4人組が近未来のスポーツとラブコメとマッド入りの青春を送ります
「のべりちゃん!替芯っ、替芯ちょうだい!」
「はいぃ!どうぞっ!」
皆も一度は授業中に文房具で遊んだことがあると思う、そういう僕も今文房具で遊んでいる最中だ。
「強い!敵強いよのべりちゃん!」
「えとえと……頑張れー!」
「貴様ら!後ろから来てるぞ!」
「相手全員遠距離じゃんか!定規じゃ太刀打ちできないんだけど!?」
僕達が今遊んでいるのは仮想世界に入り、文房具を使って戦うVRゲーム『ステイショナリーウォーズ』通称『ステリズ』だ、ちょっと前に発売されたんだけど、何故か全世界で大ヒットして、今ではステリズを知らない人は居ないくらいのゲームだ。
「当たんない!当たんないよのべりちゃん!」
僕は千原 飛鳥、自分は普通の学生だと思ってるけど……何故かよく女の子と間違われる、何でだろう……?
「かっ……加勢します!」
この子は三多摩 のべり、僕の幼馴染で、おどおどしてるけど優しくて可愛い、小動物みたいな子だ。
「おい、アスカ!消しゴム!消しゴムで前線を押し上げろ!」
こいつは渦雁 寅不、毎日フードを被っている不思議な奴だ、謎の人体実験をしたり、陰湿な嫌がらせをすることで学校では有名なヤベー奴だ。
「そしたらアタシの定規『出素都露胃夜亜』でぶった切ってやるよ!」
そしてこの人は古華 来華、学校では「怒らせたら死ぬ」と言われる程恐れられている、伝説の女ヤンキーらしい。
ステリズは文房具を武器に見立てて戦うゲームで、例えば消しゴムは盾、鉛筆はランスや剣、定規は大剣、コンパスは弓………などになったりする、今では全国大会も開かれたり、授業なんかにもなっている。
「うぐぐ……攻撃が激しいっ……」
「ふっ…………やあ!」
のべりが放った一撃が、敵に命中した。
「ぐわぁ!」
「よし!良くやったぞのべり嬢!おい、ヤンキー!ぶっ飛ばせ!」
「アタシに命令すんなっ……てのお!!」
「「うわああああ!!!」」
「ぐっ……オイ!撤退だ!てった……何だこれ!動けねえ!」
逃走しようとする敵の足元に謎のベタベタしたものが張り付いていた。
「クックック……フハハハハ!残念だったな、こんなこともあろうかと、お前らが通るであろうルートにのりを張り巡らせておいたのさ!」
「そういうことは先に言えよ!フード!」
「私はフードではない!渦雁だ!」
「言い合ってないで早く倒してよ!」
「「わかってるよ!」」
ズガァァァン!!
「くそっ……こんなところで……ぐわあああ!!!!」
すると、空からアナウンスが聞こえてきた
『クラン全滅により、勝敗が確定しました』
『winer クラン:文房軍』
「はぁ……勝てたぁ……」
「おっ……お疲れ様!飛鳥くん」
「貴様!ヤンキー!」
「んだと!フード!」
こんな感じの僕達が「文房軍」というクランを作るまでにはこんな経緯があった………
ある日、僕とのべりちゃんは、今流行りのステリズというものについて話していた。
「ステリズ……ああ、今流行りの……」
「うん、何か授業にもなるらしいよ」
「えっ……?そんなに……?」
ガラララ……
「おーい、席につけ〜、大事な話をするぞ〜」
そんな先生の言葉を聞き、生徒たちはざわついた。
「おい……お前何かやらかしたか?(小声)」
「何もしてねぇよ!(小声)」
「え〜、ステリズってやつを知ってるだろ?あれがな、何か今日から授業になるらしい」
「だから今日は……え〜っと……クラン?という4人組のチームを作ってもらうぞ〜」
ザワザワ…………
ステリズは、4対4のチームに分かれて戦い合うゲームであり、そのチームのことをクランと言うのである
「クランだって、のべりちゃん」
「うん……でも、私達二人しか居ないけど……」
「うーん、どうにかして集めようか」
「でも……私達……友達……居ないよね……あはは……」
「くっ……陰キャに4人組を作れだなんて死刑宣告を!」
「あはは………しょうがないよ……教室に居ないなら、他をあたろう?」
こうして僕達は、教室を後にして、他に余っている人が居ないか探した
……………一方そのころ
「………オラァ!」
「ぐはっ………」
「ひぃ!ボッ……ボスぅ!」
「おうおう、こんなに雑魚なのにアタシに喧嘩売ってきたのかよ?」
「すすす、すみません!どうか命だけは!この通り!」
喧嘩を売ったらしい不良は、綺麗な土下座をした
「あ"あ"!?アタシに喧嘩売ったんだ、許すとでも思うか?」
「ヒィィィ!!」
この不良二人は、学校一のヤンキーである来華に「俺がこの学校のトップだぁ!ツラ貸せやぁ!」と喧嘩を売り、それはもう見事にボコボコにされたのである
「はぁ……とはいえ、ボコるのにも飽きたしな……どう処理してやろうか……」
すると、突然どこからかフードの男が現れた
「クックック……そういう事ならばその男、私に預けて貰えないだろうか?」
「あ"あ"?誰だ!?」
「失礼、申し遅れたな、私は渦雁……渦雁 寅不だっ!」
「カカリぃ?知らねえな、お前もアタシに喧嘩売ろうってのか?」
「それは違うぞヤンキーよ、その気絶している男を私の実験道具にするために譲渡してくれということだ!」
「じょうと?」
「フム……簡単に言うなら、そいつらはよ渡せやカス」
