32.眠い、眠い、眠い~~
なんだか・・・・・ 廻りが、ざわついてる? ソフィは・・・? あれ? 隣に寝ていたはずなのに
「どうするんだ、これっ。」
「ヴィヴィの結界魔法はこいつらには破れないはずだ。」
「私達だって攻撃ができないわ。」
「朝までにらみ合ってろっていうのか。」
テオやニコ『ホークアイ』の面々の緊迫した囁き声に馬のいななきが聞こえてる。何かが結界魔法の外に来てる? 頭を起こして廻りを見まわせば、ソフィの声も聞こえてきた。
「私がやってみる。」
「何をやろうってんだ。この結界は通り抜けれないんだぞ。」
「大丈夫、光の魔法はヴィヴィに教えてもらったから。」
もうここまで騒ぎが大きくなってこれば、寝てる場合じゃないわね。起き上がって見まわせば、ベルトランさん達は? あ、馬車の陰から様子を伺ってる。
いつまでも寝てたのは私だけっ? 私だけなのっ!! 慌ててソフィの元まで走る。
ソフィがナンチャラマンバリアに手の平を当てているその向こう側には・・・
うっわ~、狼の群れに囲まれちゃってるんじゃない? ちゃんと数えてないけど30頭以上の狼に取り囲まれてるみたいだわ。
ソフィが撃ち出した光の矢が一番近くの一頭の狼に命中、ギャウンという鳴き声と共に倒れたけど絶命はしてないみたい。ジタバタともがいてる。
バリアの廻りに散開してた狼たちがソフィに向かって牙を立てようと向かってくる。ソフィの前のバリアを隔てた向こう側に狼が集まって牙を剥きだして襲いかかってくるんだから、バリアがあったとしてもソフィもびっくりしちゃうわよね。尻餅をついて涙顔になっちゃってる。
おのれ~、狼どもめ~、ソフィを泣かしたわねっ。この私が成敗してやるわっ!!
ソフィの前に立って、バリアを喰い破ろうとして剥きだした牙をガシガシとぶつけてくる狼たちに手を突き出す。
「待ってっヴィヴィ、ごめんなさい。もう大丈夫、私がやるわ。」
振り向けば立ち上がったソフィが私の肩に手を置いてる。
「ソフィ、無理しなくても、」
「いえ、私は護られてるばかりじゃダメなの。ヴィヴィを護ってあげるぐらい強くならなきゃ。」
そうよ、私もお姉ちゃんとして咲姫ちゃんを護ってあげたかった。きっとソフィも私を妹みたいに思って護ろうとしてるんだわ。ソフィの思いを無下にはできないわ。ここはにっこり笑って、
「お願いするわ。」
「ええ、頑張る。」
サロモンさんが声を掛けてくる。
「大丈夫なのか。二人でやったほうがいいんじゃないのか。」
「ソフィがやるって決めたのよ。任せてあげて。」
「結界に囲われた中では私達には攻撃の手段はないのよ。ヴィヴィの言うとおりにしてあげて。」
ニコは私にこの場を任せてくれようとしてる。ありがとう、ニコ。
ソフィが今一度手を突きだしバリアの内側に手の平を当てる。その手を食いちぎらんとばかりに牙を剥く狼。バリアの表面に何十本もの矢が光の矢が形成されていく。その矢さえも食いちぎろうと噛みつく狼。狼が馬鹿でよかったわ。光の矢が撃ち出された。
半数ぐらいが行動不能に陥ったか絶命したかよね。その他は無傷だったり矢を身に受けながらも逃げだした狼が遠巻きに睨みつけて警戒している雰囲気ね。。
「聞いて、今から防御結界を解除するわ。あそこで倒れている狼たちまでを囲って防御結界を張り直すから、とどめをお願いっ。」
「ちょっちょっ、心の準備がっ。」
「準備なんかいいから、さっさと動いてっ!!」
バリア解除と共に私が走れば、テオもニコも私を追い越して走って行く。
結界魔法、ナンチャラマンバリア発動っ。
さっきまでのバリアよりもはるかに大きな筒状のバリアで囲われた。このまま狼たちのとどめを刺すわよ。
「待って、ヴィヴィ、危険よっ。大人達に任せなさい。」
後ろからソフィに止められた。その横を『ホークアイ』の4人が通り過ぎていく。
まあそうね、これだけ大人がいることだし、任せちゃってもいいわね。
私達が見えない壁から出てきたと勘違いしたみたい。遠巻きに眺めてた狼が全力で向かってきた。『ホークアイ』が逃げ腰になったけど、無傷の狼は全速でバリアに突っ込んで、これは多分だけど首が折れたんじゃない? 数頭がその場にくずおれて動かなくなった。激突しなかった狼は、光の矢を受けて全速で走れなかったヤツよね。
あと7頭か~、ちゃんと狩っておかないと馬車の後を追いかけられても困るしね~。
バリアの外側に光の矢を形成、射出っ!!
