宇敷 紗耶香
【異世界QUEST】をCLEARしてから1日が経った。昨日ズル休みしたせいで、大変な騒動に巻き込まれてしまったんだ。
多分俺の人生は天国から地獄に変化してしまっただろう。
会社には行かなきゃいけない。今日は何を言われるかわからないが、何故か不安にはならなかった。
自分自身の身体が軽く感じたからだ。
レベルという概念は現実では身体能力の上昇になっている。その為、少し足が速くなったり、
力が強くなったり、痛みが今までよりも感じにくくなったりしている。
実際に10キロのダンベルが家にあったので、持ち上げたら少し軽く感じた。
筋肉がついたわけでもない。これは【異世界QUEST】のせいだろう。
でも1レベルしか上がってないから、微小にしか力はついていないのだろう。
会社までは徒歩15分程で着く距離にある。
近くのマンションを何とか探して少しでも通勤時間を短くしたんだ。
通勤時間が遠くて、ストレスが溜まるのが一番嫌だったからだ。
会社にあと5分で辿り着く時、ある女性に出会ってしまった。
「あれ?今日は出社してるんですね」
「…宇敷か」
「何ですかその顔。私と会ったらいつも嫌そうな顔しますよね。何なの?」
出会ったのは宇敷 紗耶香。俺より歳が1つ下で俺の後輩でもある。
何かと俺に突っかかってくる女性で少し嫌気がさしている。
だが佐久馬とかは羨ましがってる。何故ならスタイルが良いから。
顔も容姿も全てモデル並みに綺麗で、同期の間では狙っている人も多い。
なのに俺が何故嫌気がさしているか?普通なら俺も狙う1人なんだが、
それにはある理由があった。
「嫌な顔してないよ。あと昨日は体調が良くなくてな。でも1日寝たら良くなったよ」
「ふーん、何かウソっぽい。あ、遅刻しちゃうんで先に行きまーす」
この態度だ。先輩に対しての態度が良くないんだ。ウソ…だけど、ウソじゃないし。
遅刻ってまだ20分も余裕があるだろう。
他の同期はこの態度を知らないから狙おうとしているんだろう。
俺は嫌いだ。こういう人を馬鹿にした態度がな。
と思っていたら、宇敷の奴がこちらへと戻ってきた。何だ?
「今日の仕事、私やったことないんでー教えてください、では!」
「・・・」
アイツ…その為にわざわざ戻ってきたのか。それは会社着いてから言えばいいだろ。
朝から不幸だ。昨日から良くない出来事が続いているな。
俺は落ち込みながらも会社に辿り着き、自分の仕事場のデスクへと座る。




