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魚の恩返し

昼休み、教室で海斗達と駄弁っていると清宮が声をかけて来た。


「久保田くん」

「え? な、なに!?」


俺は、清宮に驚き椅子から転げ落ちそうになる。


「あ、驚かせてごめんね。えっと、女の子が久保田くんを探してるみたいで……」


清宮は廊下を指差す。見ると、教室の扉からチラリと顔を出した皆月がいた。


「あ、昨日の……」


皆月は俺と目が合うと、慌てて顔を引っ込めた。


「え! なになに、善に女の知り合い!?」


海斗が興味津々に身を乗り出す。


「……誰?」

「あれは、隣のクラスの皆月さんですね」


勇希の質問にリズムが答えた。


「俺、ちょっと行ってくるわ」


俺は海斗達にそう言って廊下へと向かった。



「俺になんか用か?」


俺は廊下をウロウロしていた皆月に声をかけた。皆月は「ひゃあ!」と声をあげて振り返る。


「あ、く、久保田くん……あ、あの、うぉは、昨日助けていただいた、皆月魚花です!」

「あ、うん。大丈夫、覚えてる」


2度目の自己紹介に俺は苦笑する。


「あ、えと、き、昨日のお礼…したくて……」

「お礼? 別にそんな……」

「これ、あげます!」


皆月は突然何かを俺に差し出した。


「絵葉書?」


差し出されたものは絵葉書だった。


「これ、もらっていいのか?」


皆月はうんうんうんうんと首を縦に振った。


「じゃあ、遠慮なくもらうよ」


皆月は思いっきり手と足を伸ばして絵葉書を渡してくれた。なるべく俺から距離をとってくれているようだ。


「きれいな月だな」


絵葉書には夜空に浮かぶ満月が書かれた幻想的な絵だった。絵のことはよくわからないが、素直にきれいだと思った。


「はぅ…あ、ありがとうごじゃいます……」


皆月はカーデガンの袖で顔を覆って顔を隠した。


「u o ka」


俺はイラストの隅に書かれたサインを読み上げる。


「これ、皆月が描いたのか?」

「……!」

「へー、すごいな。皆月、絵かけるんだ」

「は、はい。うぉは、美術部なので……」

「ありがとな。部屋に飾るよ」

「え、えへへ……」


皆月は照れたように笑った。


「何あれキモ」


不意に通り過ぎた女子生徒の言葉に皆月はビクリと肩を振るわせた。


「皆月?」


俺が声をかけると皆月は少し寂しそうな顔をして、ペコリと頭を下げて、自分の教室へと戻って行った。



「善さん」

「うお!? リズム!」


突然背後に現れたリズムに俺は驚く。


「いつのまに2ndミッションを開始したんですか?」

「2ndミッションってなんだよ……あの子は昨日の夜にちょっとあって。偶然、知り合っただけだよ」

「なるほど、なるほど。偶然の出会いから始まる恋ってわけですね!」

「は、はぁ!?」

「任せてください、善さん! 私がバッチリ、リサーチして来ますので!」

「あ、おい! 待て!!」


俺の止める声も聞かず、リズムはものすごい勢いで3組の方へ走り去っていった。

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