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第1話 暴動

 この日、シェアステラ王国の王宮を無数の群衆が取り囲んでいた。

 この地に王家が誕生して以来、最大規模の大暴動だ。


 重税に次ぐ重税に耐え兼ね、税の軽減を求めて立ちあがった民衆たちは十万人をゆうに越え、王宮をぐるっと取り囲んであちらこちらでシュプレヒコールを繰り返していた。


 しかし王宮は幅15メートルはあろう巨大な水堀によって守られており、水堀を渡るための跳ね橋も上げられてしまっている。


 そのため群衆は王宮を包囲こそしたものの、もうそれ以上は近づくことはできないでいた。


 そんな蟻の這い出る隙もないくらいの人込みの中を、リュージは――真っ黒な軽鎧をまとったハタチほどの黒髪黒眼の青年だ――すいすいと抜けていくと、なんなく最前列へと到達した。


 そして水堀の手前で群衆の先頭に立ち、扇動するように拳を突き上げている青年に声をかけた。


「あんたがこの暴動のリーダーだな?」


「税を下げろー! 圧政を改めろー! 俺たちは人間らしい暮らしを要求する! ……ん? そうだけど、なんだい君は? 見ない顔だね?」


「ちょっと通りすがってな。ところで必死に声をあげてるみたいだが、あんたたちがいくら取り囲んで声をあげても、何も変わりゃしないぜ?」


「なんだと?」


 軽い口調で笑いながら言ったリュージに、反乱リーダーの男は怒りの顔を向けた。


「だってそうだろ? 中の奴らは籠城して時間を稼いで、援軍の到着を待ってるんだぜ? 援軍が到着次第、城の中と外から挟撃されてこんな暴動程度、一気に鎮圧される。そしてリーダーのお前はギロチン送りだ」


「何をわかったようなことを! なら何もせずに死ねと君は言うのか! もはや日々の暮らしすら真っ当に送れない人間が、この国には山ほどいるんだぞ!」


「だから俺から提案がある」


「提案?」


「今から俺が向こうに渡って跳ね橋を下ろし、門を開く。だからあんたは群衆をまとめて、一気に王宮に突入するんだ」


「はっ、何を言い出すかと思えば、そんなことができたら苦労はしないさ。見たまえ、この巨大な水堀を」


 リーダーの青年は、大量の水を湛えた水堀を指さした。


「泳いで渡ろうものなら、兵士たちはやぐらから容赦なく矢を射かけてくるだろう。仮に渡れたとしても、攻城用の破城槌もなしにどうやってあの巨大な門を開くというのだ」


「俺ができるかどうかじゃなく、あんたにやる気があるのかどうかを、俺は今聞いてるんだけどな?」


「なんだと!」


 煽るようなリュージの言葉に、気色(けしき)ばんで声を荒げたリーダー格の青年だったが、


「それだけ血気盛んなら大丈夫か。ま、見てろ」


 不敵に言ってのけたリュージの堂々たる態度を見せられて、気圧されたように黙り込んだ。


 やれるもんならやってみろこの青二才が――そんなリーダー格の青年の冷ややかな視線を浴びながら、リュージは力ある言葉を紡いだ。


「神明流・初伝『剣気発生(はっしょう)』」


 その言葉が発せられるとともに、リュージの身体に強大な剣気が満ち溢れる。


 神明流・初伝『剣気発生』は人間が持つ『気』と呼ばれる生命エネルギーを活性化させて身体内に巡らせ、身体能力を大幅に向上させる技だ。


 初伝とあるものの、リュージの使う神明流の奥義は全てこの剣気をまとうことで使用可能になるため、初伝でありながら神明流の本質であり神明流そのものと言える奥義でもあった。


「おらよっと」


 リュージはその溢れんばかりの力を両足に込めると、跳んだ。

 助走もなしの一足飛びで巨大な水堀を軽々と飛び越えてみせる。


 対岸に着地すると、門の外で対岸を観察していた数人の兵士が呆気にとられた顔でリュージを見つめた。


「おいおい、ここは既に戦場(いくさば)なんだぜ? なにを呆けてんだ? 対岸の火事、水堀の向こうは別世界だとでも思ってたか?」


 リュージが言い終わると同時に、そこにいた兵士が全員崩れ落ちた。

 すでに全員が絶命している。

 リュージが着地と同時に刀を抜刀し、斬って捨てていたのだ。

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