。」

 「え、ええ―――っ。ちょっと、子供ですよ・・・・・  いえ・・・ルクエールでは認められていたんですよね。

 あなた、ハンター証を出して。」


 テオに持ち上げられたまま、首に掛けてある鎖を引っ張り上げ金属タグをを提示する。


 「ヴィヴィさんですか。確かに『風鈴火山』代表者になってますね。分かりました。認めます。ヴィヴィさん、書けますか?」

 「それは失礼だわ。ちゃんと文字の読み書きは教わってるわ。」

 「じゃ、サインをお願いします。金貨を用意して参ります。」


 サインをしてる間に、受付嬢が15枚の金貨を持ってきた。仕事が早いわ。


 「ご確認ください。」

 「確かに150万ゴルビー、受け取った。」

 「受取証のサインは・・・ ヴィヴィさん・・・ 大丈夫ですね。『風鈴火山』さん、ありがとうございました。」


 私達がお金をもらってありがとう、なのにお礼を言われるって?


 「ヴィヴィさん、お礼を言われて不思議そうですけど、依頼主とハンター、その間に仲介するギルドには手数料が入りますからね、だからありがとうなんですよ。ただ、手数料惜しさに、ギルドを通さない依頼を請けると、トラブルが起こったときの対処はギルドではできませんので、気をつけてくださいね。」


 受付嬢の後ろに事務の男性が立って、テオが預けた手紙を渡してきた。


 「ルクエール支部からの手紙は問題は無い。タグ預かって作り直しといて。」

 「は~い。

 では『風鈴火山』さん。書類は問題なしです。ハンター証を作り直しますので全員分出してください。」


 ハンター証を出していたら、ダダン姐さん達が来た。手続きは終わったみたい。


 「ヴィヴィはまだ終わりそうも無いな。」

 「うん、ハンター証の作り直しよ。」

 「そうか、名残惜しいがここでお別れだ。魔の森へ向かう乗り合い馬車が、東の街門から朝早くに出発すると言うから、街門近くの宿をとることにした。」

 「待って、最後にもう一日一緒に泊まって女子トークできると思ってたのにっ。」

 「いや、女子トークが何なのか分からんが、私が言いたいのは、これはさようならじゃ無い。必ず再開しよう。」

 「うん、すぐにCランクに上がって魔の森で再開ねっ!!」

 「いやっ、そうじゃないだろう。ヴィヴィは魔物を引き寄せるんだぞ。私がここに会いに来る。」


 「あの・・・ よろしいでしょうか。」


 後ろから声がかかる。その隙にダダン姐さんが『いいか、王都にいるんだぞ。』と言いながらギルドを出て行っちゃった。もっと話したかったのに。

 あ、そうそう、話しかけてきたギルド職員、何の用だったの?

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