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56.悪魔なのっ!! 聖女なのっ!!

 揺さぶられてるの? ヴィヴィ、ヴィヴィ・・・ この呼びかけは? ニコ・・・

 え~と・・・ 何かあったような・・・ ああ、そう。教団関係者の仲間が来たら起こして、って言ったんだっけ。

 無理矢理目を開くけど、頭の中がボーッとしたまま覚醒してくれない。目が開いたのを確認したようにニコに上半身を起こされ手を離されたら? 倒れないようにバランスとって覚醒するしかないじゃないっ。

 立たされたその横にはすやすやと静かに眠るソフィ。


 「ニコ、ソフィは起こさないであげて。」

 「ええ、分かってるわ。」


 人が気持ちよく健康的な睡眠をむさぼっていたのに~。許さないわよ、ヴァランティーヌ教団め~。


 防御結界まで来てみれば、またもや外と中での手も足も出せない、究極の平和的話し合いが行われている最中だわ。


 「てめえら、この二人を解放しろっ!!」

 「聖女どころか竜巻娘もいるそうじゃないかっ。」

 「さっさとここに連れてこいっ。」


 ワイワイと外が騒がしいわね・・・ ん~?  14人? こ、この連中、馬鹿じゃないの。残ってた全員で来ちゃってるじゃない。少ない人数で様子を見に来たり、とか考えないのかしら。

 それとも、全員でこれば人数に物を言わせて威圧できるとか思ってないでしょうね。

 捕縛されて転がってる教団員までが騒ぎ出した。


 「こ、こいつだっ。こいつが竜巻娘だっ!!」

 「は? 何言ってんだ。おまえは。このガキは男だろ。」


 ボッコ――――――――ン「ぎゃ――――――――――っ」


 光の【巨大ゲンコツ】魔法とでも名付けようかしら。

 巨大ゲンコツに殴り飛ばされた14人が吹き飛び地面をゴロゴロ転がっていく。な、なんか、手足が向いてはいけない方を向いてるのがちらほら確認できるけど、大丈夫かしら。


 光の投網で14人を残らず回収して、防御結界までズルズルと地面の上を引っ張ってくる。

 先に捕まってた二人が震えながらも口走る。


 「あ、あ、悪魔めっ!!」

 「ヴァランティーヌ様が降臨なされて、必ず貴様を滅するぞ。」


 相手にするのも面倒だし、二人は放置のまま回収した14人に【治癒】を発動する。


 「なっ、まさかっ・・・ 聖女様?」


 「悪魔なのっ!! 聖女なのっ!!」


 「も、申し訳ありませんっ。光魔法【治癒】はヴァランティーヌ様の加護を受けた者でなければ扱えません。あなたは聖女様です。是非とも教国の大神殿へお越しください。」

 「あなたたちは教団からの命令を受けて、私達を探し出して連れ去ろうとしている訳よね。そこに私達の意思は介在するのかしら。」

 「介在とは・・・ まさか行きたくないなどとおっしゃるのですか。誰もが憧れるヴァランティーヌ大神殿ですよ。」

 「え、だってあちこちから子供をさらってきては、教団で洗脳してあなたたちみたいな狂信者を作り上げてるんじゃないの。」

 「そ、そんな事は・・・」

 「無いとはいえないわね。あなた達もさらわれてきて洗脳された口じゃないかしら。そして洗脳度合いが狂信的なレベルまでいけば、教団からの命令が出てさらう側になるのよ。」

 「そんなはずはないっ!!」


 盲信、狂信、これが解けない限りは何を言っても『犬に論語』『牛に経文』『馬の耳に大念仏』ね・・・・・ ん? 大念仏って何? なんか違ってない?


