漫才『迷惑メール』
迷惑メールをどうにかしたいコンビの漫才です。
ボケ⇒ボ
ツッコミ⇒ツ
ボ「あんなぁ、今日はお前に相談したいことがあって来たんよ」
ツ「んー、なに。どうした?」
ボ「実は最近、迷惑メールにすっげぇ悩まされてるんだわ」
ツ「迷惑メール? 迷惑メールって、詐欺の業者が何件もブワ~って送ってくるっていうアレですか?」
ボ「うん。あの手この手で俺に金を振り込ませようと、めっちゃ送ってくるんよ。いや俺ってやっぱり純粋じゃん? だからついつい騙されちゃうんだよね」
ツ「今どき迷惑メールで騙される大人も珍しいですけどね。んで、めっちゃ来るって1日にどれくらいくるんですか?」
ボ「1件」
ツ「いっけん!? たった1件のみ!?」
ボ「いやお前、1日に1回も詐欺に遭うって相当だろうがよ。もし毎日オレオレ詐欺来たら、いっそ性別変えたくならない? 『いえ、私は私ですから。オレじゃないですから』」
ツ「いやならないわ! あと下手な女声やめろ気色悪い……でもたしかにそう考えると多いかもしれませんね、1日1件というのは」
ボ「だからね。今日は俺がこれ以上迷惑メールで詐欺に遭わないよう、ちょっと練習に付き合ってくれない?」
ツ「練習~? はぁ、まぁいいですけど」
ボ「じゃ俺が迷惑メールを受け取る被害者の役やるから。お前は迷惑メールの業者が捕まって牢屋で反省する役やってくれる?」
ツ「いや、終わってるから! 事後! 事件もう解決してるから!」
ボ「えっ?」
ツ「すでにハッピーエンドだから。貴方はそこから何の対策をするつもりなの!?」
ボ「いや、色々あるじゃん? 二度と同じ過ちを犯さないように、徹底的にお前を追い詰めて……」
ツ「怖いよ!! 迷惑メールの業者より怖……いや胸元からナイフをチラつかせる仕草すんのやめて? 僕、まだ何もやってませんからね?」
ボ「アイツまだ罪を認めてねぇぞ……」
ツ「だからやってないからね!? いや、もう貴方が業者やって。僕が被害者の手本見せるから」
ボ「ちっ、逃げやがったか」
ツ「なんだコイツ……あっ、また迷惑メールが着たよぉ~。いったいどんな内容送ってきたんだ?」
ツッコミ、スマートフォンを操作する演技を始める
ボ「大阪で売れないコンビ芸人をやっています。最近相方が冷たくて、アナタに会いたくなってしまいました……」
ツ「貴方じゃん! 詐欺じゃなくて貴方だからねソレ!」
ボ「返信はこちらのメールアドレスに送ってね」
ツ「知ってるから! 貴方のメールアドレスなんて、中学の頃から知ってるわ!」
ボ「お前のアドレス帳、俺と母ちゃんと、飯奢ってくれる都合の良い先輩しか登録してないもんな」
ツ「黙れよ!! 僕のアドレス帳事情をここでバラすな! それに何だその『相方が冷たくてアナタに会いたくなる』って! 恋人じゃなくて新しい相方探してんじゃねぇか」
ボ「いや、朝お前の家に行ったら冷たくなってて……」
ツ「物理的に!? 僕死んじゃってるじゃん! こうして生きてちゃんとネタやってますからね!? ったく、これが終わったら楽屋で話し合いするからな……ほら次!! どんどん送って来い!!」
ボ「お前、メル友が居ないからって自棄に……」
ツ「ちげぇから! あーなーたーがーやーりーたーいーって言ったのー!! 早くやれ、しばくぞ!」
ボ「おめでとうございます! 賞金、1000万円が当選しました!!」
ツ「あー、そういうタイプね。だいたい何もしていないのに、そんな大金が当たるわけがないじゃないですか。バレバレですよね、こんなん」
ボ「なので当選者様の口座を……」
ツ「あ、きたきた。これで僕の口座番号を聞き出そうとするんですよね」
ボ「特定して振り込んでおきました!!」
ツ「振り込んじゃったの!? 詐欺じゃないじゃん! いや、何『あっ、やっちまった』って顔してるの!? 馬鹿なの?」
ボ「え、えっと……お金持ちが亡くなったので、遺言で貴方の口座に3億円振り込みました」
ツ「また振り込んでる!? それもう振り込んでる詐欺じゃん! 僕の口座、3億と1000万が振り込まれてるの!? 逆に怖いわ!! もう貴方、絶対に詐欺なんか向いてないわ……え、どうしたの急に」
相方がしゃがみ込んで泣き始める
ボ「だってお前……3億も大金があったら、もう俺と芸人やってくれないだろ?」
ツ「えっ?」
ボ「こんなマトモに迷惑メールも送れないような相方と一緒に芸人しなくたって、お前ひとりで生きていけるじゃん!」
ツ「いや、迷惑メールは送らないで欲しいんですけど……バッカだなぁ!! たとえ僕に大金があったとしても、貴方と芸人を続けるに決まってるじゃないですか」
ボ「お前……ありがとう! やっぱ俺の相方はお前しかいねぇよ!!」
抱き合う2人
ツ「これからも仲良くコンビやっていこうな!!」
ボ「クックック、ずっとこの時を待っていた……」
ツ「え?」
ボ「お前が油断した今こそ、復讐を遂げるチャンス……覚悟ッ!!」
胸元からナイフを取り出す。
ツ「だーまーさーれーたー!?」
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