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46.【周辺警戒】魔法みたいな?

 3パーティー+ギルドマスターの合同討伐作戦会議が始まったけど、夜になって睡魔が襲ってきて・・・・・



 あれ? ベッドの上? ここどこだっけ、宿に泊まったかしら・・・・・ ああ、そうだ。ベルトランさんのお店の2階だったわね。

 昨日はどうしたんだっけ。作戦会議をしたような、してないような・・・・・ 思い出せないわ。

 ニコとソフィが入ってきた。やっぱり私がいちばんお寝坊さんなのね。


 「ヴィヴィ、おはよう。食事の用意ができてるけど、眠いようならもう少し寝ていてもいいのよ。」


 え? 私が寝てる間に討伐に出ようなんて思ってないでしょうね。ふと目が覚めたらソフィと私だけがここに残されていたとか・・・ 笑えない冗談よね。


 「だって、討伐に行くんでしょ。早く準備しなきゃ。」

 「それは、昼にギルド集合になったわ。それまではのんびりしましょう。だから出かける前には起こしてあげるから寝ていてもいいわよ。」

 「それなら、朝食の後に横になるわ。」



 食事をしながらニコが説明してくれた。

 オオカミは夕方から夜にかけて狩りをする。だから日の高いうちは森の奥に潜んでいて出てこないんだって。

 そういえば、フロランタン様の村に向かってるときにオオカミに襲われたのも夜遅くだったわね。そういう習性なのかしら。

 森の奥深くまでオオカミの群れを探しに入るのは危険だから、奥までは踏み込まずに浅いところで迎え撃とうということらしいけど、そんな簡単に私達のところへ来てくれるのかしら。


 「以前にハンター達が襲われた野営地で迎え撃つ事になったわ。」

 「都合よく襲ってくるものなの?」

 「オオカミは鼻が利くから生肉の匂いでおびき寄せるって言ってたけど、来るかどうかはわからないらしいわ。」

 「それじゃあ、何日もそこで野営しなきゃいけないじゃない。」

 「3日間よ、3日間の野営でオオカミが現れなかったら撤収ね。そしたら、もっと大がかりな討伐隊を組織して森の深くへ踏み込む事になるだろう、って決まったの。」


 3日間か~、それで現れなかったらその後の大規模討伐隊には参加できないかもしれないわね。ベルトランさんの商隊の出発準備もあるし。

 でも、オオカミの群れに襲われる危険があるのにベルトランさんは商隊を出発させるのかな。

 まあ、それも私達のこの3日間が勝負どころよね。



 充分に体を休ませて早めの昼食を摂ったら、『ホークアイ』と一緒に集合場所に出かける。



 ハンターギルドの前まで行けば馬車が2台止まっていて、ギルドマスターと『魂の絆』がお待ちかねのご様子?

 これって、待たせちゃったのかしら。テオが駆け寄って挨拶してる。


 「お待たせしました。」

 「いや、約束通りの刻限だ。問題はない。」


 ギルドマスターの指示で何かを馬車に積み込んでるけど、野営のための物資なのかな。


 「馬車なんかで行ってオオカミに襲われたら大丈夫なんですか。馬が狙われますよ。」

 「俺たちの移動と物資運搬だけだ。俺たちを下ろしたら馬車は町へ帰る。」


 『魂の絆』の他にも昨日はいなかったパーティーが加わってる。討伐のメンバーを増やしたのかな。


 「パーティーを増やしたんですね。」

 「ん? ああ、こいつらか。馬車を返すからな、馬車の護衛がほしいだろ。馬車と一緒に帰るんだ。」


 そういうことね。御者さんは一般人だろうし、って御者もハンターみたい。帯剣してるし。


 馬車にガラガラと揺られて森の外縁部まで運ばれてきた。


 「じゃあ、ギルマス、俺たち帰ります。」

 「ああ、ご苦労。明日の朝も頼むぞ。」


 「3日後じゃないんですか。」

 「今晩中に討伐完了したら、獲物担いで帰らなきゃいけないだろ。だから毎朝馬車で来させるんだ。それ以外にも、俺たちが全滅の可能性だってある。その連絡係も担ってるって訳だ。」


 そんなこと言うと、その厄を呼び込みやすいって誰か言ってなかったっけ?


