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告白ですか?

前から書いてみたかったラブコメです。

どうぞよろしくお願いします!

「久保田先輩。あの、私と付き合ってくれませか?」


放課後、1人で教室の掃除をしていた俺に見知らぬ女生徒が告白をしてきた。

俺は持っていた箒を落としそうになり、慌てて握り直す。


「え? お、俺とか?」

「はい、先輩と付き合いたいんです!」

「いや、でも、俺、君のこと知らなし」

「先輩が私のこと知らなくても、これから知っていけば良いと思います! 私、ずっと前から先輩のこと大好きだったんです!」


そう言いながら女生徒は潤んだ瞳を大きく見開いて、距離を詰めてくる。俺は、思わず後退りした。


「……うっ!」


俺は胃から込み上げてきた吐き気に耐えきれず、口元を抑えて教室の端へ猛然と駆け出した。


「ゲロゲロゲロー!」


常備していたビニール袋を広げ、俺は盛大に己の胃の内容物を吐き出す。


「……っぷ!」


俺の情けない姿を見て、女生徒が吹き出した。


「あっはははははは! やだ〜、パイセン! マジキモいっすね〜!!」


さっきまで瞳を潤々とさせていた彼女は、人が変わったかのような大声で腹を抱えて笑っていた。


「……は?」


俺は呆気に取られ、間抜けな声をだす。


「引っかかったな、久保田善(くぼたぜん)!!」


誰かが俺の名前を呼びながら、盛大に教室の扉を開けた。廊下から数人の女子がなだれ込むように入ってきた。その中の1番背の高い生徒が髪をかき分け、高笑いをする。


「あーはっはっは! その顔マジで傑作だなぁ、久保田善!」

石姫(いしびめ)……」


石姫美雛(いしびめみびな)。何かと俺を目の敵にして嫌がらせをしてくるクラスメイトだ。俺は高笑いをつづける石姫を睨みつける。


「そんなゲロまみれの顔で凄まれたって、全然怖くねーんだよ! バーカ! こんな簡単な嘘に騙されるなんて、どんだけ女に飢えてんだよ! この変態野郎が!」

「てめぇ…」


流石に腹が立った俺は、石姫に詰め寄ろうと立ち上がった。するとそこへ、先ほど偽の告白をしてきた女が笑いながら近づいてきた。


「あれ〜? パイセン、女の子に近づいて大丈夫なんですかぁ〜?」

「ぬがっ!」


俺が思わず距離を取るように後ろへ後ずさると、女は目を細めてニヤニヤと笑う。


「やっぱ、ホントなんですね、パイセンが女性恐怖症って噂……」

「おーい、善! 掃除まだ終わんないのかよ〜」


今度は教室の後ろの扉が開き、廊下から3人の男子生徒が入って来た。茶髪の男子、日枝海斗(ひえだかいと)が女子に囲まれた俺を見て驚いた顔をする。


「おっと、取り込み中?」

「…チッ! お前らもう行くぞ」

「え? 姫先輩? あ、待って下さいよ〜」


石姫は舌打ちをした後、舎弟を連れ、そそくさと教室を出て行った。教室に入ってきた3人の中で1番背の低い、卯ノ沢(うのさわ)勇希(ゆうき)が呆れた口調で俺に声をかけた。


「また、石姫に虐められてたの?」

「誰がだ! あのヤンキー女が勝手に絡んでくるんだよ! くっそ迷惑だっての!」

「善はモテるなぁ〜」

「勇希、それ嫌味か? ケンカ売ってんのか!?」

「まぁまぁ、2人もそれくらいにして…」


4人の中で1番背の高い男、最上航(もがみわたる)が俺たちをなだめるように手をひらひらとさせた。


「もう掃除はおわったんか?」


海斗が教室を見渡して言った。


「ん、ああ。あとゴミ捨てだけだわ」

「んじゃ、オレら先に校門行ってるから」

「は? 手伝ってくれんじゃないのかよ」

「ジャンケンで負けた罰なのに、手伝うわけねーべ」

「さっさと来いよー、じゃないと置いてくぞ」

「じゃあね、善。また後で」


そう言って、3人は善を置いて教室を出て行った。


「たく、何しに来たんだよ、アイツら」


俺は悪態をつきながら、集めたゴミを袋に入れ、ゴミ置き場へと向かった。



「ん? なんだありゃ?」


ゴミ置き場へゴミを運んだ俺は、今はもう使われていない焼却炉に何かが挟まっているのを見つけた。


「ぬいぐるみ……いや、着ぐるみか?」


焼却炉の入り口に白いふわふわとしたものが無理矢理に詰め込まれているようだった。


「誰だよ。こんなの捨てた奴。捨てるならちゃんと分別しろよなっ!」


俺はその詰め込まれていたふわふわの尻尾を掴んで思い切り引き抜いた。


「きゃうう!」

「ぐえっ!」


ぬいぐるみは予想以上に重量があり、俺はバランスを崩しひっくり返る。その上にぬいぐるみの尻が思い切りのしかかり、衝撃で潰れた蛙のような声が出た。


「はわぁ! ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」


白い着ぐるみは慌てて立ち上がる。


「な、なんだ、中に人が入ってたのか……」


俺は痛む腹をさすりながら立ちあがり、目の前の着ぐるみを見た。


白い頭には大きな長い耳がついていて、顔にはその面積の半分くらいをしめる大きな赤い目が2つついている。


「うさぎ?」

「あ! ごめんなさい、ワタシもう行かなきゃいけないので、これで失礼します!」


着ぐるみは俺の質問には答えず、その大きな頭を前後に揺らし、ワタワタとした足取りでその場から駆け出していった。


「あ、そうだ。この事は忘れてくださいね!」


渡り廊下の扉に入る直前で、着ぐるみはそう言ってもふもふとした手を俺に振った。


「あ?」


その瞬間、俺は意識を失った。



「……んっ! ぜ……っ、ぜん……善!!」

「はゔぁ!」


意識を取り戻した俺は、あたりを見回した。

友人らが俺を取り囲んで、心配そうな顔で覗き込んでいる。

どうやら立ったまま気を失っていたようだ。


「やっと気がついた!」

「おい、何やってんだよ! 立ったまま寝てたのかよ!」

「はー、やっべ。マジちょっと死んでんのかと思ったぜ……」

「勇希と、航に海斗?……え? 3人とも何してんの?」

「はぁ!? それはこっちのセリフだろーが! お前が全然戻って来ねーから心配して探しに来てやったんだよ! そしたらこんな所でボーッと突っ立たまんま返事もしねーから危うく救急車呼ぶとこだったんだぞ!? わかってんのかゴラァ!」


勇希が俺の襟首を掴んで頭を強く揺らした。


「う、お、お、お、そ、そうか……それは心配かけたな、スマン」

「まぁまぁ、勇希もその辺にしておいて、もう暗くなって来たし帰ろうよ」


航が手をひらひらさせて勇希を宥める。

勇希はしぶしぶと俺から手を離した。


「マジ、こんな所で何してたん?」


海斗が不思議そうな顔をして、俺をみる。


「ん? あ〜、あれ? 俺、何してたんだっけ?」


俺は意識を無くす前のことを思い出そうとしたが、全く思い出せず首を捻った。

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