表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

転校生がやって来た!

朝、目覚めるとすこぶる体調が良かった。

いつもより10分も早く目が覚めたおかげで、朝食を一品多く作ることができた。


喜美(きみ)〜、にいちゃん先に行くから戸締りよろしくな〜」


玄関で靴を履いて、2階にいる妹に声をかける。しばらくそのまま返事を待つが、返ってくる様子はない。


「……いってきまーす」


俺は玄関をでると、静かに扉を閉め、鍵をかけた。


「オッス」

「おう、勇希。はよっす」


家の前にはすでに来ていた勇希が眠そうな顔で待っていた。


「体調はもういいのかよ」

「体調? 全然、どこも悪くない。むしろ今日は調子がいいくらいだ」

「あっそ」


勇希は特に興味なさそうに返事を返した。

途中で航と海斗が合流し、いつも通り4人で登校する日常が始まった。



「えー、今日は転校生を紹介する」


朝のホームルーム、教壇に立つ担任が改まった声でそう言った。さっきまで気だるけな雰囲気だった教室内は一気に活気付く。


「ヤッベ! 転校生だってよ!」

「珍しいね、こんな時期に」

「善〜? 可愛い子だったらどうする〜?」

「別に興味ないなー」

「またまた強がっちゃって〜」


俺を揶揄う海斗に、静かにしろよと叱る勇希。それを楽しそうに眺める航。そんなやり取りの中、教室の扉が開き、女子生徒が入って来た。かなり派手な髪色をした生徒にクラス中が騒めく。

歩くたびにその頭につけた白いリボンがぴょこぴょこと揺れた。


「んぎゃ!」


次の瞬間、彼女は教壇に足を引っ掛け、盛大にすっ転んだ。


「だ、大丈夫か!?」


担任教師が慌てて声をかける。


「だ、大丈夫です。私、割と頑丈に出来てますので……」


騒つく生徒たちを背に、転校生は黒板に大きく文字を書き始めた。


「明日光 理図夢」


教室に一瞬の沈黙が走る。


「……なんて読むんだ?」


俺は思わず疑問を口にする。転校生はくるりを振り返るとハツラツとした声で挨拶をした。


「皆さん、はじめまして。アスピカ・リズムと申します。この国に来てまだ日が浅く、色々と不勉強ではございますが、どうぞよろしくお願いいたしますっ!」


自己紹介を終えると、深々と頭をさげた。


(ヤンキーみたいな当て字だな)


俺は心の中でそう思っていた。多分、クラス中の人間がそう思っていたかもしれない。


「あー、明日光くんは海外からの帰国子女なんだ。色々と困っていたら助けてあげてくれ…で、え〜、明日光くんの席だが……」


一瞬、俺と明日光の目が合った。


「先生! 私、あの席がいいです!」


明日光がクラスの1番後ろの席を指差す。その瞬間、クラス中に妙な緊張感が走った。


「え? あ、俺の後ろ?」


俺は驚いて後ろを振り返り、自分の後ろの席が空いていることに気づいた。


「いや〜、でも善の近くに女子は近寄らない方がいいんじゃ……」


隣の席の海斗がチラリと俺を見る。


「あー、大丈夫そうか? 久保田」


担任の心配そうな声に俺は胸元のポケットにしまった青いビニール袋を握りしめて答えた。


「全然ヨユウッス」


精一杯の強がりを見せたつもりだったが、声はかなり震えていたかもしれない。


「……じゃあ、明日光くんはあの席へ」

「はい! ありがとうございます!」


アスピカは嬉しそうに教壇から降りると教室の1番後ろの席についた。そして固まる俺の背中越しに声をかける。


「よろしくお願いしますね、善さん♪」


俺は背中に走るゾクゾクとした感覚に身を震わせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、ブクマ・ポイント評価お願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