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43.関係なくない?

 はっ、と目が覚めベッドに寝かされていることに気がついた。

 そうだわ、お風呂、旅の間のお風呂に入れる貴重なチャンスを逃してしまったわ。食事の前に入っておけばよかった~。疲れのあまり寝てしまって、後の祭りだわ。

 これでまた何日か馬車に揺られてる間は、お風呂に入る機会がないのね。

 またどこかの川で水浴びとかできるかしら。


 「おはよう、ヴィヴィ、寝るのが早かったから今朝はとっても早起きね。」


 隣で寝ていたソフィを起こしちゃったみたい。


 「ごめんなさい、起こしちゃったわね。」

 「いいのよ。もう、起きなきゃいけない刻限だし。」


 そういえば、まだ薄暗いけど、廊下からは何人かの人が歩く音が聞こえてる。ベルトランさん達がもう出発の準備を始めてるんだわ。

 ニコも起きて身支度を始めたし、私も急がなきゃ。


 「ソフィ、昨日はごめんなさい。寝てしまった私を運んでくれたのよね。」

 「私はあまり役には立たなかったわ。ほとんどニコさん任せだったし。」

 「あらそんなことはないわ。椅子から崩れ落ちるヴィヴィを支えたのはソフィよ。お礼を言っておきなさい。」

 「ありがとう、ソフィ。ケガをせずにすんだみたい。」

 「でも、お風呂に入れたのはニコさんのおかげよ。私じゃできなかったわ。」


 えーっ、意識がないままお風呂に入れられちゃったんですか。恥ずかし~・・・

 とたんに顔が赤く染まるのが自分でもわかる。


 「そんなに恥ずかしがらなくても、ヴィヴィが赤ちゃんの時から私が入れてるんですよ。」


 え? そういえばそうだったわ。物心つく前からニコとはずっと一緒だったし、お風呂にも入れられてたわね。

 ありがとう、ニコ。


 テオがドアの外から呼びかけてくる。


 「ニコ、ヴィヴィの準備はできたのか?」

 「ええ、着替えもすんでるし入ってくれていいわ。」


 ドアを開け入ってきたテオ。


 「朝食を摂ったら出発だ。急いでくれ。荷物があるなら私が運ぼう。」


 そんなたいした荷物があるわけじゃない私のところへ来てテオが言う。


 「こちらがヴィヴィの背負い袋ですね。こちらはソフィか。この二つはベルトランさんの馬車に一緒に積んでおきます。

 ニコのバッグは? これか。」

 「あ、テオ、私のは自分で運びます。」

 「そうか、じゃあ、早く食事を済ませてくれ。」


 テオが私とソフィの荷物を持って出ていったけど、もう食事は済んだのかしら。早いわね。私たちも急がなきゃ。



 食事を済ませて~ 歯もみがいたし~ おトイレもすませたし~ 後は身だしなみね。3人でお互いの服装をチェック。うん、大丈夫よ。後は私のニット帽とサングラスよ。オールクリアね。外へ出ても大丈夫。

 外へ出れば、御者さん達が馬車に馬をつないでいるところだった。よかった、私達が出てくるのを待ち構えているかも、なんて思ってドキドキしちゃったわ。


 「あぁ、皆さん、おはようございます。また馬車での生活になりますがよろしくお願いします。」

 「大丈夫です。馬車生活は慣れてます。」


 そうよね、お父様やお母様の元を離れてからず~っと、馬車や荷車に揺られてきたんだもの。こんなにゆったりした馬車の旅なんて楽勝よ。


 そうだ、マルテ村を離れる前にフェリシーちゃんにご挨拶をしておきたかったわ。夕べは意識を失うように寝てしまったから、あまりおはなしができなかったし。でも、フェリシーちゃんはまだ寝てるんでしょうね。王都で会えることを祈って旅立ちましょう。

 と思っていました。

 馬車に乗り込もうとしたそのとき、お屋敷から走り出てきたのは・・・ フェリシーちゃん、その後ろにフロランタン様とジェロームも。


 「ヴィヴィ先生、約束ですっ。必ず王都のハンターギルドへヴィヴィ先生に会いに行きます。」


 私の元まで小走りに駆けてきたフェリシーちゃんをぎゅっとハグして告げる。


 「うん、私も必ず会いに行くわ。王都で待ってる。」

 「ヴィヴィ先生、もしハンターギルドで会えなくても伝言を残しておく。我々はラザール様の王都邸にごやっかいになっているからな、ムーレヴリエ子爵邸を訪ねてくれ。」


 再会の約束と別れの挨拶をすませ、馬車は出発した。再会の約束って、おもにフェリシーちゃんによ。フロランタン様やジェロームに会いたいわけじゃないし。でも、フェリシーちゃんに会いに行けばその二人にも会わなきゃいけないのが悩ましいとこね。


 次の町を目指して馬車は進む。御者席のベルトランさんの横へ座って、次の町の情報収集よ。。


 「そうですね~。次の町はモンタランベール伯爵が治めるエクトルという町です。馬車で4日かかります。その間に二つの村がありますが、今日は野宿になります。あ、村に寄ったからと言って宿があるわけではないですから、村で野宿ですけど。」


 え――っ!! の・・・ 野宿なんですか。ま、まあ、魔物に襲われるような街道沿いで野宿することに比べれば安心できるのかもしれないけど、でもね~、村人の視線にさらされて毛布にくるまって寝るとか・・・・・ ありえないわっ!!


 まあそんな事はおいといて、モンタランベール伯爵領は穀倉地帯が多いらしく、エクトルの回りには大小様々な農村があるらしい。大きな農村なら宿があるみたいだけど、ムーレヴリエ男爵領からエクトルに向かう街道には寂れた農村しかないみたい。ムーレヴリエ子爵領からエクトルに向かうんなら大きな村を経由していけるらしいけど。

 ムーレヴリエ男爵領、どんだけイナカなのよっ!!



