表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/112

39.一生先生と呼ばせてくださいっ

 翌朝、私が起きてくるのを待ち構えていたみたい。

 ベルトランさんは男爵領の他の村へ行商に行くのに、朝早くにハンター達を引き連れて出かけちゃってるし、この村に残されたのは私だけなのよね。

 朝食に食堂へ向かえば、これは偶然だと言わんばかりに一緒に食堂へ向かう4人?

 フェリシーちゃんは駆けよってきて私の手を握って一緒に歩く。で、こちらの美しい女性は? そうですか、お母様ですか。


 「妻のジョスリーヌだ。次男が生まれたばかりであまり人前には出さぬようにしていたが、フェリシーが慕っているヴィヴィ先生にどうしても会いたいと言うのでここへ同席させた。」

 「赤ちゃんが・・・ おめでとうございます。」

 「ありがとう、フロランタンの妻のジョスリーヌよ。フェリシーがヴィヴィ先生のことばかりお話しするから、どうしても会いたくなったの。」

 「あ、私はハンターパーティー『風鈴火山』のヴィヴィです。」

 「フェリシーが魔法を使えるようになったのはとっても感謝してるわ。そのお礼もしておかなきゃいけないと思って。」

 「それはっ・・・ フェリシーちゃんが可愛らしくて、妹ができたようなかんじで、とっても癒やされてるんです。お礼を言わなきゃいけないのは私ですっ。」

 「妹みたいに思ってくれるのなら嬉しいわ。フェリシーも、お姉様ができたみたいって喜んでたもの。」


 手をつないでたフェリシーちゃんがギューッと抱きついてきた。かわいいーっ。このまま連れて行っちゃいたいぐらいだわ。


 「あら、フェリシー、お父様お母様を差し置いてお姉様なのね。」

 「だって、ヴィヴィ先生は明日の朝には出て行ってしまうのでしょう? おそばにいられるのは今日しかありません。」


 もっと長く滞在したいけど・・・・・ ベルトランさんの旅の都合もあるし、ハンターとして護衛任務に就いているんだから私のわがままは通せないし、涙をのんで明日の朝にはお別れよ。


 「ヴィヴィ先生は僕の先生でもあるんだぞ。フェリシーだけがヴィヴィ先生にくっついているんじゃないっ。」

 「あらあら、ジェロームまでヴィヴィ先生なの。だからといってフェリシーみたいに抱きついちゃダメよ。」

 「なっ、何言ってるんですかっ!! 母上っ。そっ、そんな事できませんよっ。」


 顔が赤くなって裏返った声で否定するジェローム。そうよ、できるわけないじゃない。そんな事される前に投げ飛ばしてやるわ。




 食堂で朝食を頂きながら奥様から提案が、ベルトランさんが旅立っても私だけムーレヴリエ男爵家に残って子供達の先生をやってみないか、って事なんだけど。


 「ヴィヴィさん、ジェロームもフェリシーも慕っているようだし、ここに残って先生を続けてみる気はないかしら。」

 「それはだめだ。ラザール殿から王都へ向かえと、言われているそうだ。それを我が家の都合で足止めするわけにもいくまい。」

 「あら、そうでしたの。それじゃあ、無理は言えませんわね。」


 フロランタン様にたしなめられて引き下がってくれた奥様。無理を押し通す人でなくて良かったわ。


 「今年の社交シーズンにはジェロームは同伴させるつもりだったが、フェリシーも連れて行かなければならなくなったな。」

 「お父様っ、私も連れて行ってもらえるのですか。」

 「ああ、ジェロームは貴族学園への入学手続きに連れて行かなければいけなかったが、フェリシーは魔法使いとして届け出を出さねばいかんからな。」

 「魔法使いの届け出って、フェリシーちゃんの魔法が公にさらされるって事ですかっ。」

 「それはない、優秀な人材が国外に流出しないように秘匿はされている。登録された子供達は貴族学園の魔法学科に優先的に入学ができる。将来的には王宮魔法騎士団も狙えるかもしれぬ。」


 魔法騎士団はごめんこうむりたいけど、学園だなんて楽しそうで行ってみたいって気持ちはあるわね。


 「それって平民でも登録するんですか。」

 「平民に登録の義務はない。平民の魔法使いはハンターギルドが把握しているからな。」

 「それでは平民は貴族学園で学ぶ手段はないのですね。」

 「なんだ、学園に行きたかったのか。それだったらラザール殿の養子となって、あ、いや、ラザール殿の懇意にしている候爵様に話を通したほうがいいかもしれん。どうだ、ヴィヴィ、候爵様の養女になる気はあるか。」

 「それはお断りしますっ。」

 「そ、そうか、即答か。」


 そうよ、まだお父様もお母様も健在なのに、よその養子になんてなれるわけがないじゃない。お母様が悲しんでしまうわ。

 それに自由が無くなりそうだわ。断固却下よっ。




 貴族家の子供に魔法使いが現れても、その情報は学園に入学するまでは秘匿される。それならフェリシーちゃんに光のバリアを会得させてもいいのかもしれない。でもそれをおおっぴらに使われたら、誰に教わったのか出所を探られる。最終的には私にたどりつく。王宮へのお呼び出しもありますよ、って事ね。

 やっぱり、光のバリアは控えましょう。あまり人に教えるものじゃないわね。

 その代わり、水のバリアはどうかしら。何かの攻撃を受けたとき、それを水で受け止める。あるいは、水を超低温で氷にして跳ね返すとか?


