第27話 幸せ
――数日が経ち、ユーデクス様は元気を取り戻された。オーリム家の庭で元気に手入れをされている彼の姿があった。
「ありがとう、スピラ様。あなたの治癒のおかげで、この通り元気になった。本当に感謝してもしきれない……」
「いえ、わたしはこれくらいしか出来ませんから」
にこっと微笑まれ、ユーデクス様はまた頭を下げられた。今日で多分、三回は頭を下げられたと思う。
「それで、もう聖地へ帰られるので?」
「いえ、せっかくの里帰りですので、もう暫くは滞在しようかと思っています。カエルム様も同じ考えだったようで、今は辺境伯と母様にご挨拶をしているようです」
ちなみに、お義父さん……エキャルラット辺境伯は、皇帝陛下に呼ばれていたようで姿がなかったみたい。だから、母様しかいなかったのね。
「そうか。俺は兄として失格だ……」
「どうしてそう思うんですか?」
「君たちに迷惑を掛けてしまった。結局、俺はダメな兄貴だったんだ……。今もこうして庭師の仕事をしているし……運命の人も現れない。とことんツイていない」
「そんな事ありません。ユーデクス様は素敵な人です。きっと、これから良い事ありますよ~。だから、元気出して下さい」
そう、わたしが元気づけるとユーデクス様は、思ったよりは落ち込んでいなくて、微笑んでいた。どうしてだろう? と思っていると。
「聖女様のお墨付きなら、安心かもな」
「そ、そんな……わたしも、まだまだですよ。力だって、最近やっとついてきたくらいで……」
「いや、スピラ様はもう立派な聖女様だ。俺が保証する」
「ありがとう、ユーデクス様」
わたしは頭を下げ、礼を言った。
それからお屋敷に戻った。
◇
「ごめんね、スピラちゃん」
ウィンクルム母様とばったり出会う。
相変わらず世話しない人だ。
「いえいえ、わたしの方こそあまりお役に立てなくて……」
「そんな事ありません。スピラちゃんの活躍は、カエルムとユーデクスから聞いているわよ。すっごく立派だったと。聖女の力を発揮してくれたんだってね」
宝石のようにキラキラした瞳で顔を見られ、わたしは、なんだか無性に恥ずかしくなった。頬が熱い。
「そ、そうですけど……でも」
「謙遜、謙遜。いいのよ、胸を張って。貴女はカエルムとユーデクスを守り、無事にこのお屋敷に帰って来させてくれた。それだけで、十分すぎる名誉よ」
だきっとウィンクルム母様は抱きついて来た。ぎゅぅっと抱きしめられ、ヌクモリがわたしを包む。……あたたかい。……ちょっと泣きそう。
「ウィンクルム母様……」
「スピラちゃんは、私の娘よ」
「はい、ありがとう。ウィンクルム母様」
今回、急な呼び出しではあったけれど、久しぶりに帝国に戻ってこれて、少し安心も出来た。聖女としての自信も出た。
これからも、カエルム様となら困難があっても立ち向かえる。
――それから、わたしはカエルム様と合流を果たし、彼の部屋でゆっくり愛を確かめ合った。
「カエルム様……」
「スピラ様……」
やっとこの幸せな時間がやって来た。もう誰にも邪魔されない……二人だけの時間。あぁ、とっても幸せ――。
今度こそ番外編も完結です。
応援ありがとうございました。
また新作も追って戴けたら幸いです。
★ブクマ200ありがとうございます★
記念して番外編を追加できたらと思います。