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第12話 聡明な王女アストレア

「意味がよくわからないんだが?」


「暗闇から解き放たれたわたしの目に映ったあなたの目には、怒りよりも、深い慈しみが宿っていました。とても人を殺してきたばかりの目には見えませんでしたから」


「ちっ……」


「今さら無表情を取りつくろってもおそいですよ。ばっちり見てしまいましたので。目に焼き付けちゃいましたので」


「全部お前の気のせいだ、人はいつも自分が見たいものを見る愚かな生き物だからな。救いがたい」


「いいえあなたは本質的に優しい人です。弱い立場の人間の気持ちがわかる優しい人です。でも今はそれを復讐という名の怒りと憎しみで覆い隠してしまっているんです」


「本当におしゃべりな口だな? 目が開いた代わりに、今度はその小うるさい口を永遠に閉じさせてやろうか?」


「それは困ります。だって今からわたしは、あなたの信頼を勝ち取らなければならないのですから」


「俺の信頼だと?」


「信頼は一方通行では意味がありませんから。わたしがあなたを信頼するだけではなく、あなたにもわたしを信頼してもらわなければなりません。そして信頼を得るには知ってもらうことが不可欠です。わたしは今あなたの信頼を得るために、こうしてわたしの思いを全て、言葉にして重ねているのです」


「やれやれ、どうやらお前は俺が想像していた以上に頭が回るみたいだな」


 ライザハット王が手に負えなくて、実の娘の目を焼くという蛮行に及んだのも無理はない。


 愚かなライザハット王は、聡明なアストレアのことが怖かったのだ。

 対立の末にいずれ自分の権力が奪われると本気で恐怖していたのだ。


 そしてそこに、第一王女という存在が邪魔でしょうがなかったフレイヤが見事に付け込んだのだろう。


 アストレアとわずかに話しただけで、リュージは事の顛末をほぼ事実どおりに正確に把握するに至っていた。

 それほどにアストレアは聡明だった。


「それで少しは信頼は得られたでしょうか?」


「ああ、お前は信用できそうだ」


「わたしがあなたに求めたいのは、信用ではなく信頼ですよ」


「ちっ、アストレア、お前は信頼ができるよ」


「信頼していただきありがとうございますリュージ様。それで、わたしは何を求められているのでしょうか」


 アストレアが真剣な顔になった。

 ここまでの信頼という人間性を見てもらうための会話と違い、ここからは何かを為すための冷徹な話をするのだという、それは明確な意思表示だった。


 本当に聡明な女だな、アストレアは。

 だからリュージも真剣な声で返した。


「これからアストレアには新しい女王としてこの国を治めてもらう。もし歯向かう奴らがいれば俺が全力で排除してやるから安心しろ」


「わたしが女王になるのは構いません。この国がより良くなるのならば進んでその大役を引き受けましょう。排除というのは不穏なので、できれば控えてほしいところですけど」


「断る、無駄な時間はかけたくない。旧態依然とした旧国王派を筆頭に、障害は容赦なく排除したほうがいい。これを機にこの国をむしばむ害虫どもは、綺麗さっぱり取り除くべきだ。邪魔なやつのリストをくれれば俺が殺して回るぞ?」


「そこの意見のすり合わせに関しては、今は溝が深すぎるのでおいおい話すとして。ですがそもそもの問題としてわたしがこの国の女王になって、あなたに何のメリットがあるのでしょうか?」


 アストレアの疑問はイチイチもっともだった。


 アストレアが女王になって、腐りきったシェアステラ王国を改革する。

 これではアストレアにしかメリットがないのだから。


「俺はこの国を隠れ蓑にする、復讐のためのな。俺の復讐対象はまだたくさん残ってるんだが、最終目標は神聖ロマイナ帝国第十二皇子カイルロッドだ」



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