「殺す!!」
ボン!!モクモク……
「何だ!?……ゲホッゲホッ…!」
「話が通じなさそうなので煙幕を撒かせて貰ったよ!それではさらばだヤンキーよ!この者たちは貰ってゆくぞ!」
「ゲホッゲホッ!……テメェ!待ちやがれフード!」
そして飛鳥達に戻る
「うーん……他をあたるとはいえ、あても無いしな……」
「…………あっ!そうだ!」
「何か考えついたの?のべりちゃん」
「掲示板に貼ろうよ!募集中です!って!」
「そうか……掲示板があったか!」
そして……
「ああ〜?4人組を作れだとぉ?」
同じくして、来華も担任から話を聞いていた
(作るったってよぉ……皆アタシにビビってるからなぁ……)
そう思いながら、廊下を歩いていると
「ん?何だこりゃ?…………おお、良い情報知っちまったぜ」
飛鳥達は空き教室で、掲示板を見た人が来るか待機していた
「本当に来るかなぁ?」
「ごっ……ごめんね……こんな作戦が成功する訳無いよね……」
「ちっ……違うよのべりちゃん!そういう事じゃなくて……」
ガララ……
「失礼するぞ」
「!?」
飛鳥は突然教室に入って来た謎のフードの男に驚愕した
「失礼、名乗りが遅れたな、私は渦雁 寅不だ、掲示板を見て来たぞ」
「もしかして入ってくれるの!?」
飛鳥は食い入るように聞いた
「うぉぉ………まぁ落ち着け、突然4人組を作れと言われ、あてが無かった私は、偶然掲示板を見て来ただけだ」
「それでも嬉しいよ!でも、あと一人足りないな……」
「フム……そういう事なら最近手に入った被検た……ゴホゴホっ………友人が居るので招待してやろ………」
ガララ……
「邪魔するぜー!ここかぁ?人集めてるって場所……は……」
「あ」
「あああ!!テメェ!フード!」
「ぐぅっ!クソッ……何故ここにヤンキーが!」
「殺してやる!!」
「ちょっと待って下さーーい!!」
「「!?」」
のべりの叫びで二人は、止まった
「喧嘩は……駄目です!」
来華は突然現れた愛くるしい小動物に目を引かれた
「………何だ……この可愛い奴は……」
来華はのべりに近づき、じっくりと見た
「かっ……か……」
「か?」
「可愛いいいい!!!!」
「えっ……えっ……ムギュ!」
来華はのべりに抱きついた
「ああ……何て可愛いんだ……持って帰りたい……」
「あっ……あの〜?」
「ん?ああ!自己紹介がまだだったな!アタシは古華 来華だ!ライカって呼んでくれ!アタシとダチになろうぜ!」
「はいっ!はいっ!分かりました!分かりましたので、離して下さいっ!」
「おっと、ごめんな……アタシは可愛い物に目が無いんでな」
「ふぅ……命拾いしたな……」
「お前は殺す」
「ヤベ逃げよ」
「あの……駄目ですよ?」
「ああ!分かってるって!ダチの言う事は何でも聞くぜ!」
そして、突然騒がしくなった教室が静かになった頃
「……え〜、という訳で僕達でクランを結成するという事で良いですね?」
「あ"あ"!?何でこのフードと!」
「何故このヤンキーと!」
「もう……二人共……喧嘩は駄目だよ?」
「はーい!わかったぜー!」
(フム……ヤンキーが気に入ったのべり嬢に危害を加えたら次こそ私は殺されると見た)
「まぁ良いだろう、今の所クランを作っていない所は私達だけだろうからな」
「………この学校陽キャ多いな……」
「……でよー、すてりずって何だ?」
「何だ……そんなことも知らんのかあほ……ムグッ」
飛鳥が後の展開を察したのか、渦雁の口を手で塞いだ
「ちょっと渦雁さん!死にますよ!(小声)」
「ぷはっ……フム……私としたことが冷静さを失っていたようだ……感謝するぞアスカ(小声)」
「???何やってんだ?」
「あはは……まぁステリズについて勉強したんですけど……ステリズっていうのは、文房具を武器にして戦うゲームらしいです」
「消しゴムとかか?」
「はい、鉛筆とかシャーペンだったら槍になったり、消しゴムだったら盾になったり、定規だったら大剣になるらしいです」
「大剣かぁ……いいな!ぶった斬れそうだし!」
(脳筋ゴリラめ………)
「オイフード、今なんか考えてなかったか?」
「ん?何も考えてないぞ」
「…………あっ!」
「どうしたの?飛鳥くん」
「クランには名前がいるみたい!」
「名前ぇ?アタシはそういうの考えられないからパス」
「私も仕方なくこのクランに入っただけだから名前付けなんぞに興味はない、貴様らで決めるといい」
「うーん………とは言われてもなぁ……」
クラン名か………クラン名……アスカーズ?駄目だ!最悪なネーミングだ……えーーっ……のべりーず?駄目だ!ただの使い回しじゃないか
うーん……文房具……戦う………あっ!
「決めたよ!名前!」
「フム、決まったか……さあ、言ってみろアスカ」
「クラン名は文房軍だ!!!!」
「「…………は?」」
「ほら!僕達文房具で戦う訳じゃん!?それも複数人で!それって戦争じゃん!?それだから、文房具と、戦争だから軍を合わせて文房軍って名前にしたよ!
「………いや、まあ決めろって言ったのは私だが………」
「その〜、な?」
「飛鳥くん」
「「「何かダサい」」」
「何でだよー!」
こうして、僕らのクラン「文房軍」が結成した
第一話 おわり