 フロランタン様親子が木に括り付けた服を相手に、フンッ、フンッ、と背負い投げの打ち込み稽古に励んでいるその横でフェリシーちゃんとベンチに座ってる。


 「今日は水の結界魔法をやってみようと思うんだけど、いいかしら。」

 「はい、ヴィヴィ先生、私も水の結界ならできそうな気がします。」


 そうよね、光が防御する壁になるなんてイメージしにくいわ。見て触ってそこにあることを確認できる水を操作する、このほうが断然イメージしやすいはずよ。

 まずは水球を出現させ、それを薄くのばしてドーム状にしてみる。

 ・・・・・う~ん、なんか護られてる感じがしないんですけど。簡単に剣で切り裂かれそうだわ。

 結界と考えるよりも、前面に水を集めて盾として防御してみましょうか。

 ドーム状の水が形状変化して、私の前面に集まってくる。これをわざわざ平たくしたりするのも面倒だし、形状は水の基本形、水球よ。


 「水の結界は強度が無さそうだったから、水の盾にしてみました。盾と言っても球状なんだけど、水は球が一番自然な形なの。私に向かって石を投げてみて。」

 「えぇっ、そんな事したらヴィヴィ先生に当たっちゃいませんか?」

 「大丈夫、川や湖に石を投げ込んでも、その勢いのままに底まで到達はしないの。水って思っている以上に抵抗が大きいのよ。」


 抵抗が大きいのは分かるんだけど、流体力学がどうとか水の抵抗率の計算とか全く分かんないから、とっても抵抗が大きいのよ、で済ましておきましょう。分からない物を知ったかぶりで説明しようとすれば、その説明にきっとほころびが出て恥を掻くものよ。


 フェリシーちゃんが自分の手で持って投げれる程度の小石を拾い、えいっとばかりに水球へ向かって投げつける。

 ポチャンと水球に飛び込んだ小石は、その勢いを維持出来ず水の中で放物線を描きながら下へ向かって進路を変え、地面に向かって落ちる。


 「凄いですっ!! 盾になってますっ。」

 「ほほう、面白いことをやっているな。」


 打ち込み稽古を中止して水球の盾を見に来た男爵様親子。


 「これは槍で突き刺しても防御はできるのか?」


 え? 槍? う~ん・・・・・ 槍は無理そうじゃない? 膂力に物を言わせて槍を突き刺してきたら、簡単に水球を抜けられちゃうわよね。

 でもそれって、槍を突き刺してる間は他の攻撃や防御の手段がないって事だわ。

 この水球から小さな水球を撃ち出したり、水槍を繰り出したりすれば、水でタコ殴り状態だわ。


 「フロランタン様が槍を突き刺せば、この水の盾を突き抜けるでしょうが、私に槍が到達するまでに反撃されることは考えてますよね。」

 「なにっ、反撃の手段もあるというのか。おもしろい。是非とも試させてくれ。」



 槍先を私に向けて構えるフロランタン様。槍と言っても、先っぽが布で包んで縛ってある単なる木の棒なんだけど。

 ちゃんと布が被ってるから当たっても・・・・・ 痛いわよっ!! あんなのが当たったらケガしちゃうわよっ!!

 絶対、当てさせないんだから。


 気合いと共に突き出される槍、いともたやすく水球に突き刺さる。

 盾の水球の横に攻撃用の小さな水球を分離させた事に気付いたフロランタン様、その水球を払い落とそうと槍を横へ振るう。

 でもそれは悪手よ。棒を水の中にまっすぐ突き立てるのと横に振るのとでは、水の抵抗が全く違うわ。

 横に振られた槍は水の抵抗を大きく受け盾の水球から出る前に、小さな水球がフロランタン様の顔面に直撃。のけぞりながらもバランスをとって踏ん張ったところへ2弾目3弾目が直撃、その時点でバランスを取りきれず後方へもんどりうって転倒する。

 さすがフロランタン様、転がりながらも即座に立ち上がり、槍を構え直して戦闘態勢を取り私を睨みつける。

 でも盾の水球の廻りに攻撃用水球が三つも浮かんでるのを見て、攻撃の態勢を解く。それを確認して魔法を解除すれば、浮かんでいた全ての水が地面に落ちる


 「降参だ。水の攻撃の威力がこれほどとは思わなかった。」

 「何をおっしゃっているんですか。威力は抑えて撃ちましたよ。」

 「なんだと、手加減をしたとでも言うのか。」


 あれ? 本気の勝負を挑んで、相手が本気ではなかったことに怒りを覚えるとか、そんな感じ?


 「水の威力をあまり馬鹿にしないで下さい。本気でやったらフロランタン様の頭が無くなってますよ。」

 「たかが水にそんな威力があるものかっ。」


 掴みかかってきそうな迫力で迫るフロランタン様。これは実演すれば一目瞭然ね。

 さっきまで打ち込み稽古をしていた辺りの細めの木を指さす。細いとは言っても、殴ろうが蹴ろうが折れることは無さそうな木。

 指先に水球が出現し木に向かって放つ。その速度はフロランタン様にぶつけた水球の数倍の重量と速度で木に向かう。木の幹に直撃すれば、バキッという音と共に幹は折れ木が倒れる。


 「申し訳ございません。この程度の威力しかありませんが、いかがでしょうか。」


 目を丸くして倒れた木を見つめる男爵親子。


 「す、すまぬ。私は鍛錬不足だったようだ。初心に戻って鍛え直そう。」


 フロランタン様は打ち込み稽古に戻っていった。ジェロームは? 目をキラッキラさせて私を見つめてた。


 「ヴィヴィ先生っ!! 一生先生と呼ばせてくださいっ。」

 「嫌ですよっ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