 三日間の野宿の末にたどり着いたエクトルの町。町の大きさに驚き人の多さに驚き、アワアワしてる私にベルトランさんが告げる。


 「そろそろ夕暮れです。ブランシュ商会のエクトル支店に向かいます。そこでゆっくり休んでください。」


 お店の2階が宿泊用になっていて、いくつかの空き部屋のうち3人用の部屋を見つけてソフィとニコと私でその部屋に落ち着いた。テオはもちろん別室よね。

 そこへ『ホークアイ』と同室のはずのテオが訪ねてきた。


 「ホークアイからの食事の誘いを受けているんだが、気が進まなければ私一人で行ってくるがどうする?」

 「せっかくのお誘いだもの、私は行くわ。」


 あ、勝手に返事しちゃったけど、ソフィやニコの意見を聞いてなかったわね。

 ふたりの様子を見れば、うなずいてソフィが返事をくれた。


 「私達も行くわ。」



 ベルトランさんは運んできた荷物の片付けや、明日以降の領主様へご挨拶の準備だとかで忙しく

 ホークアイが先に立って町中を歩く。食堂を探しながら歩いてるわけではないみたいね。目的のお店があるみたい。一番後ろを歩いてたアランが教えてくれた。


 「この先にハンター御用達の店があるんだ。ボリューム満点で腹一杯食ってもスッゲー安いんだぜ。」

 「私達はそんなにたくさん食べられないわよ。美味しいものを出してくれるところがいいわ。」

 「旨いに決まってるだろ。まずかったらハンター達は来ないよ。」


 それもそうね。まずい店に人が集まる理由もないし、美味しくてボリュームがあって安い、これがハンター達で繁盛するってことね。


 「あ、そうそう、ハンター達が集まるってことは、情報とか仕入れやすいんだ。」

 「え~、情報なんてハンターギルドへ行けばいくらでも聞けるんじゃないの?」

 「う・・・ うん、まあそうだな。」


 図星をつかれたみたいにアランが言葉に詰まってる。そうよ、食堂に来てまで情報収集なんかするもんじゃないわ・・・・・  え? 食堂じゃないの?


 先を歩いていたサロモンさんが扉を開いて店内へ・・・・・ ワイワイガヤガヤと、店内の喧噪が、って、ここ酒場じゃないっ!!


 相席です、と案内された中央の大テーブル、少人数のお客さんに移動してもらって8人分の席を確保。

 私とソフィをガードするようにテオとニコが座る。そりゃそうよね、こんな酔っ払い共の巣窟へこんな小さな女の子が来たら、絡んでくださいって言ってるようなものだわ。

 ほらほら、さっそく赤ら顔の厳ついおじさんが・・・・・


 「おう、久しぶりじゃねーか。え~っと・・・」

 「ああ、久しぶりだな。ホークアイのサロモンだ。」


 なんだ、サロモンさんの知り合いでしたか。まあ、私達に絡んでこなきゃ問題は無いわね。

 アランがこそっと教えてくれる。


 「以前に一緒にハンティングに行ったことがあるジャックだよ。」


 「そうそう、サロモンだ。思い出した。今回は何だ? そんな小さな子供を連れて。」

 「人を見かけで判断するなよ。まだまだ子供だが一人前のハンターだぞ。」

 「そうか、一人前かどうかはおいといて、10歳になればハンター登録はできるからな。」


 その言葉にサロモンさんは何か言いたげだったけど、あえて反論はしないでいてくれた。ここで酔っ払いに対して反論なんかしたら、絡まれそうだしね。放置が一番よ。


 「久しぶりに会ったんだ。また俺たちと一緒に狩りに行かねえか。」

 「あ、いや、ちょっと待て。」


 これってホークアイがハンティングに誘われてるのよね。私達に気兼ねしてるのか二つ返事でうなずかずに私を振り返って問いかけてきた。

 私はテーブルに届いたステーキを切って口に運んでいるところなんですけどっ、っていうか、なんで私に聞くのよっ。テオに訪ねるのが、この場では普通じゃないのっ。


 「俺たちが勝手に出かけるのは『風鈴火山』も気分が悪いだろ。」

 「いや、我々を気にせずとも好きな依頼を請けてくれてかまわないぞ。」


 口をモゴモゴさせてる私に代わってテオが答えてくれた。

 そりゃそうよね。私達はベルトランさんが次の町へ出発するまではお休みだし、その間ハンターギルドで好きな依頼を請けてもらって構わないって言われてる。

 ホークアイに至っては護衛はこの町までの依頼だったらしいし。

 それがなんでまだホークアイがいるのかって言えば、ベルトランさんがこの町で護衛依頼を請けてくれるパーティーが見つからなかった場合の保険みたいなものね。ホークアイはルクエールに家族がいるって言ってたから、あまり遠くまで行きたくないらしいけど。


 「ああ、そうか。依頼っていうよりも合同でハンティングに行くだけなんだけどな。そうだ、ハンティングだけなんだから『風鈴火山』も一緒に行くってのはどうだ。」

 「おい、子供なんか連れてく気はねーぞ。ヤバいのが東の森にいるらしい。ギルドから緊急討伐依頼が出たんだ。いつも合同で動いてるDランクパーティーが尻込みしちまってな、『ホークアイ』と合同なら大丈夫だと思ったんだが。」


 ちょっと、ヤバいのってなに? そんな危険なのが徘徊してるわけ。ベルトランさんの出発までには討伐できてるわよね。って東? ベルトランさんは南に行くんだっけ。それなら関係なくない?

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