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第28話 豚のエサ

「はい、どーぞ♪ ぜひ感想もくださいね」


 アストレアが小皿に切り分けてくれたケーキを、リュージはフォークで切ってから口に入れる。

 そしてしっかり味わってから言った。


「クソマズい。豚のエサと間違えてないか?」


「ひどっ!?」


「なにが酷いもんか。スポンジはあちこちダマになってるし、やたらめったら甘いし。砂糖の入れすぎなんだよ、高いんだから無駄使いすんな。しかもチョコはガチガチに固いときた。溶かす時の温度をしっかり見てなかっただろ」


「みょ、妙に具体的な指摘……」


「まったく、これなら俺が作った方がはるかにマシだぞ。ケーキのために用意されて、なのに最終的に豚のエサにされた食材に土下座して謝れこの下手くそが」


「そ、そこまで言わなくても……10年ぶりに目が治ったので憧れだったケーキ作りに挑戦してみたのに……っていうかリュージ様はケーキ作れるんですか? 意外ですね?」


「そんなに意外か?」


「それはまぁどこからどう見ても、リュージ様はケーキを作るタイプには見せませんから。むしろリュージ様が作るとしたら死体の山ですよね?」


「それは嫌味か? いちいち一言多いんだよ」


「いいえ、1日に300人近く殺したという、ただの純然たる事実ですが?」


「ちっ……なら教えてやる。子供の頃はお祝いの時に姉さんと一緒にケーキを作ってたんだよ。それで両親やパウロ兄と食べたんだ。姉さんの作るケーキは絶品でな、ミカワ屋で売り物にしようって話もあったくらいで」


「ご、ごめんなさい……そのようなこととは露知らず……」


 リュージを少しだけ言い負かしてちょっと勝ち誇った風から一転、アストレアが泣きそうな顔で謝罪した。


「ふん、これに懲りたらあまり人のことをあれこれ詮索しないことだな」


「はい……」


 せっかくケーキを作ったというのに、リュージにボロンカスに言われまくってアストレアはしょんぼり心の中で涙した。


 聡明な女王とはいえ、アストレアも一人の女の子なのである。

 悲しくて泣きそうなことはあるのだった。


 でも、


「お代わりだ」


「……え?」


 リュージの言葉にアストレアがポカーンと口を開けてアホ面を晒した。

 普段お澄まし顔をしていることが多いアストレアにしては、とても珍しい顔だ。


「聞こえなかったのか? お代わりをくれと言ったんだ」


「クソマズいって言ったのに、お代わりするんですか……なんですかそれ意味がわかりません……」


 アストレアがいじけたように言う。


「クソマズいのは味の話だ。だがお前が一生懸命、初めて作ったケーキそのものに罪はない」


「あ……はい……」


「俺が初めて1人でケーキを焼いた時も同じように失敗をした。お前と同じチョコレートケーキで、とても食えたもんじゃなかった。でも姉さんもパウロ兄も美味しい美味しいって笑顔で食べてくれたんだ」


「本当に素敵な方々だったんですね」


「俺みたいな馬鹿とは全然違う自慢の2人だったよ。それと腹が減ってる。空腹は最高のスパイスだからな、今なら豚のエサでも食える気分だ。だから早く切って寄こせ」


「……リュージ様ってやっぱりツンデレですよね」


「だからなんだよツンデレって? 言葉はコミュニケーションツールだ、相手がわかるように喋るのが話す側の義務だろう?」


「リュージ様みたいな人のことを言うんです♪」


「だから説明になってねーんだよ」


「あとはご自分でお調べ下さいな。わたしのお付きメイドによると、最近の恋愛の流行り言葉らしいですから」


 目が見えなかった頃、アストレアのお付きメイドはアストレアを楽しませようといろんな話をしてくれた。

 その中には素直になれない女の子がついつい好きな男の子に意地悪しちゃうお話もあって、アストレアは大いに心を躍らせたものだった。


 それはさておき。


 なんだかんだで2人でチョコレートケーキを丸々一本食べきって、リュージはお腹いっぱいに。


 そしてアストレアは心が幸せでいっぱいになって、この後のお昼の会議も、昼食会も、午後の会議も、夕方の会議も、夕食会も、夜の会議も、未明の会議もその他もろもろ頑張らなくちゃと、改めて気合を入れなおしたのだった。


 アストレアのチョコレートケーキを腹いっぱいに食べたリュージは、夕方までひと眠りして疲れをとると、


「さてと、次を()るか」


 次なる行動に移った。


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