 狂信者のさっきまでの勢いはなりを潜めたのをいい事に、静かになった場で暖かい光が揺らめき【治癒】はすすむ。

 もう大丈夫そうだわ。【治癒】をやめてお嬢様の護衛達を振り返る。


 「この先にこの者達が乗ってきたと思われる馬車が放置されてます。このままにすると馬が魔物に襲われるかもしれません。取りに行ってきましょうか。」

 「それなら我々が行ってくる。君は休んでいなさい。」

 「真っ暗な夜道ですよ。私が同行しないと危険でしょう。」

 「たいまつがあれば大丈夫だろう。」

 「馬がたいまつの明かりだけで大丈夫ですか。」

 「む、それもそうか、しょうがない、お願いしよう。」

 「待て、ヴィヴィが行くなら私も行くぞ。」


 ダダン姐さんがついてこようとしたけど、テオにとめられる。


 「いや、私が行こう。ヴィヴィがいない間結界が消える。ダダンはここの防衛を頼む。」

 「そうか、テオがついて行くなら安心だな。」



 私は暗い夜道を照らし出す光球を、前方の空中に浮かべる。明るさは私のイメージ次第。


 「これはまた、明るい【ライトボール】だな。一体どれだけの魔法を使えるんだ。」


 あら、【ライトボール】なんて名前があったのね。じゃあこれからはそう呼びましょう。

 じゃあ、行きましょうか。私達が歩けば同じ分だけ【ライトボール】は先に進んでくれる。っていうより進んでいく光球のその後をついて行ってるような感じだけど。


 街道脇の岩場が見えてきたわ。大きな岩がある裏側に馬車と馬がとめられてる。馬車は人員輸送用の乗り合い馬車みたいなものだと思ってたら、普通に荷物搬送用の幌馬車だわ。これって、もしかしたら私達がもらえたりとか・・・ あってもいいんじゃない?

 馬も馬車も無事ね。私達が近づいても暴れたりしないおとなしいお馬さんね。

 馬車に乗り込み野営地に戻る。馬の前方には、ひときわ明るく輝く光球。お馬さんも何の心配もなしに進んでくれる。

 野営地へ戻って馬車をとめたら、もう一度【ナンチャラマンバリア】発動。

 拘束した16人もちゃんとバリアの内側に回収しておいたわ。寝静まってるときに魔物に襲われるのもかわいそうだし。


 ようやく寝れるわね。ソフィが寝ているはずの場所まで戻ってきたら、まだぐっすり寝ていたわ。これなら私が寝坊したって、ソフィが結界の解除をしてくれるわね。



 案の定、起きられなかった。というよりも誰も起こそうとしなかったのね。ガラガラと揺られて目を覚ました。しかも、とってもおなかが減ってるわ。夜中に動き回ったおかげで空腹がピークに達してる。


