三守 九星
三守 九星。俺と海埜が通っていた倉須磨高校に居た自称喧嘩王と呼ばれた男。だが海埜に喧嘩に負けてから、喧嘩王の噂は消えていった。俺は三守とは意外にも仲が良かった。海埜との喧嘩に負けてから三守は変わったんだ。
それから高校卒業して、ボクシングジムに入団して本格的にプロボクサーの道へと進んでいく。
そして今回、東京にあるホールで三守は今日、日本フェザー級タイトルマッチに挑もうとしている。相手は10回も防衛している今最強のチャンピオンと呼ばれている男だ。だが三守は今まで10試合、10勝0敗10KOで全てKOで勝っている。しかも殆どが1RKOで勝っているんだ。
俺は春と夜形を誘って、チケットを購入し東京のホールへと向かって行く。だが春も夜形もそこまで乗り気ではない。
「死咲ー1人で行けばいいじゃねーか。何で俺と春を誘う?」
「そうですよ!僕だってボクシングなんて興味ないんですから!」
2人はボクシングに一切興味がないようだ。正直言うと俺もそこまで詳しくはない。ただ強いって言えば三守しか居なかったんだ。
もう1人・・・曲者は知っているがさすがにすぐに誘えなさそうだし。
結果的に歴史的瞬間を見れるかもしれないし良い事だろう。このホールには観客が約1000人が集まっている。そこまで注目の試合なんだろう。三守は日本チャンピオンになれるのか?それとも現チャンピオンが防衛するのか?
それに三守は今まで無敗の男だ。対戦相手の情報はわからないが、三守ならやれると思っている。
ホールへと入り、2階の遠い席しか空いていなかった。試合はもうすぐ始まろうとしているが、夜形と春はスマホ画面を凝視している。興味ないからってそれはないだろ。
「おい、試合始まるんだからスマホしまえって!」
「死咲、対戦相手が・・・」
『ワアアアアアーー!!』
「ん?何だって?」
夜形の声は歓声とともに何も聞こえなくなった。ホールは暗くなり、チャンピオンが入場してくる。チャンピオンの名前は・・・聖月影。何だその名前は?チャンピオンの身体はそこまでデカくなく、筋肉の付きもボクシング選手としてはそこまでって感じか?
そして三守が入場してくる。遥かに三守の方が強そうな体格をしている。気合の入った金髪でオールバックだ。こいつはやってくれるんじゃねーか?
でも10回も防衛している聖って男も気になる。何か秘策でもあるのか?
「死咲、やばいぜ。三守って奴、負けるぞこれは」
「何言ってんだよ夜形?」
急に真剣な表情で夜形は言った。三守が負けるってなんでだよ。まだ始まってもいないのに。リングアナが2人の事を紹介し、三守と聖は拳を合わせる。そして・・・
カァーン!!
ゴングが鳴り、試合がスタートする。真っ先に動いたのは三守だ。三守は聖の元へと素早く向かい、顔面へとジャブを繰り出す。聖は防御態勢をとっているが、ジャブの威力が強いのか身体が逆のロープへと下がっている。
「これはすぐ終わるだろ!三守の勝ちだ!」
「・・・・・・」
「夜形!?」
夜形は無言で2人の試合を見ている。何を知っているんだ?夜形は対戦相手の情報を試合開始前に見ていた。何かを知ったことなんだろう。聖って奴には何か・・・あるのか?
ドンッ!!
「えっ!?」
三守のジャブを聖は振り払った。そして右拳で三守の腹部へとパンチを放つ。その瞬間三守は体をくねらせた。一発でそこまでの威力だと!この後ガードが下がった三守の顔面へと聖は右ストレートをお見舞いする。
聖とは逆のロープまで一気に吹っ飛び、ロープから身体が跳ね返り、そのままで顔面から地面へと倒れこもうとする。それをセコンドがギリギリで支えこんだ。
セコンドはタオルを投げ込んでおり、すぐにリングの中へと入っていった。もし間に合わなければ顔面が床に突き刺さっていた所だろう。・・・何だこれは?聖って男は何者なんだ!?
「やっぱな」
「おい夜形、どういう事か説明してくれ」
「聖 月影。コイツはボクシングを初めてまだ1年だ。その1年で異常な程に試合をこなしている。あり得ない程に。月3回程、試合を行っているんだよ」
1年で30試合!?・・・おかしい。そんなの普通無理だろ。聖はもしかしてドーピングとかやってるのか?でもそれはばれるだろ。怪しく思う人間も居るはずだ。それなのにバレていない・・・・・・・?ま、まさか!?
「夜形、聖はもしかして・・・」
「ああ。おそらく聖 月影は異世界QUESTの参加者だ」




