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純白な世界

作者: ムラカワアオイ

タンブレロ。

泣きたいときに泣けばいい。

勝てるようになった喜び。セナがこのチャンスをミスミス逃すわけがない。

マンセルはフレッシュタイヤですからね。


自転車をこいで、1994、セナの初勝利を願っていた。

途中、こけそうになる。17の俺。


ギタリストの家へ着くと、言われた。


『セナがヤバイことになっとるぞ』

テレビを観る。セナが、事故った。タンブレロ。

ギタリストは言う。

『お前もレースやっとんやったら、これ、見とけ』


テレビの中。

三宅さんと今宮さんが必死。


放送が切り替わる。


セナが死んだ。


17の俺の夢はF1レーサーになること。アイルトンセナを抜くこと。

レースに賭けた、10代。

モータースポーツに関わり、クルマが何かを知っていく。


ギタリストは俺に言う。


『見とけ。セナでもこうなるんやぞ。お前もクラッシュしたらこうなるんやぞ。この意味、わかるよな』


アイルトンが走るって決めて、アイルトンが走った、悪夢のサンマリノ。

俺は、クラッシュばかりのチームでイチバン、遅いドライバー。

モータースポーツの過酷さを知る身分。

今宮さんの涙。

三宅さんの涙。

河合さんの涙。

唯一の救い。楽に逝けたこと。アイルトンが。

俺もなくなく、考える。


あれから数年が経ち、俺も四十三になった。

今頃、アイルトンと今宮さんが天国で、乾杯してるような気がして。

めざましの三宅さんを観る度に、

あの日のアイルトンを思い出す。俺は、煙草にしがみつき、

常識とはなんだろうと、俺は詩を刻んでは、俺は絵を描く。


正義とは何。

美術館に飾られてある俺の作品。

有里からメール。イイじゃん。と。

晴子姉やんからメール。きれいな絵やね。と。


壁に飾ってある、晴子姉やんが誕生日プレゼントしてくれた、

アイルトンのカレンダー。


アイデア屋と呼ばれ、

今日もキャンバスに美しさをコンペティションするために、

最善を尽くす。

コンテストキラーと呼ばれ、涙を知っていった。


美術館の横。駐車場に猫が一匹、てくてく、一生懸命に走っていた。

走る意味って何。


美智子さんからのメール。

それだけ、アオイさんに腕があるってことですよ。

自信持っていいと思います。ニコニコマーク。

成り行き任せだけでは、

住めない絵という世界。


アイルトンのクルマから学んだことを俺なりに描く。

アイルトンの哀しい瞳。


純白な世界。


ホオヅエツイテタ、

心拍数。

パソコンの横には俺の宝、

カート時代のヘルメット。

今日の勝因をぶつくさと独り言。


勝てる絵を描いた。勝てる絵ってなんだろうと、

もうひとりの俺に聞いてみる。

哀しくて美しき、純粋に絵を愛している、みんなのための絵だ。

と。

もうひとりの俺は俺に言う。

アイルトンの走りは世界のためにある。

今宮さんが俺達の想いを代弁した、1994年。5月1日。涙。


今、シグナルが変わる。


だから、俺は絵を描く。


アイルトン セナ ダ シルバ。


永遠のキーワード。

俺の永遠のキーワード。今日の勝利。

俺は絵を描く。悪行などもう、俺には、ないよ。

俺は、俺は、絵を描く。もうひとりの俺も、勝てる絵を描く。


ひょっとしたら、ひょっとして、アイルトンがこの部屋で俺に、


『頑張れ。アオイ。また、勝てたね。シャンペン、いつか、一緒に飲もうよ』

と、哀しい瞳で、呟いている気がして。


天へ。

天まで届け、この想い。この画家が不器用に言いたいこの想い。


アイルトン セナ ダ シルバ。


愛は気が付けば、充分すぎるほど、ここにある。


酒でも呑むか。

よく、絵を描いた、今日の俺へ。


祝杯。


今宮純とアイルトンセナ ダ シルバに敬意を込めて。

2021年1月25日。


今頃、二人は、天国で、笑ってら。走るすべての人々へこの詩を捧げる。

今日。俺は、キャンバスに向かい、

涙した。


勝てる喜び。

死んでも続く。ただ、塗ってる馬鹿じゃない。

俺は、そんなに馬鹿じゃない。立派になんて生きられない。


ただ、この世を愛す。

いつか、いつか、本当の本当の日々が送れるように。

その夢は叶えた。

俺は本当の本当のこの日々を愛す。多少の消えない孤独感と一緒に。


世界は始まったばかり。

純白なきれいな世界へグラスをカタムケテ。


何度目かの草々。


さてと、俺は自転車に乗って。勝利する日々を純白にするために。


俺は、O型牡羊座。

筆は死んでも、絶対、捨てない。


ラインを楽しんで、この道を行こうぜ。

あの日、セナに憧れた、

純粋な独りの画家より。詩的に俺は、真っ向勝負。


さあ、行こうぜ。

イクツになっても、俺達、夢中。

アイルトン。そちらの天気はどうかな。この街は晴天だよ。


食事は一緒に。純白なこの世界へ。

行こうぜ。

前後左右が少し、気になっても。

テレビの中の頑張る佳純ちゃんの涙を見て、知ったこと。


アイルトン。俺は、獲りに行くから。

一瞬を描く画家として。

服は絵の具で多少、汚れてしまったが、

闘う証拠と俺は誇りに。


癖のある字でごめんなと誰かに言いたい、

純白な世界へ。

絵画。俺を研ぎ澄まさせる。言葉に言葉に。詩的な俺の快楽へ。


やあ、アイルトン。

今日は歩いて。

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