ギャウンという悲鳴と共に倒れ伏す狼たち。
ふ~、終わったわ。テオ達もしっかりとどめを刺してくれたわね。
サロモンさんが若い子に指示してる。
「おい、アラン、ベルトランさんにもう大丈夫だ、と伝えてこい。」
アランがダッシュでベルトランさんに向かって走ってった。
「ヴィヴィか、こんなちっちゃい娘なのに凄い魔法使いなんだな。」
「私だけじゃないわ。ソフィもよ。」
「あ、そうだな。ソフィも凄かった。」
「あ、わ、私はそんなこと、」
「そんなことあるわ、胸を張って威張っていいのよ。」
「ああ、そうだ、おまえ達はそれだけの事をやってくれた。俺はあれだけの狼の群れを前にして、何人かは死ぬかもって諦めてたんだ。」
「防御結界があったんだから大丈夫だとは思わなかったの。」
「奴らは目の前のエサを諦めて立ち去ることはないだろうし、防御結界を張ったまま馬車での移動はできねえだろ。」
え? え~? 狼ってそんなに執念深いの? って、バリアを張ったまま移動とか、そんなこと考えもしなかったけど、私を中心にして、ん~、馬車一台分が限界かな。全部の馬車を、となると、ドーム状で囲うには大きくなりすぎて無理があるわね。
「できるのかよっ!!」
「何かできる方法があるかも、って考えたんだけど無理そうね。」
できない事にしときましょ。何でもできるなんて思われたりすると、あれやれ、これやれっていろいろ押しつけられそうだし。
「そ、そうだよな。そんな事できるわけがねえ。で、狼共は結界のなくなる時を待ち構えていたわけだ。この人数じゃ、あの頭数の狼じゃ全滅の可能性もあったしな。それが誰もケガすることなく殲滅できたんだ。改めて礼を言うよ。ありがとう、ヴィヴィ、ソフィ。」
「護衛任務なのよ。あたりまえの事をしたまでよ。」
「それでも、礼は言っておきたいんだよ。」
ベルトランさんが後ろから声を掛けてきた。
「皆さん、助かりました。あんな狼の群れが出るなんて予想もできませんでしたよ。」
「ルクエールの北の森でゴブリンが集落を作ってたんだ。そのゴブリン共に森を追われた群れが徘徊してたんじゃないかと思う。」
「それじゃあ、まだこの先も魔物や獣に襲われるのでしょうか。」
「あれほど大きな群れはもう無いとは思うが、先のことは分からん、というのが本音だ。」
「そうですか、マルテへ進むかルクエールに戻るか、検討しなければいけないようですね。」
「待って下さい、ベルトランさん。『風鈴火山』がしっかり護りますっ!! 先へ進みましょう。」
「ああ、『風鈴火山』がいてくれるなら俺達『ホークアイ』も安心して護衛を続けられるよ。」
「それなら皆さんにおまかせして、先へ進みましょうか。」
よかった、戻るなんて話になったら王都へ行けるのがいつになるか分かったものじゃないわ。王都に着いたご褒美に馬車をもらえるって話だって、王都へ行かなきゃその話は消えてしまうって事よね。何が何でも無事にベルトランさんを王都へ送り届けましょう。
「まだ朝まで時間はある。ヴィヴィとソフィは寝てていいぞ。狼の血抜きは俺達がやっとく。」
「ありがとう、おまかせするわ。」
「ヴィヴィ、起きて、朝食の準備ができてるわ。」
ソフィの声で、何度も同じように呼びかけられてたような気がする。ようやくその言葉が頭に入って理解が出来るようになったみたい・・・・・ な気分。でもはっきりと覚醒してない、 眠い、 眠い、 眠い~~
「もう少し寝かせておけ、出発の時に起こせばいいだろう。」




