三守 九星②
三守は担架でリングを後にして、聖が防衛に成功した。俺はすぐに三守の様子を見に行こうとしたが、関係者以外は立入禁止だった。俺は後日にボクシングジムでと足を運ぶ事にした。
聖 月影が異世界QUESTに参加しているとして、どこにギルドに所属しているんだろうか?イヴィリナードではないはずだ。あれだけ強い男はマスターになれる素質があるだろう。
3日後、俺と春の2人で波羽ボクシングジムへと訪れた。そこには顔面に包帯をぐるぐる巻きに巻いている三守の姿があった。俺と三守が会うのは久しぶりだ。
「久しぶりだな、三守」
「・・・」
「死咲 拓翔だよ」
「・・・死咲、何の用だ?俺をあざ笑いに来たか?」
「違う」
「負け試合を見たお前は俺をあざ笑いに来たんだろ!?ふざけんな!」
「だから違うって!俺は三守にお願いがあってきたんだ!」
俺は真剣な表情で三守を見る。三守は俺と春を見て、少し考えている様子だった。そして三守は俺達を別室へと連れて行く。まず俺が聞きたい事は昨日の試合についてだ。
「三守、昨日の聖 月影は異次元みたいな強さだったな。あれは強すぎる気がするよ」
「・・・俺は今まで負けてこなかった。なのに1発で全てを失った気分だった。アイツはドーピングも何もしていない。何も検出はされなかった。おかしい、アイツは絶対に何かやっているはずなんだ」
「何でそれがわかる?」
「フェザー級のパンチ力ではない。あれは・・・もっと上の階級のパンチだ。あの身体でそのパンチを打てるなんて・・・あり得ないだろ」
聖は異世界QUESTの力を借りている。だがそれを証明する事は今はできない。実際に本人に異世界QUESTをやってるか聞くしかないからな。アイツにリベンジするにはどうすればいいか?
「・・・くそっ!、海埜なら普通に倒すんだろうな。・・・そういえば海埜は一緒じゃねーのか?」
「その事なんだ。海埜が・・・消えたんだ」
「は?」
俺は三守に海埜の事を簡単に説明する。そして異世界QUESTの事も。三守は「ありえない」「ふざけんな」と言いながらも聞いてはくれた。一通り話を終えた俺は三守の言葉を待った。
「・・・お前は異世界QUESTの参加者って事か。そして聖ももしかしたらそうかもしれないと。・・・死咲、それなら今の俺を倒せるって事じゃねーか?」
「どういう事だ?」
「異世界QUESTでレベル上げれば、自分自身の身体能力が上昇する。ならば今の俺を超えている可能性があるだろ。・・・俺と戦え!」
三守は俺を睨みそう言った。その傷だらけの身体で俺が三守と戦う?絶対に無理だ。そんな事できるわけがない。せめて回復してからが良いだろう。でもそんな事を言って折れる男ではない。
「・・・三守、お前も異世界QUESTに参加しないか?」
「それは・・・冗談か?」
「違う!俺と戦うのはその異世界QUESTに参加してからで・・・」
と言った瞬間に俺の顔面目掛けて拳を放ってきた。俺は咄嗟にガードするが、その拳は非常に重かった。これがフェザー級ボクサーの拳か。
「ガードするのかよ。しかもこのスピードを・・・」
「俺は・・・海埜がまだ生きてる可能性を諦めていない。俺は絶対に海埜を助けなきゃいけないんだ。お前だって・・・海埜ともう1度戦いたいんだろ?」
「アイツは・・・俺と戦う事もしない腰抜けだ。俺にはどうでもいいことだ。・・・俺は聖 月影を倒したいんだ。その為には確かに異世界QUESTの力が必要かもしれない。ただ異世界QUESTが本当に身体能力が上がる証拠なのか俺にはわからないんだ。・・・ボクシングもやっていない死咲が現役のボクサーである俺に勝てば、それは真実ととるだろう。我儘かもしれないが、俺に異世界QUESTに参加させたいなら、俺を倒せよ」
「だからケガが・・・」
「そんなのハンデだ!お前如き左手一本で十分だ。・・・さぁやるのかやらないのか?」
俺は三守を見るが、怪我人を殴りたいとは思わない。だが三守を倒さないと仲間になってはくれない。異世界QUEST内に入れば傷は治るから、それから戦おうと考えたが三守の決意は固い。
「三守、1つだけ約束してくれ」
「何だ?」
「俺が勝ったら、異世界QUESTに参加して俺のギルドへと入ってもらう」
「何かわからないが、それで構わない。よし、リングに行くぞ」
俺と三守は別室から出て、ジムにあるリングへと上がる。ジムの会長には説明し、三守も何とかリングに上げさせてもらえた。他の人達は興味津々で俺達の戦いを見守る。
そして・・・ゴングが鳴り響き、俺と三守の戦いが始まった。