 「ヴィヴィ、起きたのね。おなかすいてるみたいだけど、ごめんなさい、パンしかないの。」

 「大丈夫よ。パンだけでも空腹は満たせるわ。」


 背負い袋を探ってカップを取り出す。魔法でカップに水を注いで、とっても固いパンを水でふやかしながら口に含んで飲み込む。

 お世辞にも美味しいとはいえない、はっきり言えばまずい。それを無理矢理飲み込んで食欲を満たす。


 「ごめんなさい、夜中にヴィヴィ達が教団関係者を捕らえていたのに、気がつかなくて眠りこけていたわ。」

 「私がソフィを起こさないようにお願いしたのよ。きっと私が朝起きられないと思ったから。」

 「でも、」

 「ソフィは私の代わりに結界の解除をやってくれたんでしょ。だからソフィのごめんなさいは間違ってるわ。正解は私からの『ありがとう』よ。」

 「・・・・・うん、私も、ありがとう。」


 「ヴィヴィはあの捕らえられた人達がどうなるのか聞いてる?」

 「王都へ連行するって言ってたわ。どこへ連れて行かれるかは聞いてないんだけど。」

 「ニコさんに聞いたんだけど、あの人達って誘拐されてきた子供かもって、本当なの。」

 「その可能性は高いと思うわ。こんな仕事に回されるぐらいだものね。捕まって殺されてもいいような人間を送り込んだんでしょうね。」

 「ひどい、ねえ、あの人達がかわいそうよ。ひどい事されないようにはできないの。」

 「連行する騎兵さんにはお願いできるけど、引き渡された先の王宮とか貴族家には無理よね。」

 「・・・・・そうなのね。」


 貴族家からみたら平民の命は軽そうだし、悪ければ裁判もなしに切り捨てられるか、生き延びても犯罪奴隷で強制労働かな~。それを助けてあげられる力は私には無いし。

 それでもどこへ連行されるのか、あとで聞いておきましょう。


 お昼休憩で止まった場所で、スープを作り始めたら、来ましたよ。


 「お嬢様、私がいただいてきますので、馬車でお待ちください。」

 「わたくしはヴィヴィと一緒にお食事をしたいの。ロメーヌは戻りなさい。」

 「しかし、お嬢様のおそばに誰もいないのは困ります。」


 そう、貴族家のお嬢様なんだから、誰もいないわけにはいかない、といって後ろにぞろぞろと全員が付いてくるとか・・・ ありなの?

 あ、騎兵さんは全員じゃないのね。捕縛者が逃げちゃいけないし見張りは必要よね。


 「やっぱり、美味しそうな匂いがしますわ。わたくしにもいただけるかしら。」

 「あ~、大丈夫ですよ。余分には作っておきましたから。どうぞ。」

 「まあうれしい、ありがとう、ヴィヴィ。」

 「お嬢様っ、いけませんっ。私が一口毒味を、・・・・・ 大変美味しゅうございます。お嬢様、どうぞお召し上がりください。」


 作ってる人の目の前で毒味とか、結構失礼だけど、貴族家だし、そんな事もありなのね。

 立ったままのお嬢様と侍女に土魔法で椅子を出してあげる。地面からせり上がってくる椅子にびっくりしてたけど、何か言われる事もなかった。

 騎兵さん達は地べたに座りなさい。商人さんもハンター達もみんな地面に腰を据えてるんだから。

 私も騎兵さんの近くの地面に腰を据えて食事にしながら、今が教団関係者の連行先を聞き出すチャンスよ。


 「あの捕縛した者達の連行先って王宮なんですか。」

 「いや、王宮ではない。教団と手を組んでいる疑いのある貴族もいるのだ。王宮に連行したら証拠隠滅のために抹殺されかねない。」


 あ、それって旅に出る前にムーレヴリエ子爵様が言ってた話だわ。って抹殺だなんて、死人に口なしを実行しそうな悪徳貴族がいるのね。


 「そうすると、どちらかの貴族様のお屋敷に運ばれるんですか。」

 「それは、」

 「あら、それなら多分お爺さまのところですわ。」

 「お嬢様っ!! そ、それは秘密なのです。

 すまんっ、今聞いた事は絶対に口外しないでくれ。」


 ベルトランさん達はちょっと離れたところにいたからしゃべってる内容は聞かれていないわね。私達の周りで聞こえてたのは『風鈴火山』と『魂の絆』だけ。吹聴して回る人達じゃないし、黙っていて、と言えば誰もしゃべらないでしょう。

 お嬢様がショボーンとしちゃってるわ。


 「ごめんなさい。」

 「いえ、口から出てしまった事はもうしょうがないです。彼らが秘密にしてくれる事を祈りましょう。」


 お嬢様の手を取って言い聞かせる。


 「大丈夫、私達は誰も口外はいたしません。」

 「ありがとう、ヴィヴィ。」

 「ただ、捕縛された人達も被害者だと思うんです。どこかからさらわれてきた子供が洗脳されたと思うんです。だから、あまりひどい扱いをしないようにお願いします。」

 「そうね、お爺さまには伝えておくわ。」


 私の意向は伝えたわ。後はクレマンソー家のお爺さま次第って事ね。これ以上は私には何もできないしね。

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