 「縁起でも無いこと言わないでくださいっ。絶対に私がそうさせないんだから。全員無傷で帰るわよ。」

 「頼もしいな、ヴィヴィ、よろしく頼むぞ。」


 ここからは物資を担いで目的の野営地まで徒歩で行かなきゃならないらしいけど、そんなに遠くはないと言ってた。

 森の中を歩いていると・・・・・ なんだか私達を追ってきている感じの気配?

 こんな時に何か探る魔法って無いのかしら。


 う~~ん・・・・・ 探知魔法?  どうやって?


 ・・・・・マナ・・・・・ 私の感覚をマナに乗せて・・・感覚を  外へ外へ 広げる感じ


 あ・・・ できたっぽい? 私達の後方を歩く・・・ 2頭の獣


 まさか、オオカミの群れがもう近くに迫っているとでも言うのっ。

 そこからさらに感覚を広げてみたけど、その2頭以外は近くにはいそうもないわ。

 そうすると斥候? もしそうだとしたら、このオオカミのボスは知能が高い可能性があるわ。すでに私達が森に入ったことを知っているってことね。


 「どうしました? ヴィヴィ。」

 「え? あ、ごめんなさい。」


 ニコに声をかけられて、立ち止まってた事に気がついた。


 「先に行って、ニコ。」


 後ろを歩くダダン姐さんのもとまで駆けていく。


 「どうした、ヴィヴィ。」

 「落ち着いて聞いて。後ろからオオカミがつけてきてる。」

 「何だとっ、どこだっ。」


 ダダン姐さんが慌てて振り返れば、オオカミがスッと後退していく。うっわー、このオオカミ、賢すぎじゃない?


 「騒がないで、逃げられるわ。2頭だけしかいないから偵察に来ているだけみたい。」


 「どうした、何があった?」


 全員が集まってきた。

 2頭のうち1頭だけでも仕留めたいわね。距離があるから風や水の刃では避けられそうね。炎弾なんかは森の中で放ったら火事になっちゃうし。ここは光一択ね。光のスピードって1秒間に30万kmも進むのよ。光に貫かれたことも気づかないかもしれないわね。


 「一体ヴィヴィは何をやり出したんだ。」

 「後方にオオカミが2頭ほど来ているらしい。」

 「何? よし、俺が行ってくる。」

 「モーリス、よせ。ここはヴィヴィに任せろ。」


 そんな中で私は1頭に狙いを定めて光り輝く槍を形成。一瞬の輝く光の軌跡が残像として目に残る。

 ギャウン、というオオカミの悲鳴であろうと思われる声が遠くから聞こえた。


 「当たったわ。誰かとどめをお願い。」

 「では、私が、」


 テオがすぐさま走り出す後ろを、ギルドマスターが追いかけてった。


 「待て、俺も行く。」


 ダダン姐さんが私にぴったりついて周囲を警戒してるもんだから、ニコはソフィを護るようにしてる。他のメンバーは散開して警戒に当たってるんだけど、周りにいるのは虫ぐらいしかいないわよ。もう1頭のオオカミは逃げていっちゃったし。


 「警戒はもう必要ないわ。周辺には危険な獣はいないみたいだし。テオ達が帰ってくるのをまちましょう。」

 「なぜ、ヴィヴィにそんなことがわかるんだ。」

 「え~と、魔法? 【周辺警戒】魔法みたいな?」

 「そんな魔法、聞いたこともないぞ。」

 「ちょっとやってみた的な魔法よ。」

 「それって、私にもできるかな?」

 「ソフィにも絶対できるわ。あとで教えてあげる。」


 テオとギルドマスターが戻ってきた。オオカミはギルドマスターが担いでいる。大型犬ぐらいの大きさの・・・ オオカミよね。


 「確かにオオカミだった。2頭いるって言ってたが、この1頭しか倒れていなかったぞ。」

 「そりゃあ、ケガしてなかったらさっさと逃げるでしょ。」

 「逃がしたのかっ。仲間を連れて報復に・・・・・ ああ、そうか、わざと逃がしたって事か。」

 「そうよ。来るか来ないかわからないものを待っているより、報復でもいいから群れが全部襲ってきてくれた方が討伐作戦も早く終わるでしょ。明日の朝までには終わるんじゃない?」

 「群れが全部襲ってきても討伐できる自信はあるのか。」

 「自信が無きゃこんなところに来てないわ。」

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